もう会う理由も無いですし、コピー・アンド・ペーストで済ませて
この曲を聴けばどうしたって、想わずにはいられない。
そんなの、誰にだってあると思うけれどわたしにはひとつだけ、もうずうっと忘れられずにカラダん中をうじうじ這いまわっているヤツがいる。非常にやっかいだ。
そう、ひとりだけね、もうずうっと忘れられないんだわ。
ああ、ああ、わかってらぁよ。自分のことは自分がいちばん。もう自分のきもちに嘘つくなよ、とおもって、わたしは最近アチチな恋愛をできずにいる。
できず?ちがうよ、避けてんの。
ごめん、だってほんとは、何回も何回も何回も書いているし。恋人がいるときもずっと書いてきた、その人のこと。ごめんね。
安心してしまう。馬鹿なんだよ。幸せになることがしんどいなんてほんと、馬鹿みたいなわたしがこの夜をまだ生きている。たぶんおなじ曲を聴いている。- aoiasa 20190629
こんなふうにいつもいつも、わたしのなかのどこかに必ずいる。
一度すこし長い文章を書いたのもソレ。いまなら声を大にして言える。
だから今日、言っちゃえ。
ちょうどどこかで花火が打ち上がっていて、だからその日、田んぼのまんなかに車をとめて、かえるの声や虫の羽音につつまれながらたくさんの光をみた。もうガラクタのようになってしまったiPhone5に、そのときの動画が残っているかもななんて思う。
高校生のころ、ただの青臭いひとめぼれ。それがどうしてか、いままでもこれからも恋人にはならない。
ふかふかの白いベッドにもぐって、あなたが羽毛ぶとんごときゅうっと抱きしめてくれるのが好きだった。
ふいに「好き」って口走ってしまったことがある。
そのときのハッとしたような、すこし困ったようなあなたの表情を、わたしはずっと忘れずにいる。壊れてしまう気がした。たやすく、壊せてしまう気がした。
かくかくしかじか、なにもかもダメんなっちゃった時わたしには恋人ができた。その恋人はすごくすごく尽くしてくれて、支えてくれて、わたしもそれに応えたかった。だから
「じゃあね」と言ってしまえば、なにもかもをきっぱりと絶つことができた。
ごく小音で流れる、安っぽいオルゴールの旋律。広いバスタブに湯を張る。律儀にたたんだ服。泡風呂。メガネを外す。のぼせるよって赤い顔。冷房がキンと効いた部屋のなか、肌に触れるシーツ。細くて弱々しいからだ。切れ長の目。絞める手。交わる熱のちがい。(略)いつもおなじバンドの曲。濡れたおくれ毛。胡散臭いラベルのミネラルウォーター。ケトルがぽこぽこと鳴く。味のうすい粉末コーヒー。飲みきれず。
駅まで迎えきてよって、それからたった15分で来てくれた。帰りの車ん中はいつだってそのバンドの曲がかかっていて、鼻歌だったり、替え歌するのをわたしはニコニコしながら聴いていた。横顔もさ、フロントマンにけっこう似てるよね。なにそれもしかして寄せてんの?なんて茶化して。
その時間がいっちばん好きだったかもしんない、と今思う。でも、そんなすべてに
「じゃあね」をした。
でも恋愛、向いてなかったな。現実的なところばかり見てしまう。
「恋人」などということばで、じぶんらの意識をくくっただけの関係性にあまり興味が持てなかった。(略)でもそんなことをみんな「恋人」ということばでくくって、一丁前に楽しんでいる。みんな世に生きるのがじょうずなんだとおもった。
お互い「どうでもいい」になり腐ってまで。腐ってまでも、保ちたいのだ。
「じゃあね」ってしたのにね。
しごともやりたいこともなく時間をもてあましていたわたしは、あなたのために部屋のひとつひとつを丁寧に片す。こぎれいになった部屋をほめられて、いい部屋だねと、認められて、すこし浮き足立ったのも「どうでもいい」フリをしなくてはいけなかった。(略)毛布は猫のにおいがするねいいにおいね、と言ってわらっていた。
猫アレルギーのくせして、なーに言ってんだあ。
「ちゃんと庭あるのいいね、花育てられるね」と、今日のあなたが言う。これって、ちゃんとした庭?こんなのは雑草が生えてしまうだけの、厄介なスペースだと思っていたのに。たったいま、あなたが庭と言ったせいで、この1畳半がわたしの庭になる。
全然、花なんて育てられなかったし、いまだ庭にもなりきれてない。今年も雑草が生えはじめている。
17歳からのわたしのおもいで、ほんのひとつまみ。忘れかけていたことまで今更ふつふつと湧いてくるから、頭んなか散らかってしょうがない。
今日、そのアーティストのライブ配信を観て、どしても書きたくなって。ふざけんなよふざけんなよと思いながら、コピーアンドペーストを繰り返した。もっと載せたい文章もあったけど、それもまた「ふざけんなよ」とガンガン削った。
書きながら、やっぱずるいよって。
「ずるいのはわたしだった。」って書いたこともあるけどちがうんだよ、ちがったわ、あんたも十分ずるいよ。
今はもう”わたしが好きなアーティスト”なのに、聴くたびにこれからも想わずにはいられないんだぜ?オイオイふざけんなー!アハハハ
でも、暗ったるい助手席であんたの鼻歌を聴くことはもうないね。人気のない道をビューンって飛ばしてくれもしない。だってだって、売っちゃったんでしょ、あの車。ねえなにしてんの今。おなじ曲、聴いてた?
なんつって
まったくもう胸がギュウンと騒いでうるさいな。ほんとずるくて、ずっと好き。きっと今夜は鳴り止まない。
- aoiasa
20200418
目が明く藍色/サカナクション に寄せて
最後までありがとうございました。 〈ねむれない夜を越え、何度もむかえた青い朝〉 そんな忘れぬ朝のため、文章を書き続けています。わたしのために並べたことばが、誰かの、ちょっとした救いや、安らぎになればうれしい。 なんでもない日々の生活を、どうか愛せますように。 aoiasa