「もしかして、不倫……?」 夫のスーツから甘い香りがした。女物の香水の匂いだ。電車やエレベーターに乗っている間に、匂いが移ることもあるけれど——。 スーツの左袖を顔に近づけると、香水の匂いが強くなった。おそらく長い時間、密着していたのだろう。そうでなければ、こんなに濃い匂いがつくことはない。 その夜。夫のいびきが大きくなるのと同時に、諒子はそっと起き上がった。不倫をしているかどうかを確認する為に、夫の携帯電話を手に取る。 ——起きないでよ……。 夫の布団を