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美しいナゾトキってなんだ?

先月「美しいナゾトキ」という書籍が発売されました。
これは謎制作者として活躍する常春くん、無策士さん、矢野了平さんが手掛けたもので、たくさんの謎制作者から集めた選りすぐりの「美しいナゾ」を3人が品評していく内容です。
この書籍が発売前から評判を呼び、告知後すぐにAmazonなどではベストセラーランキングに入るほどでした。

詳細こちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/4796878572/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_5ADGVF1MHHPGXAQFZJAV

かく言う僕も、どんなに美しいナゾがお目にかかれるか、ワクワクしながら本を開いた1人です。


掲載されているナゾトキのハードル


この書籍は中身だけでなく表紙など、全体を通してデザインが洗練されていて、インテリアの一つとして部屋に並べておいてもカッコいいんじゃないかと思わせてくれます。

いざ、ワクワクしながらナゾトキにチャレンジ!
ページをめくるとナゾが一問、出題されています。見た目はシンプルで、指示文も最低限に精査されている印象を受けました。
序盤こそ割とサクサク解くことができたものの、中盤以降はほとんど自力で解くことができず。ヒントが用意されているわけではないので、次のページに書かれている3人の品評コメントをヒント代わりに使ったり、しばらく寝かせてからリトライしたけどやっぱり解けなくて諦めたり。

どうやら僕が普段から触れているナゾと比べると、全体を通して難易度が高いように感じました。

また、誰でも答えまでたどり着ける親切設計なナゾトキではなく、限られた情報から閃かなければ解くことができないものばかり。そういったナゾに対して新鮮で面白いなと感じる反面、答えや解き方を見て首を捻ってしまった部分があるのも正直なところでした。
「んー?これだけの情報で、この答えにたどり着けるものなのか~?」みたいな。

面白いけど難しい。
これは僕のような謎が解けない人間には敷居が高く、普段からナゾトキに慣れている歴戦の強者が読むべき書籍なのかもしれない…。
最初はそう感じていました。
(ちなみに、この世には息をするように謎を解く人たちがいると聞いたことがあります)


そんな中、先日「美しいナゾトキ」の刊行記念トークイベントがTSUTAYA田町駅前店にて行われ、僕はMCとしてお呼ばれしました。
こうしてお声掛けいただけるのは心の底から嬉しいものです。

ただこの時はまだ「美しいナゾトキ」が何なのか、僕には理解できていなかったわけです。


考え方がガラリと変わったトークイベント


トークイベントは3人の挨拶から始まり、それぞれが気に入っている一問を紹介したり、「美しいナゾトキ」とは真逆の「クソ謎」を出題していく内容でした。
(クソ謎は、それはそれでとても捻りが利いていて素晴らしく面白かったです!)

トークも盛り上がり、約90分ほどのイベントはあっという間に終了してしまったのですが、その中で僕は自分なりに「美しいナゾトキ」とは何なのかに気がつくことができました。


通常のナゾトキと言えば、ストーリー上で必要な答えを導くために「◯◯という答えが必要だから、こういうナゾにしよう」とか「この条件を加えることで別解を防ごう」などと考えられた問題が多々あるものです。
つまり解かれることが前提としてあって、そのために必要な条件やイラストを落とし込んでいくわけです。
基本的に解いて次の謎に進むことを目的としているので、ある程度は解きやすくしているでしょうし、ヒントもあります。

ところがこの書籍に掲載されているナゾは、それらとは違った角度で作問されているのです。

たまたま虹の色はこういう並びになっているから、それをそのままナゾにしたらこうなった。
この記号は角度によって捉え方が変わるから、それをナゾにした。
あの文房具の形にコレを当てはめたらキレイに言葉になった。

自宅や街中、職場など日々の生活を送る中で偶然見つけた「ナゾトキに使えるもの」や「たまたま世間に認知されているデザイン」をナゾとして完成させているのです。
解かれることを目的としているわけではなく、謎制作者が発見した奇跡や閃きをそのままナゾトキに落とし込む。

解くための導線がキチンと用意されていたり、全ての情報に意味を持たせてアッと驚かせる意味での「美しいナゾトキ」ももちろん存在します。
ただこの書籍で定義している「美しいナゾトキ」はそうではなく、奇跡や偶然性を「素材のまま」味わうことができるものを指しているのではないかと感じました。

いやあ、よくこの形を見つけてナゾにしたなあ。
角度によって捉え方が変わるだなんて凄い発見だ。

そんなことを噛み締めながら、額に入れて飾ったナゾをいつまででも眺めていられる。
それこそがこの書籍で言うところの「美しいナゾトキ」なのです。

ナゾトキの世界でもう10年ほど仕事を続けているけれど、これはとても新鮮で新しい発見でした。
大袈裟ではなく、ナゾトキというものに対する自分の世界が広がったような気がします。

自分の視野は狭かったんだなと感じると同時に、まだまだこの世界は面白いと思える貴重な体験でした。

このイベントに声を掛けてくださった3人に感謝です!



それでは、また次回。

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