ひとりでできなかったこと

先日、福井県越前市で「ひとりでできるもん〜きみはさばE越してたけFやんけ〜」(以下:りでもん)なるクイズ大会を開いた。
その名の通りスタッフは私1人の完全ワンオペの大会である。
その前年、2023年3月には兵庫県南あわじ市で「沼島の春よ令和編〜ノリで入籍してみたらええやん〜」(以下:ぬし春)なる大会を開いた。
こちらは「Qrazy Express」(以下:QX)というユニットによる開催であった。

りでもんが終わったら、クイズからは距離を置く、と公言していた。この気持ちは今も変わらない。
理由など枚挙にいとまがないが、その中の一つを挙げる。
長くなるので一言でまとめると、クイズは都会人の特権であることに嫌気がさしたのである。

QX結成以前の背景

(少なくとも私の知る限りでは)クイズの多くは都会で行われている。
私は地方に住んでいる。クイズの場に行くためにはそれなりの時間とお金をかけて移動する必要がある。
機会を捻出するために有給休暇を取ったことが何度もあるし、帰宅時間の都合上途中で帰ることも常であった。ジリジリと減っていく有給休暇の残りを見るのも嫌だったし、盛り上がっている中1人で抜け出したりアフターを断ったりするのも寂しかった。
雑談の中でどこから来たのかという話題になると「遠くからよく来てくれたね」とほぼ異口同音に返され、(勿論相手に悪気がないのは理解しているが)この人たちは気軽に来られる距離だけど私だけは違うんだ、と思い知らされて疎外感じみたものを抱いてしまっていた。
毎回、乗車時間の長い帰りの列車(なんと電車ですらない!)の中で孤独感に耐え(きれずに酒に逃げ)るようになっていた。
無論それだけが理由ではないが、20代後半〜30代前半の数年はクイズから距離を置いて過ごしていた。

QX結成〜ぬし春開催

前述のとおり、ぬし春はユニットで開催した。
相方はクイズと関係のない場で出会った人である。
彼がクイズに興味があること、偶然にも自宅が近所であることなどを聞き、久しぶりにクイズの場に出向くこととなった。
自宅が近所なので行きも帰りも同じ列車である。諸々の疎外感や孤独感から解放された。
仲間がいる日々は楽しかった。そんな中、旅が好きな相方から、珍しい場所で大会を開きたいという話があった。
その結果がぬし春であり、地方における大会の需要を知るきっかけとなった。

参加理由「比較的家から近いから」31%

ぬし春 参加者アンケート

ぬし春2計画消滅〜りでもん開催

ぬし春では予告したが、2023年の時点で「ぬし春2」として越前市でのオープン大会開催の計画は立っていた。
それが私のソロ開催となった経緯は完全に私の不義理によるもので、相方には何の非もないことは予め強く言っておきたい。

以前より薄れたとはいえ、孤独感がゼロになったわけではない。毎日のように都会の人が仕事後にフリバやらクイズバーやらに行っているのをSNSで見たり、ソロ参加したクイズの場で以前と同じ目に遭うのが嫌だった。そもそも相方に依存しているような状況に問題意識を持っていた。
2023年の夏頃、孤独感と自責の念に耐えきれなくなり、QXも抜けてクイズからも離れたい、と思うようになっていた。その時点でエントリーしていた予定を全て消化すればクイズから離れて「ぬし春2」も白紙、もしくは新しいメンバーを入れたQXに託して身を引くと決めた。
秋にはクイズの予定を消化し、もう思い残すことはなかった。(この時点でエントリーしたことすら忘れていた大会が1件あったのだが完全に忘れていたので無関係)

クイズについて考えることなく過ごしていたところ、福井の人から「楽しみにしていた。大会がなくなってしまうのは残念だ」という旨のDMが来た。気にかけてもらえたことは光栄であったが、既にモチベーションを失っていた私は謝ることしかできなかった。
その後また別の福井の人から同様のDMが来るも、やはり謝るしかなかった。

「思いの外、いろんな人が楽しみにしていてくれた。黙って消える前に、最後に一歩踏み出す。そんな勇気が必要なんじゃないかと。」

りでもん 3rd stage Course-A開始前MC

年末に福井出身のクイズ屋の友人と飲んだ。
越前の大会をとても楽しみにしていてくれたこと。計画が頓挫して残念であると強く話してくれた。
少なくとも3人の福井からの需要があった。彼らの熱に絆される形で、越前市での計画を立て直すと決めた。
しかしながら、自分から抜ける不義理を働いた以上、もう相方には頼れない。これが一旦消えた越前市でのオープンの計画がソロで復活した経緯である。

都会人の特権で終わらせないために

「クイズは都会でやるもの」というのが半ば常識化している。私自身、これを当然のものとして何の疑問も持たずに都会に足を運んでいた。
その常識を、まずは変える必要がある。
しかし、地方でのクイズの可能性を掘り起こすには、私では力不足であった。

自分の大会を通して、地方でもクイズを楽しめる可能性を見つけてくれる人が現れてほしいと願っていた。一部で言われているような、「大会を開いてあげよう、という横柄」な意図や「住んでもいない場所にズケズケと行って馬鹿にする地方蔑視」な意図によるものではない。

私に声をかけてくれた福井のクイズ屋たちの勇気には心底感謝している。
これを読んでいるあなたが地方の人なら、地元で楽しむ可能性を諦めないで欲しい。
これを読んでいるあなたが都会の人なら、地方に出向くことを検討してみて欲しい。私自身、地元でできないかと都会のクイズ仲間に声をかけたことがあるが「(私の地元)は遠い」と渋られていた。しかし、私が都会に行くのと都会の人が私の地元に来るのは距離は同じである。何故かクイズ屋には「田舎の人が都会に来て当然」という人が多い。(地方に出向くことに違和感のある風潮から前述のような批判が生じたのだと思う)

「地元で楽しむ可能性を諦めない」「都会以外でのクイズ機運を高める」これらが、私の「ひとりででき」なかったことである。
この先は志ある人が地方のクイズシーンを盛り上げてくれることを切に願う。
「地方に住んでいるから」とクイズを諦める人は、私以外に現れないで欲しい。

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