いつか、きみと・1-8

「もう。
謝らない、っていったでしょ?」

「うん、ごめん…」

「あー、もう。また!」

彼がやさしく微笑みながら、左手でやさしくわたしの頭をなでてくれた。
心地よくて、ずっとなでていて欲しいと思う。

「あのとき、探していたおうちは、みつけられたの?」

ふと、思い出して問いかける。

「ううん、結局みつからなかったんだ」

「…そうなんだ」

彼は配達先のおうちを探していたらしい。
だけど、この公園の中には個人のすむ建物はないし、もともとこの場所に住んでいる人がいたとしたら、昔の昔のずっと昔のことだと思う。

「最近は、配達先が見つからないことが増えてきたよ」

「…そうなんだ」

それが【どうして】なのか、なんとなく聞けなくて…。
でも、ちゃんと聞いておけばよかったって、後悔することになるなんてそのときには思いもしなかったんだ…。

「冷えてきちゃったから、今日はそろそろ帰ろうか」

まだ、もう少し…
そういいたいけれど、空気と一緒に飲みこんだ。

だけど

「そんな顔しないで」

彼が困った顔で笑う。

「ねぇ、もう少し…」

立ち上がろうとした彼の手を、ぐいっと引き寄せた。
わざと少しバランスをくずした彼と、少し距離が近づく。
ふわりと石けんの香りがした。

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