見出し画像

正しいって何


私は「ラ・ラ・ランド」が苦手だ。

好きな人が居たらそれは申し訳ない。

そう、申し訳ないと思うなら書かなければいい。今日はそんな話をする。


何年も前に友人と映画の話になった。私は学生時代4年間映画館でアルバイトをする程度に映画が好きで、その友人も映画のブックマークアプリを細々と書き込む程映画が好きだった。その友人の好きな映画ランキングトップ5の中に「ラ・ラ・ランド」が入っていた。数々の賞を受賞している作品だったので勿論鑑賞した事のある作品だった。が、私は"ミュージカル映画"が苦手だった。ミュージカル映画と言えば主人公たちが会話の中で当然歌い出す。舞台でそれを生鑑賞するのは気にならないのだが映画の場合は、映画館の暗闇の中で一人取り残された気分になる という理由から苦手だった。もしかしたらこの考えは特殊なのかもしれない。ラ・ラ・ランドも同じように感じたし、オープニングが最高潮でその記憶しか残っていなかった。

話を戻すが、その友人がトップ5を言い終えたタイミングで「私ラ・ラ・ランド苦手なんだよね」と何気なく放った私の言葉に相手の表情が曇ったのが伺えた。「え、なんで?」と返ってきた。"あ、これはまずいかも" と言った後にすぐ後悔をしたが私が苦手な理由を説明をした。相手は少々相づちを打ちながら話をきいてくれた。私が話し終えたタイミングで「で、みほちゃんの好きな映画ランキングは?」と聞かれ同じように考えながらトップ5を答えた。その内の1つ「ぐるりのこと」という邦画に対し「私それ嫌いだわ」と一言貰った。

おぉ、これはくるな、、、。(とか思っている場合じゃなかった)

「私それ嫌いだわ」と言った後に続けて「好きなものを否定されて良い気は全くしないしとても失礼だと思うからもう何と言うか、、無理です」と突然敬語になり私を置いて去っていった。呆気に取られた。そして私は何も言えなかった。


私は初めて人とちゃんと喧嘩をした。



相手が去った後も彼女の言葉が頭の中でずっとグルグル回っていた。好きなものを否定されて良い気は全くしないしとても失礼好きなものを否定されて良い気は全くしないしとても失礼

その通りだと思った。息がとても苦しくなり過呼吸のように圧迫された。言葉のあやではない、ハッキリと私は相手の好きなものに対して否定をしてしまった。それが過ちだった。心の中に閉まっておけばよかったのか、もしくはなんで好きかを聞いてその作品の良さを知る機会を作ることも出来た。 相手が去っていったあと色々なことを考えた。その後、相手は私のSNSをブロックした。ブロックした理由は映画の好き嫌いで喧嘩をしたから。私が放った言葉で傷ついたから。(であろう)。共通の友人から「え?そんなことで?」と言われた。がそんなことで簡単に仲が崩れてしまうほど夢中になっているものを否定された時の悲しみは凄いのだ。

私は心を病んでしまった。人と喧嘩をした事が初めてだったし何より私の何気ない一言から始まった喧嘩だったから。悪いことをしてしまったと自分を責め続けた。沢山泣いた。自分も好きなものが沢山ある人間だからより理解があったはずなのに。好きなものを否定された時、悲しくなり痛くなり辛くなる。相手の敵になりたいなんてこれっぽっちも思っていなかった。詩人最果タヒさんの言葉の中に「どうか味方ができませんように」という話がある。お互い共通の友人がいた訳だが、話を聞いてくれた友人が「でもさ直接はっきりと良い気はしないって敬語で言ってくるのもヤバくない?」と言われた。たしかに面と向かって言われてビクッとしたし怖いと思った。でも今の友人との会話も怖いと思ってしまった。誰が味方で、どっちのカタを持つかという論争が怖かった。今この話を盛り上げてしまったら今後喧嘩をした相手と修復しづらくなると考えた。私は仲直りをしたかった、謝りたかった。が中々それができなかった。学校が同じわけでもなく歳も違うし何処に住んでいるかも知らない。共通の趣味がキッカケで出会った友人だったからだ。喧嘩をする前辺りに私が海外に行く話をしてお土産をその子に頼まれていた。喧嘩をした後だったが、私はこれが仲直りをするチャンスになるかもしれないと思い、頼まれたものを現地で買い日本に持って帰った。まだSNSはブロックされたままだった。

しばらく連絡を取っていなかったときに
さくらももこさんの訃報が入ってきた。

私とその友人はさくらももこさんの作品が好きだった。特にコジコジが好きでよくコジコジの話題で盛り上がっていた。この訃報を聞いた時に真っ先にその友人のことを思い出した。そして私が気付かぬうちにブロックは解けていた。(いつ解除されたのかは不明、ちょっと聞けなかったし相手のアカウントを見に行くのが億劫だった)
さくらももこさんの出身である清水に献花台が設置されるらしいという情報が入ってきたので、「良かったら行かない?」と久しぶりに私は連絡を入れてみた。それで2人で行くことになり新幹線の手配などは相手がすぐやってくれた。(迅速な対応なぜ出来る凄い私がやれ)乗る駅が違ったので彼女が横浜駅まで切符を持ってきてくれた。取りに行くと伝えたが、横浜という土地が好きらしく来てくれた。その時が彼女との久々の再開だった。お互い気まずい雰囲気で改札の外で落ち合った。「随分前だけどあの時ごめんね」とまず伝えた。怖くて目を見て伝えられなかった。が頑張って伝えた。

「いや〜私こそ」と返ってきた。

喧嘩の話はその1ラリーで終わった。あれだけ悩んだけどその話は一瞬で終わった。それでいい、お互い分かっていたから。何が分かっていたか?それは別に書かなくてもいい気がするから書かない。

その後頼まれていたお土産をやっと渡した。
スターウォーズのピンバッチ。
彼女に頼まれていたキャラクターを調べて買っていったのだがどうやら違っていたらしい、ごめん。でも彼女はとても嬉しそうだった。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?