グリッチタヌキ 2021年4月25日の日記

先日バズっていた中谷健一の〈グリッチタヌキ〉が面白い。〈グリッチタヌキ〉は信楽焼でよく見かけるあのタヌキを発泡ウレタンで型抜きし、それを一度薄切りにしてマゼンタやイエローなどの原色を差し込むことによってグリッチを再現した、立体造形アート作品。下に当該のツイートを貼り付けておきますので、ぜひそちらからインパクトある写真をご覧いただければと思います。

グリッチアートとは、データや出力機器の破損によって生じる視覚的なエラーのことを指す(んだと思います。私はド素人なので間違ってるかもしれない。興味ある方はちゃんと調べてね)。よく画像を破損させて色が左右にズらしたオシャレ加工を見かけることがあるけれど、一般的な見た目としてはああいったものを想像していただければよい。グリッジアートは、ここでさらに分類が導入されることがある。先ほど挙げた例のように人間が意図的に画像を加工して視覚的な効果を得るものは、人間の意思が介在しているという点から「グリッチ・アライク(glitch-alike)」と呼ばれ、反対に人間が故意に加工したわけではない、機械側のエラーによって生じるグリッチは「ピュア・グリッチ(pure glitch)」と呼ばれる(らしい)。

おそらく、既存のグリッチアートの文脈の中にどう位置付けるかといったところに〈グリッチタヌキ〉の面白さを見出せるのだと思う。もちろん、意図的にグリッチを表現しているため、〈グリッチタヌキ〉はあえて分類するとすればグリッチ・アライクになるのだろう。ここで重要なのが、この作品の大部分が(おそらくは)機械的な操作を伴わない制作となっているという点だ。立体造形を行う際に、「信楽焼」というひとつの機械の対となるような概念から型を取り、ウレタンを裁断し、(アクリル絵具かな?)着色するという作業があるはずだが、そこには機械的な手法での対象の破壊が存在していない。これは同じくグリッチを立体物で表現するアートのやり方である、PC内の3Dモデルのデータを破壊するものであったり、それを3Dプリンターによって現実の世界に出力するものであったりとは、データに対する働きかけの有無という点において一線を画している。〈グリッチタヌキ〉はピュア・グリッチから最も距離を取ったグリッチアートとしての表現になっているのではないだろうか。

同作者の立体作品には木彫りのクマを異化するようなものが多くあり、既存の工芸品の持つ空間的な意味合いを捉えなおすような思弁が垣間見えるのが面白い。あと単純に見た目が可愛い。可愛いものは良いので良い。

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