苦労でも頑張りでもなく。

先日、webサイト「日刊SPA!」の中でお笑い芸人・モグライダーさんのインタビュー記事が掲載されていました。

■M-1トップバッターの最高点を叩き出したモグライダー。順番が違っても「優勝は無理だった」理由
https://nikkan-spa.jp/1808242

モグライダーさんといえば昨年末のM-1グランプリ2021にて初の決勝進出を果たした若手芸人。ネタの面白さはもちろんのこと、お二人のルックスやキャラクター、そしてトークスキルも相まってメディア露出が急増しているコンビです。

長年売れず、ようやく陽の目を浴びたモグライダーさんのインタビュー。お二人の考え方や人となりがよく分かる記事ですので、お笑いファンの方はぜひご一読いただきたいのですが、その中で個人的に刺さるコメントがありましたので今回はそちらを紹介したいと思います。



これは「売れずにくすぶっている地下芸人の日常はどのようなものだったのか?」と質問された際のお二人のコメントです。

以前このnoteでも書いたことがありますが、僕も昔はサンミュージックという事務所でお世話になっていたお笑い芸人でした。
ろくにテレビも出ていない、まさに「地下芸人」と呼ぶにふさわしい立ち位置だったわけですが、モグライダーさんのコメントが「若手芸人の全て」を表現していると思いました。

まずライブに出てもギャラなんてほぼ出ることはありません。もちろん全てのライブがノーギャラというわけではないけれど、まあ貰えて1,000円とか2,000円。若手芸人にとってのライブは修業の場でもあるので、エンターテイナーとしてお給料をいただくに値していない…といった風潮があります。

実際、当時の自分を振り返ってみても、確かにこれでギャラをいただくわけには…というクオリティのネタも山ほどあったし、周りの芸人のレベルも全員がハイレベルというわけでもないし、冷静に考えたらライブにギャラが出ないことにも納得です。
(ちなみにそんな中、よしもと興業だけはライブでもちゃんと実力に応じてギャラをいただけるシステムが確立されています。よしもとって凄い!)


たった数分だけネタを披露するライブを「仕事だ」と言い張り、たった数時間のネタ合わせを終えただけで働いたかのような気持ちになる。
社会人が毎日8時間がっつり仕事と向き合っているのに対して、地下芸人の労働時間なんて働いたうちに入りません。でも周りには同じような環境の芸人仲間がたくさんいて、なんとなくそれで成立しているような気持ちになっちゃって。

芝さんのおっしゃる通り、地下芸人界は「馴れ合いと逃げの文化」で成り立ってしまっている部分があるのです。

例に漏れず、僕もそんな馴れ合いと逃げの文化の中で生きていた一人です。売れたいと願う一方でまともに働きもせず、気がついたら26歳になっていました。

結局そのまま芸人を引退して社会に出ることになったのですが、そこでようやく自分がぬるい環境に身を置いていたことを実感することができました。

聞いたことのないビジネス用語が飛び交って、やったことのない仕事を振られて、めちゃくちゃに失敗して怒られて、どうしていいか分からなくなって、それでも明日はさらにレベルの高い仕事が降ってくる。

面倒臭いとか疲れたとか、なんとなく気が乗らないとか、そんな甘いこと言ってる場合じゃない。芸人を辞めた自分に残された道はこれしかない。死にたくなければやるしかない。


ここで初めて実感しました。
これまで頑張った気になっていただけで、本気じゃなかったんだということを。本当の意味で必死になっていなかったんだということを。



もし芸人時代にこれくらい頑張れていたら…これくらい頭使って売れるための方法を真剣に考えていたら…と今でもたまに考えてしまうことがあります。

…でもまあ、実際に当時に戻ったとしても、なかなか実行するのは難しいのかもしれませんね。

分かっちゃいるけど腰が重い。やりたいとは思っているけど行動にうつせない。しかも制限時間が決められているわけでもない芸人生活の中で、自分にムチ打って必死になるのは大変な気力が必要です。

週末は庭の草むしりをやらなきゃな、と思っていたけどやっぱり面倒臭くなってやらなかった…みたいなことって誰にでも経験があると思います。

結局、楽なほうに逃げてしまう。人間ってそういうもんですよ。



そんな感じでモグライダーさんのインタビューをきっかけに当時の自分のことを思い出し、いてもたってもいられなくなって感想をツイートしたところ、予想以上の反応がありました。

https://twitter.com/aokitatsuya76/status/1487775910283530245


リツイート&いいねをザッと見ていくとお笑いファンの方がもちろん多いのですが、中には若手芸人さんや役者さんなどご自身が演者側である方もたくさんいらっしゃいました。
もしかしたら皆さん同じように、自分自身に言い聞かせて、奮い立たせているのかもしれません。

このままじゃダメだ。
自分なんて苦労してない。
馴れ合うな。
逃げるな。



今回のモグライダーさんのインタビュー記事はイチお笑いファンとしても面白かったのですが、もしかしたらモグライダーさんから地下に潜む仲間達に向けたメッセージにもなっているんじゃないかと思いました。
(きっとご本人にそんな意図はないだろうな、とは思いつつ)

生き様も考え方もカッコいいモグライダーさん。お二人の今後を応援したいと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?