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カレイドスターの音楽祭に行って自分がオタクであることを思い出した話

突然ですが、タイムマシンってあると思いますか?

そもそも、有るか無いかだけで議論すると無いことを証明するのって難しいですよね。
僕がこの質問をされたら、「あったら嬉しいな」って答えると思います。
使いたい、という気持ちもありますが、ワクワクする、という意味で。

ずるい答えですね。

こんな僕が、今日初めて、明確に、タイムマシンがなくてもいいや、と思いました。
それは『今』がすごく大切で尊くて愛しく思えたからです。
そんな気持ちにさせてくれたのが、表題の通り、

【カレイドスター音楽祭 20周年の すごい究極 オーケストラコンサート】

なわけです。


カレイドスターという作品について

そもそも『カレイドスター音楽祭』とは何か、という話になるわけですが、こちらは20年前に放送されたカレイドスターというアニメの劇伴曲をオーケストラが演奏するという趣旨の企画です。
放送20周年を記念したクラウドファンディングで目標額500万円のところ3245万9500円(649%!!)を達成し、2024年4月13日に実施されました。

この時点でファンの愛の深さがわかりますね……20年前のアニメの音楽祭に3000万円……!!

ではさらに掘り下げて『カレイドスター』がどんなアニメかということを簡単に説明します。

アメリカ[注 3] に、サーカスとミュージカル、マジックを組み合わせたようなエンターテイメントを提供する集団があった。その名を「カレイドステージ」という。苗木野そらは、そんなカレイドステージに憧れて単身渡米した。彼女は様々な試練を乗り越え、やがてカレイドステージの花形へと成長していく。

「カレイドスター」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』http://ja.wikipedia.org/wiki/カレイドスター。 2024年4月14日13時(日本時間)現在での最新版を取得。

こちらはウィキペディアの記事で大変分かりやすいあらすじなのですが、私が伝えたい重要な部分が足りません。

それはめちゃくちゃスポ根だということです。

作品ビジュアルを見てもそういう印象は受けないと思います。
でも鉄球とかでトレーニングするんです。体中あざつくりながら。グランド・キャニオンの崖で片手懸垂したりするんですよ。
信じられますか? 明らかに見た目は少女向けキラキラアニメなのに。
各話のサブタイトルには「すごい」という言葉が入るルールになっているのですが、その言葉通り”すごい”んです。
純粋で明るくて誰よりも一生懸命なそらが次から次へと襲い掛かる試練に全力で挑み、時にくじけながら周りの人に支えられながら努力努力努力で乗り越えていく姿が、あまりにも、すごい。めちゃくちゃ心動かされる作品なのです。

(周りの個性豊かで魅力的なキャラクターや、キャラクター同様に全力で臨む声優さんも魅力なのですが語り出すと止まらなくなるので割愛)

全51話+OVA3話と長尺の作品で、中盤は胸が苦しい曇らせ期間が長く続いて今の視聴者が耐えられるかわからないのですが、それがあるからこそのカタルシスがすごい。
原案・監督はかの有名な佐藤順一さん。『美少女戦士セーラームーン』や『おジャ魔女どれみ』を手掛けた方といえば色々と納得いく方もいらっしゃるかもしれません。女性の描き方、日常の描き方がうますぎるんですよね、、尊敬、、、
(ちなみにシリーズ構成は吉田玲子さん。そりゃおもしろいに決まってるでしょうこの作品。わかってくださいますでしょうか)


カレイドスターと出会って過ごして

これは短く。

というのもそこまで覚えていないのですが、近所のゲオでアニメを片っ端から見ていた中学生時代だったので、そこで偶然出会ってとりあえず一巻見てみた覚えがあります。

自分には姉がいて、その影響から少女漫画の『星の瞳のシルエット』(耳をすませばの原作者柊あおいさんの作品。250万乙女のバイブル)に胸キュンして育ったので、女性主人公ものは大概好きです。『だぁ!だぁ!だぁ!』や『カードキャプターさくら』、もちろん『おジャ魔女どれみ』とか。

カレイドスターもその延長線上のイメージです。
いやハマりました。ストーリーはもちろん、キャラクターがいいんですよものすごく。
カレイドステージの大スターでありずっと主人公の壁であり続けるレイラさん(CV.大原さやかさん)や、いたの?ケンでお馴染みな存在感薄いけどファンからめちゃ愛されるステージスタッフのケン(CV.下野紘さん)、言葉少なでとても厳しいんだけど愛に溢れたステージオーナーのカロス(CV.藤原啓治さん)、スケベとまじめのギャップにやられるステージの精霊フール(CV.子安武人さん)などなど……。
(他の出演声優さんをざっと羅列すると、西村ちなみさん、渡辺明乃さん、水橋かおりさん、折笠登美子さん、小桜エツ子さん、千葉進歩さん、中原麻衣さん、櫻井孝宏さん、久川綾さん、三石琴乃さん、沢城みゆきさん、福圓美里さん、諏訪部順一さん、鈴村健一さん……錚々たる面々です)

あまりにも良すぎて何週も視聴し、ずっとずっと好きで、でも思春期なので言いづらい部分もありました。
ただひょんなことから高校でラグビー部の見るからにアニメを見ないようないかつい友人に布教したところ、自分以上にハマってしまって、当時から今まで彼は何十万円もカレイドスターに注ぎ込んでいます笑
DVD-BOXはもちろん、だいたいグッズ持ってるんじゃないかな?
一時期は三体の抱き枕(両腕+体の上)に囲まれて眠ってうなされろくに眠れない日々を過ごしていましたし、すべてのグッズは棺桶に入れて一緒に燃やしてくれと言っている最強のオタクです。
(さらに余談ですが彼は全国大会の決勝前日に最終話(4だか5週目)が見れるように計画して見るなど常軌を逸していました笑)

今回の音楽祭はもちろん彼と共に行ってきました!


カレイドスター音楽祭

ここからは言葉が乱れます。

いや、まじで、よかった。よすぎた……

今も思い返すと夢心地です。だって人生で一番好きな作品のいわば新作と10何年振りに出会えたわけですよ。感動の、すごい、再会。あの曲に、そしてキャラクターたちに。超感動。震えました。今も書きながらため息しか出ません。泣けと言われたら泣けます。言われなくても泣きます。

当日も公式のXを見て気持ちを高めていたわけですが、ここでも少し友人のおもしろい話があって(わかる人にしかわかりません)、会場にお花が送られてきていたわけですよ。関係者各位から。
すごいねー素敵だねーって友達にその画面を見せたのです。
そしたら一瞬で「さすが池Pんとこはグロリオサだね」って。
OVAのキーとなる花なわけですが、私もぱっと見でその感想は出てこなかった。今も花屋を通りがかるとその花がお店にあるか探してしまうらしく、地元のここの店には結構あるよなど教えてもらいました。20年だぜ……?

あと物販に1時間ほど並んだのですが、会場にはキャラソンが流れていて、イントロの度にこれは誰の曲だね、よく聞いたなーなど言うものですから、まあ僕もわかるのですがこれが通じる友人は彼しかいません。いやもうその時点で楽しい。

なお物販にも愛が溢れていて、最高にかわいいのはもちろん、信じられないほど安い。たとえば作中で登場する公演ポスターのポストカードが16枚で税込1650円はいかれてます。
ファンド側の企画・運営スタッフにカレイドスターが大好きな方がいて、今回のクラウドファンディングの応援者の皆さんに利益なんか度外視でぜひ届けたいということでした。設定資料集とか攻略本(アルティマニア)くらい分厚い。お金があれば全部買ったのに、、悔しい、、、
さらには原画展まで同会場で開かれていて、ああもう眼福~~~
しかも撮影オーケー……涙がちょちょぎれます。

そんなこんなで会場入り。席に着くと、物販並んでいる時からそうですが当然そこにいる皆さんはカレイドスターがずっとずっと大好きな大ファンの方々。
仲間なわけですね。
なんだこの心地よさは。
いわばこの空間のすべてがカレイドスターでできているのですよ。ひゃー。
まさしくここはカレイドステージ。
胸が高鳴ります。
いやなんかもう、緊張……

するとスピーカーから大好きな声優さん広橋涼さん演じるそらの、何百と聞いたフレーズが……

「みんなー、カレイドスターが始まるよー! …………」

深い息が漏れます。この日この時のためのそらの台詞が耳に入り、全身にしみわたり、力が抜け脳がとけていきます。

気持ち悪いですね笑
ちょっとここらへんはもう許してください。

ただその後なんです。その後。
実はカレイドスターの声優さんの中には、大変悲しいことに亡くなった方もいらっしゃいます。
聞こえてきたのは、その方が作中でうたう歌。
河合英里さん(サラという歌姫役のキャラクターが歌う際のCVを担当していらっしゃいました)の、Sirenという歌が流れたのです。

開演前の落ち着きのなかった空気が、静まり返ります。
歌が終わって、静寂。
ああサラさんの歌だ……、僕はもうその時点で拍手喝采を天国に届けたい気持ちでいっぱいでした。きっとみんなそうだったと思います。

そうして音楽祭は幕を開けました。
内容は、ほんと、書き出すとあまりにもキリがなさすぎるので(全51曲。ちなみにアニメの話数は全51話。愛……)、特に印象的だった部分のみ。

まず一曲目。そらのテーマ。毎話あらすじをキャラクター(主にそら)が喋るのですが、その時に彼女のテーマ曲が流れます。そしてその後に、今は少ないかもしれませんが、アニメでサブタイトルがでんって出るカットがあるじゃないですか、そのバックに流れてる曲が流れたんです。
つまりアニメの始まりの再現です。
ハイ感涙ー。この時点で落ちました。
いやもうとっくに落ちてましたけど、ここで白旗、ギブアップ。
始まったんですよ。止まっていた時が再び動き出したんです。新しい一話がここに。

音楽は1,2分のものが多く、それをテーマごと(わかりやすく言えば日常の明るい曲、挑戦の重い曲、など)に分けて演奏していくスタイルでした。休憩を挟んでの2部構成です。

1部は基本的に劇伴曲を中心に、合間にメインキャストの声優さんが司会進行する形式です。
ああもう無限に続けと思いましたね。
どれもこれも知ってるあの曲。
流れるとずっと昔の作品なのにシーンやセリフが浮かぶんです。その時の感動した自分も今の自分と重なってそこにいて、ずっと胸がいっぱいなんです。

いやーそして何よりオーケストラの生演奏ってめっっっちゃ素晴らしいですね!
元々カレイドスターの楽曲は窪田ミナさんという方がつくっていらっしゃって、オーケストラ譜面なんです。だから作中の曲がまんま、1枚の厚い音の壁となり迫力を伴ってぶつかってくるんです。
しびれる~~~。
指揮は西谷亮さん。演奏はパシフィックフィルハーモニアポップス東京の皆さん。最高ですーーー。うえーーーーん。

もう1部終了が寂しくて。終わっちゃうのやだーでしたよもう。

ただ2部です2部。
何から始まったと思いますか?

米倉千尋さんの生歌からですよ!!!!?
うぎゃーですよほんと。
ガンダムも好きなのでそりゃカラオケではよく嵐の中で輝くんですけど、カレイドスターのOPも歌ってくださってるわけですよ。

『約束の場所へ』

これをなんと、オーケストラアレンジで(!!!??)、歌ってくださいました!

あっっっっっかん。

あかんわほんま。圧巻やで。どないしてくれましょ。

窪田ミナさんのピアノのイントロに、伸びやかで晴れやかな米倉千尋さんの声が重なったらそれはもう聖歌なんよ。
そこにオーケストラが重なったら天に昇るんよ。

号泣。

そして歌詞が刺さる刺さる。
最高の応援歌。
夢を見て頑張ってる自分にはそりゃ一生モノの宝物ですよ、ここでこの歌を聞けたのは。

おっしゃがんばろ。

という感動も束の間、続いて朗読劇です。

ろ、ろ、ろ、朗読劇!!!!???

それもう新作じゃん!カレイドスターの!うええまたそらとレイラさんに会えるのかよ!やったーーーーー
とまあ音楽祭の告知時点で最高に期待していたわけですが、さらに最高に裏切ってくれました、やってくれましたなほんとにもうあなた方は……(^_-)-☆

ケン役、下野紘さんサプライズ登場。

最初スピーカーから聞こえてきたので新録したのかなあと思いきや、マイクスタンド引っ提げて生声でいつもの台詞を叫びながら登場。
会場のどよめきは最高潮。
何度泣かせる今日、ここ僕の墓標?

なにそれ3人並んでるんですけどーーー
そしてそれに窪田ミナさんがピアノで生で曲を合わせる……
いや冷静に考えて贅沢すぎんか。

ちなみに途中の曲はリハーサルで佐藤順一監督に「合間も弾いたら?」と言われて即興で新しい曲を弾いたんだって。あたまおかしいなあ(誉め言葉)。

ああほんとに、20年前と変わらぬあの3人が、話してる、、生きてる、、、
(ただ下野紘さんは当時新人だったためあどけなさがあったのに、今回はもうめちゃくちゃ堂に入っていた。さすがすぎて笑っちゃった)

もうほんと大好き。カレイドスター、らぶ。

この後はトークの時間があって、佐藤順一監督、キャラクターデザインの追崎史敏さんも登壇。色々な話が聞けてたーのしーー。
いじられている下野さんかわいかったし、米倉千尋さんは登場からハケから歌唱からトークから終始かわいかったし、マイクをずっと持って話を回す大原さやかさんもマイクをずっと下ろしてにこにこしてる広橋涼さんもかわいかったし、オタクはずっとにんまりですええ。

最高にほっこりしたところで、音楽の続きです。

ここでひとつ挟んでおくと、あれですね、ヴァイオリンやチェロ、コントラバスといった弦楽器はもちろんですが、フルートとクラリネットとハープがカレイドスターの楽曲ではめちゃくちゃいい味を出しているのだなという気付きがありました。
もちろんハーモニーがあっての魅力なのですが、特にハープ、すっきやわぁ……。

そして終盤、重い曲が続くんですよ。
これぞカレイドスターという感じで。ズシンと来る曲。ティンパニーが大活躍。
ああカレイドスターが詰まってるなあと思いもひとしお。

カレイドスターの曲ってすごい数があって、似た印象の曲もあるので、この場面はこの曲で担えないのかなという意見もあるかもしれませんが、違うんですよ、この曲があのシーンあのセリフあのカットに最高にハマって欠かせない曲たちなんです。
劇中でも演出、画、動き、声、音楽のハーモニーが奏でられているから最高のアニメなんです。

そしてそれをつくったのが、アニメの劇伴が初だったという窪田ミナさん。

……え!!!????

???????

頭おかしいでしょうよ(誉め言葉)。すごすぎます。
なんですかこの最高の曲たちは。しかも何十曲も!
僕たちの心をがっしり掴んで自由自在に揺さぶってもう二度と離してくれないじゃないですか!
しかも今回失ってしまったオケ譜を新たにつくりなおしたりもしてるっていうじゃないですか。そんなのってすごすぎるよ……(TДT)
カレイドスターにはこの楽曲以外ありえません。
本当に本当に最高です。
カレイドスターファン皆さんの誇りです。
ミナ・クボータ、イズオールソー、ザベストカレイドスター。
(I'm not confident in English)。

そうして曲は進みます。じれったいようなでも目が離せない時間。
がんばれーと作中のキャラクターを応援した時のような。
前のめりで見守る時間。

そして、解放。

最終話の音楽が流れます。作中同様、皆の顔に笑顔が浮かびます。
続いて、Cinderella ~ 20th Anniversary Special Version
1話のラストが特に印象的な、感動的なシーンで流れる曲です。

終わってしまう。
このひとときが。
本当に、思い返せば、刹那のような3時間。
RRRがこの世で一番短い3時間だと思っていましたが、いやここにもっと短い3時間がありました。
この時間の収縮はきっと物理学では証明できないんじゃないでしょうか。
ああ、終わってしまう……。

寂しくも、最高の喝采を送りました。
最上の感謝を込めて。

そうしたらそこに続きがあったのです。

アンコールは、作中、熱い挑戦、そして「次回予告」にて流れる曲。

Challenges for Future

司会進行のそらとレイラさんも言ってくださったように、これで終わりじゃない。きっとまた会える。そんな次回予告、次に続く曲。大好きな曲。
51話かけてあの最終回に辿り着いた時のような、51曲かけて辿り着いたカタルシスが、会場中に溢れていました。

最高を超える、最高の喝采。

作中の台詞をもじって言ってくださったセリフを、同じようにお返ししたい。

カレイドスターという作品を世に生み出したスタッフ・キャストの皆さん、この音楽祭の実施に当たって尽力してくださった皆さん、そしてこの日この時この場にカレイドステージをつくりあげた愛に溢れたカレイド馬鹿(誉め言葉)たち、あなたたちは私の誇りです。

うえーーーーーん(以下しばらく号泣)


オタク「だった」ことを思い出しました

ということでここまで読んでくださった強者がいらっしゃるのであればご理解いただけた通り、私はオタクです。
上記のカレイドスターの広橋涼さんのイベント納"涼"祭に行って、とある作品の主役が広橋涼さんだと発表された時に大号泣したレベルのオタクです。

オタク「でした」。

それを思い出したわけです。
まあこれがタイトルなわけですよ。いや長い前振りでした笑
ここから先は自分語りの色が強いので、カレイドスターファンで読んでくださった方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんm(_ _)m

正直、ここまでの熱量を込めて好きになれる作品は、今、ありません。
この作品が特別ということもありますが、そもそも昔はもっとオタクでした。

オタクという言葉の定義から入らないと齟齬が生じてしまうかもしれませんが、あえてざっくりとした意味のまま定義せず語りますね。

大好きなものが生活の一部だったわけです。
もっと極端な話をすれば、身体の外にある臓器だったのです。
カレイドスターだけでなく、その他様々な作品や、カードゲームやテレビゲームなどのホビー、プラモデル、アーティストに作家、好きをたくさん身体にくっつけて、そこに栄養を注いでは、それに生かされていたのです。

広く浅くというよりは、狭く深くなタチでした。
好きな声優さんの出演作品を一通り見るのは当然でした(合う合わないはありました)。
収集癖がありましたので、少ないお金でリサイクルショップやオークションで好きな作品のグッズを見つけては買い漁り、音楽ならミスターチルドレン、ボーカロイド、小説なら村上春樹さんばかり読んでいました。
まあ本もアニメも好きだったので他にもすごい接種はしていました。学校の読書マラソンでは1位を独走していました。
好きに情熱を捧げる日常がありました(特にボーカロイドは初期からODDS&ENDSくらいまで異常なほど聞いていました。いつか別で話せたらいいな)。
当たり前だったんですそれが。

でもいつの間にか、そういったものから距離をとっている自分がいたことに気づきました。
本も曲もアニメも以前みたいに追いかけるということができなくなっています。
巷で流行っているものをとりあえず摂取しておもしろいなあと感動して、終わり。グッズも基本的には買いません。
昔好きだったものに対しても以前のような情熱で接することができません。
大切なものであることは確かなのですが、それを日常の一部とすることができません。
知り合いにいわゆる「推し活」にたくさんの時間とお金を費やしている人がいて、すごいなあと他人事のように見ている自分がいます。
僕は無意識のうちに自分の身体から彼らを切り離すことを選んだのです。


オタクでなくなった理由

ううん。なんでだろう。と思いました。

意識的ではなかったのです。
そもそもが好きに対してそこまで一生懸命だった自分がいたこと自体忘れていました。客観的に見たら偏執的に思えるかもしれない、そんな愛があったように思います。

そして気づきました。

ああそうか、僕は今演劇をやっているんだ、と。

鳥と舟という劇団を主宰し、主に作演出を務めています。
たまに出演したり、音響を担当したり、あと運営的な作業は大体僕がやっています。デザインも好きで、劇団のフライヤーなんかは僕がつくっています。

端的に言えば、僕は色々なものを削ぎ落として、その演劇を日常にすることを選んだのです。

元々要領がいいわけではありません。
ずば抜けたセンスや実力がある訳でもありません。
でもずっとテストでは100点を取りたくて努力してきたという下地もあり、なんでも満足いくまでのものをつくりあげないと気が済みません。
ただ演劇ってそこまでのものを成立させるのが本当に難しいんです。
自分の実力不足がやはり大きいわけですから、勉強も必要です。
何度も何度も経験を重ねて上手にできるようになっていかないといけません。
カレイドスターのそらじゃないですが、挑戦と失敗の連続です。
未だに心から満足のいくものはできません。
それをお見せしているというのは心苦しく申し訳ないと思いますが、その時できる最大限におもしろいものを提供する、そこには人生を賭けてそれだけの時間と想いを費やし、お客様が費やしてくれる想いとお金と時間に相応しいものを提供している自信はあります。

ただその自信を得るためには、本当に、自分は日常をできる限り費やさなければなりません。

演劇とは別に朝早い仕事をしているので、5時前には起きます。
肉体労働を終え、15時半ごろ家に帰ってきます。
稽古の日はそれから諸々準備をし、18時から稽古です。
22時に稽古を終え、家に帰ってからも作業を進めます。
2,3時間睡眠もザラです。
ただ仕事をしながら演劇をやっている人であればこのような人はたくさんいると思っていますし、苦ではありません。
好きでやっています。
ただいつまで続けられるかはわからないなとも思います。
持病があり、体調を崩すこともあります。

話は変わりますが、私は人の気配を感じるとトイレがうまくできません。
ちょっと汚い話ですみません。
中学校の時から3階の一番端の特別教室があるような人がいないトイレに行っていましたし、今も外ではかなり気をつかいます。
人がいなくてもトイレの外に人の気配を探してしまったりします。
後ろに立たれるとか本当にもう最悪で、したフリをして外に出てからまた改めてトイレに入ったりします。
同じ部屋にいても他の音が鳴っていたり水を流したりしないとできませんし、最悪外にしに行きます。
ただそれでもしないといけないなという時は、頭の中でとあることを考えて気を逸らします。

ああ演劇がやりたいな、と。

これはもう癖になっていて、反射的に思います。だから最低でも一日何回かは演劇がやりたいなと考えながら生きています。病的だなとは思いますが、まあそれだけ日常になっているわけです。


タイムマシンはあると思うか?

とまあ、そういうことで、カレイドスター音楽祭最高でした!!!

違いますかね。
いやまあそれは何より事実で、その結果として色々なことを考えるきっかけにもなりました。

僕はこれからもカレイドスターが大好きです。
でも同じくらい、もしかしたらそれ以上に、演劇を大切な仲間たちとつくりあげてそれをお客様にお届けすることが好きなんです。
それが僕の日常。
生きている、ってことです。
僕は今、演劇に生かされています。
どくんどくんと、演劇が脈打って、僕が注いだ栄養を、また別の形で僕の身体に戻してくれています。
とても愛おしい、大切なものです。

ここで最初の話に戻ります。
タイムマシンの話。

十何年ぶりに、カレイドスターの新しい物語を目の当たりにしました。
もし、もしもの話です。
タイムマシンがあって、当時の僕が、音楽祭を見れるとして、それを見た時に、今僕が抱えているこの感動は、きっと別の形になっているんだろうなと思います。

だからもしタイムマシンで次の音楽祭がすぐ見れるとしても、僕は見ません。
このかけがえのない『今』は、かけがえのないカレイドスター放映からの20年があったからこその『今』であり、僕の十何年があったからこそのものです。
それを僕はきっと一生抱えて生きていきます。

もちろんタイムマシンがあれば、色々な悲しい出来事を避けられる可能性もあります。それを否定することはしません。誰かの悲しみを僕が取り除けるなら僕はそれを取り除くためにありたいと思います。
ただそれとは別に、僕は僕の感動のためにタイムマシンを使うことはしたくない、ということです。

だって、僕も物語をつくる側なわけです。
物語をつくる日常をすっ飛ばしたり、過去に戻って何度もやり直したり、そうすることで得られるものは、本当に僕が欲しいものなのでしょうか。
今回のカレイドスター音楽祭のような感動や一体感をつくり手側として得られるでしょうか。

いつか僕も、僕にとってのカレイドスターのような、誰かにとっての最高の物語をつくりあげたいと思っています。でもそれは、『今』をしっかりと重ねていった『いつか』なのです。

その夢を叶えるために、僕は今日も明日も明後日も、演劇と共に生きていきます。演劇をつくるオタクとして。
だからちゃんと問いに答えるならば、僕はタイムマシンはあると思います。
でも今乗りたいとは思いません。
今この瞬間を大切な人と共に生きて、一歩一歩前に進んで、いつかその日が来た時に、かけがえのない感動をみんなで分かち合いたいと思っています。

誰も探してる夢はきっとある 歩き出せる
ここから何かが始まる 信じてたい
まだ見ぬヒカリ 約束の場所へと続いてゆく
願いがいつか叶うまで ひとりじゃないさ

米倉千尋さん『約束の場所へ』より
素敵なパンフレット。宝物。
パンフレットに記された名前。嬉しいな。



追記

カレイドスター、舞台化なんて、いかがでしょうか……。
朗読劇も最高ですがさらにシルク・ドゥ・ソレイユとのコラボで舞台つくりあげて全国興行、さらには海外遠征なんて……。
言霊なんて言いますし、書くだけ書いておきます。
そしてそれが現実になるのであれば私も何らかの形で携われるようにめちゃくちゃ努力します。
夢みたいなひとときが現実となったので、併せてこんな夢も見させてください<(_ _)>
イチファンとしてはオリジナルキャストが最高なので皆さん空中ブランコや鉄球トレーニングなどなされるのは大変かと思いますがぜひ……!!
スタッフの皆さん、本当に夢のようなひとときをありがとうございます!ます!ますー!!!

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