お洒落とおめかし 2021年7月21日の日記

川上未映子の『おめかしの引力』を読んだ。朝日新聞と「FIGARO」に連載されていたファッションにまつわるエッセイをまとめた一冊。「お洒落」ではなく「おめかし」という言葉を選んでいるのは、「お洒落」という言葉は世間の流行などといった外部の視線を織り交ぜた価値観であるが、「おめかし」はどこか子供が自分のお気に入りの服を選ぶような自分の気分を目的としたものというニュアンスを含んだ言葉だからなのだとか。

ファッションと聞くと身構えてしまう人というのは相当数いると思うのだけど(かく言う私もその一人だ。「柄ものに柄ものを当てるのは上級者向け」とかみんなどこで知るんだ)、気分の上がるアイテムを選んでお守りやライナスの毛布みたいにするという「おめかし」ならばなんだか自分にもできるような気がしてくるから不思議だ。そういう目を養ってから巻頭のワードローブを見ると、そのときめきのようなものが伝わってくるので楽しい。その「気分が上がる」の根拠としてファッションブランドやデザイナーの来歴や理念を選んでいることで、服が好きである気持ちと「お洒落」というより「おめかし」をすることが両立されているのも素敵だなと感じた。

私も書き物やら生活やらでパソコンを叩くことが多いのでなにか手元の装飾で気分を上げられないかなと思っているのだけど、根のファッションセンスが干からびているのでなかなか(それこそ)手を出せないでいる。爪とか遊びたいんだけど、それに見合う服を当てられる気がしない。まだ私は「おめかし」をできるほど外部の視線を捨てきれずにいるらしい。自信と自己満足の狭間に渦巻く負のスパイラルの一番底で蠢く自意識の亡者が私。見習いたいなぁ。

短編小説で参加させていただいた人肉食百合アンソロジーvol.2『聖体拝受』が販売開始になりました。私も先ほどダウンロードして少しずつ読み進めているのですが、vol.1に負けず劣らず様々な在り方での祈りと加害の融和が描かれた作品群になっています。第一弾と比較して文化の醸成されていく過程を見るのも面白いかと思います。

Kindle版とBOOTH版の二つがあり、基本的に収録作は同じなのですが、二冊にまたがって前後編となっている中編小説もございますので、ぜひどちらの版も手に入れていただければ嬉しいです。Kindle版については23日の17時から無料キャンペーンもやるようですし、その際にダウンロードされてもよいかもしれません。よろしく!

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