ネットリンチを受けたので訴訟を起こし、勝訴した話 【5】 『実戦編』
1. はじめに
本記事では、「ネットリンチ加害者を訴えたい!」と思った方向けに、実際に訴訟するに当たって筆者が必要と思うことを記載しています。
訴訟自体についての具体的な方法については、「発信者情報開示請求」と検索すればわかりやすく説明したサイトがたくさん出てきますので、そちらをご覧下さい。
本記事ではそれらのサイトには書かれていない、個人として感じたことを中心に書いていきたいと思います。
2. 訴訟のメリット・デメリット
訴訟を起こす前に筆者が感じた訴訟のメリットとデメリットを挙げておきます。
訴訟のメリット
・損害賠償金を得られる可能性がある
・加害者の非を明らかに出来る
・ネットリンチ行為への抑止力になる
訴訟のデメリット
・多額の費用がかかる
・解決まで長い歳月がかかる
・訴訟の準備に心身を消耗する
2.1 訴訟のメリット1
損害賠償金を得られる可能性がある
これは当たり前ですね。
目安としては1件あたりざっくり「数十万円」という所だと思います。
※賠償額は誹謗中傷の内容、頻度、そして担当する裁判官によって当然差が出るので、いくら貰えるか?ということは弁護士であっても「わからない」としか答えられないと思います。
ただし、これを目的に訴訟するのは推奨しません。勝訴しても回収出来る保証は無く、弁護士費用すら賄えない可能性があるからです。
あくまで「ネットリンチ被害を何とかしたい」という気持ちが重要です。
(もっとも、加害者の側が「金目的だろ」などと被害者を罵る口実にすることはあっても、被害者側がこれを目的として訴訟するということはまず無いと思いますが)
2.2 訴訟のメリット2
加害者の非を明らかに出来る
裁判所というのは、日本で最も客観的、かつ公正に判断を下してくれる機関です。
その裁判所が「加害者に非がある」とハッキリ示してくれるのですから、普通の人は「あぁ、ネットリンチ加害者の側が悪かったんだな」という目で見ます。
デマの拡散や理不尽な誹謗中傷を受けている被害者からすれば、「悪いのは加害者側だ」だと確信することが出来ますし、それによって傷付いた自尊心を回復させることが出来ます。
個人的にはこれが訴訟を起こす一番大きなメリットだと思います。
2.3 訴訟のメリット3
ネットリンチ行為への抑止力になる
これはやり方次第ではありますが、ある程度ネットリンチへの抑止力になると思います。
何故なら、誰だって訴えられたく無いからです。
ネットリンチ加害者の多くは、周りに流されて気軽に行っていることが多く、自分が訴えられる可能性などほとんど考えていません。
自分が痛い思いをすることが無いと思っているから平気でネットリンチに加担するのです。
ですから、「自分が訴えられるかも知れない」と思えば、大体の人は慎重になります。
ネットリンチは、その「数」が暴力性の大きな要因なので、数が減ることは大きな効果をもたらします。
これも大きなメリットだと思います。
2.4 訴訟のデメリット1
多額の費用がかかる
シンプルですが、これが訴訟を起こす最大のデメリットです。本当にお金がかかります。
ネットリンチの訴訟に限らず、「弁護士に頼む」ということは、ざっくり100万かかる(※)と思って下さい。場合によってはそれ以上かかります。
(※)弁護士や内容、件数、結果によって全く異なりますので、参考に止めて下さい。
それでいてその費用を回収出来るとは限りません。
訴訟に必ず勝てるとは限りませんし、相手が賠償金を払えるだけの収入・資産があるとは限りません。
今の法律は加害者に圧倒的に有利です。
ですから、訴訟をするには全てをドブに捨てる覚悟が必要です。
「それだけの価値がある」と自分で思えるかどうかはよく考えてください。
2.5 訴訟のデメリット2
解決まで長い歳月がかかる
最低でも一年以上かかると思って下さい。場合によってはそれ以上かかります。(今は新型コロナの影響でなおさら滞ってしまっています)
それは、現在の法律では、
①サイト運営者に加害者のIPアドレスとタイムスタンプを開示さる
②プロバイダに加害者の氏名、住所を開示させる
③加害者に損害賠償請求する
という、3つの訴訟を行わなければならないからです。
(途中で加害者が示談を望めば早めに解決することはありますが、その可能性は低いと思った方が良いです)
これはネットリンチの加害者に圧倒的に有利です。
判決が出るまでの間、被害者はひたすらネットリンチされ続け、名誉は傷付けられる一方となります。
下手に何か言い返せば裁判で不利になるため、言い返すことも出来ません。
かなりの忍耐力を必要とする、ということ覚えておいてください。
2.6 訴訟のデメリット3
訴訟の準備に心身を消耗する
訴訟は「証拠が全て」と言っても過言ではありません。
ネットの誹謗中傷は、投稿者が消さない限りは証拠が残るので証拠を集めること自体は難しいことではありません。
問題は、その過程でどうしても、自分への大量の誹謗中傷投稿を見なければなりません。
むしろ、自分で
「○○(自分の名前) バカ アホ 死ね クソ 犯罪者」
みたいな検索をしなければなりません。そして、実際そのような投稿が山ほどあるのです。
これはとても苦痛なことです。ほとんど自傷行為です。
弁護士に依頼すれば訴訟自体は自分ですることはほとんどありませんが、そのために必要な準備で心をかなり病むということを覚えておいて下さい。
2.7 訴訟のメリット・デメリットまとめ
このようにまとめてみると、訴訟のメリットよりもデメリットの方が大きいということが理解していただけると思います。
これが今までネットリンチ被害者を泣き寝入りに追い込んで来た理由だと思います。
本当に、よほどの覚悟が無い限りは推奨出来ません。
それでもなお、「自分は納得出来ない」、「ネットリンチ加害者を許せない」、「ネットリンチ被害者を減らしていきたい」、と強く思うのであれば、訴訟という手段をご一考下さい。
願わくば、多くの人がそういう人を支援する社会であって欲しいと思います。
※以下有料記事とさせていただきます。
※ネットリンチを何とかしたいと思っている方にご購入いただけると励みになります。
※本記事の無断転載を禁止します
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