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短編小説

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望月が創作した一次短編小説です。※転載厳禁 電子書籍化された作品に関しては、試し読み以降有料マガジンにてご覧になれます。 ワンコイン(500円)で電子書籍化した作品が読み放題、初… もっと読む
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Birthday Present 企画小説 5

※初めからはこちら  「お疲れ様です。ありがとうございました」  「おっつかれーっ。中の人たちは大丈夫なの」  「ええ。彼らが上手くやってくれることでしょう」  「彼らとは?」  「私の下僕たちです。甲板で動いてる方々ですよ」  「そうか。俺の目には見えんが、随分な人数の気配を感じる」  「顔こわいけど、みーんなフィンリーがしめあげた人たちなんだよ」  余計なことをいわなくてもいいんですよ、まったく。まあ。  「ああ、報告にあった人間達ですね。姫様に害が無いなら何でも構いま

Birthday Present 企画小説 4

※初めからはこちら  神職に対して敬意を払ってるのは本当のようで、男はひとこと謝りながら私たちを錠にかけました。失礼ながら、確かに一般職の方々には怖がられてしまう外見でしょう。私からしたら全然ですが。  それに、戦闘に関しては全員素人ですね。細かくは見れませんが、雰囲気で大体の察しはつきます。  ワープで連れてこられた先は倉庫でした。暗がりですが、ボロボロの身なりの子供と若い女性がいるようです。とくに前者が多いように感じます。沈んでる雰囲気から、自ら進んでここにきたわけでは

Birthday Present 企画小説 3

※初めからはこちら  港が近いこともあり潮の香りがよく鼻をくすぐる町は、ワープゾーン開通もあってより大きく賑やかになっていくことでしょう。私たちはまさに真っ只中にいるわけです。  以前より整えられた道には花壇が備えられ、より明るい雰囲気にさせてくれます。ちょうど昼時なためか、人々でごった返していました。  まあ、中にはよからぬ輩もいるものでして。  「だから知らない人についていかないようにといってるでしょう」  「はぁい、ごめんなさい」  シュンとしながら謝罪するクイン。本

Birthday Present 企画小説 2

※初めからはこちら  通りに戻って目的の店舗を見つけると、周囲に気を配りながら入店しました。大型店タイプで、装備によって階層が違うようです。客層は冒険者をはじめ、一般の方もいらっしゃいます。看板を見ると包丁や銛などの日用品もあつかってるので、もののついでに散歩するのもアリなのでしょうね。  最初は短剣が展開されてるフロアへお邪魔しました。ですが、想像以上に普通のお店で、とくに臭うところもなく。ほかの場所に移動しても同様でした。一番長くいたのはアイスクリームが売ってる休憩所と

Birthday Present 企画小説 1

 交通手段が充実してると、色々な場所への移動が楽でとても助かります。とくに移動の多い人には多大な恩恵のひとつでもあるでしょう。  便利な時代に生まれたこと感謝しなければなりませんね。おかげ様で時間短縮ができ、趣味に没頭できるというものです。  そう、他愛なく平和な日常を与え賜う神に感謝をささげます。  「神父様~、こんな感じ?」  「いいえ、もっとです。こういう連中は半殺しぐらいに痛めつけないとわかって頂けないのですよ」  「あ、そうだったね。それじゃ」  「そんなことないな

クリスマス企画! プレゼント小説 前編

 旅は慣れると楽しいものです。色々な人々とも交流できるし、景色に心奪われるのも素晴らしい。  まあ、さすがに一週間の野宿は堪えますが。  「んもう、神父様のせいだからね。はあぁ~、ゆっくり部屋でくつろぎた~い」  「はいはい、悪かったですよ。まさかここで盗みに遭うなんて思ってもみませんでしたから」  近頃平和が続いていて、うっかり油断して荷物から目を離してしまいまして。いやはや、近くに町があると分かったときには救われた気持ちになりました。やはり、日頃から神に対して感謝してるか

クリスマス企画! プレゼント小説 後編

※前編はこちら  はてさて。色々と買い物をしていたら荷物が増えてしまいましたので、一度教会に戻ることにしました。教会が用意してくれる食事は朝のみなので、荷物整理した後に昨日訪れた食事処にお邪魔しようとしたのですが。なぜか本日休店の文字が入口に掲げられていました。腰痛にでもなったのでしょうか。  「神父様。店からヘンなニオイがする」  「おや。裏に回ってみましょう」  クインの鼻は私よりもいいですからね。五感が他人より優れているのです。  聞いたところ嗅ぎなれたくない臭いでは

自由な色彩 〜プロローグ 後半〜

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スノーマン 〜世界にようこそ 1〜

 スマホの復しゅうでも受けたのだろうか。機械に労働基準法はないと思うんだけど。  たしか家でアプリを立ちあげてゲームしていたのは間違いない。  ところがどっこい。何がどうなっているのか辺り一面、雪景色なのである。  今まで経験したことがない白銀の世界に、俺の神経が寒さのあまり悲鳴をあげる。うおお、北海道に住んでる人は大変だろうな。慣れなのかもしれないけど。  って、んなコトはどうでもよい。とにかく暖かい場所を見つけて布団にくるまらなければ。  見渡すも、澄んだ空と真っ白な雪、

雨粒の行き先 1

 名もない道のほとりに同じような存在の木々が並んでいる。街路樹と呼べるほどそれが立っているわけではないが、不思議なことにそういった微妙な空間が人々の憩いの場となっているらしい。  そんな穏やかな雰囲気の中、俺もひと休みしていた。ここから目的地まではまだまだ遠いからだ。  しかし、そんな幸福な時間を邪魔する輩が現れる。  「やっと追いついたぞ。 さあ、てめぇの持ってるお宝をよこしな」  「やだ。つーかくつろいでんだから帰ってもらえる」  「な、何だと」  何だと、じゃねぇんだよ

不思議な夢の物語 〜プロローグ〜

 「っつーことだ、わかったか」  「わかんない。要はその3つの宝石を集めて秘法をとってくりゃいいんだろ」  「そ、そうね。それでいいわよ、もう」  ため息をつく少年少女。もう一人の少年は難しい顔で頭をかいている。  その様子を見て、説明していた少年の手にある本が、より大きく開かれてしまう。  「お前、人に調べさせといてそりゃねぇだろ」  「悪かったって。まさか魔法に関わることだとは思ってなかったからさ」  「グリシェに聞かなかったの」  「あんたじゃわかんないよの一点張りで教

自由な色彩 〜プロローグ 前半〜

 そう広くないある広場で、ひとりの少女が小さな平筆を持ち、仁王立ちしている。次の瞬間目を開いた女の子は、力強く{炎|ほのお}の絵を描いて叫ぶ。  「フレイムッ」  うまいらくがきと言葉で発せられた炎は、茶色い前髪の前を熱くこがし、すぐに消える。彼女は何を思ったのか、同じ動きを何度も繰りかえしていた。  ここはどこかに存在するといわれている魔法の世界。筆と言葉で創りあげるそれは、決められた学科に入れば誰でもでき、とくに難しいものではない。もちろん攻撃魔法を使うマジシャンだけでは

スノーマン 〜エピローグ 2〜

 何ていうんだろ。勝利のうたげってこんな感じなのかな。よく歴史とかで戦いのことをならったけど、当時の武士たちは、もしかしたら、彼らと同じ気持ちだったのかもしれない。  もちろん、この世界の獣民たちが戦っていたのは自然なんだけどね。人間同士との戦いとワケが違うと思うけど、さ。  ま。俺は戦争を肌で経験したわけではないから、ちょっと違うのかもしれない。経験したくもないし。  って、そんなことどうでもいいよな。今は飲んで歌わず食べて楽しむのが一番いい。  俺は目の前に用意されたごち

スノーマン 〜エピローグ 1〜

 ふと目を覚ますと、白い頭が四つに猫っぽい顔にサルっぽい顔、その他、いろいろな動物のりんかくが目にはいった。数秒後だろうか、なにやら嬉しそうにしているような奇声が聞こえてくる。  「サクヤ、大丈夫っちか」  「えー、あー」  声が聞こえるのはわかるが、誰なのかがわからない。頭がぼんやりしていて、何も考えられないのだ。  「おい、大丈夫か。しょうがねえな、コイツで気合い入れるか」  「さすがにそれはやめておいたほうが良いと思うぞ」  「そうだ。また気を失ってしまったらどうするの