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君ありて幸福

ばあちゃんが亡くなった。
85歳だった。
4月24日、私と同じ春生まれのばあちゃん。
優しくて、少し心配性なばあちゃんだった。
「碧ちゃんはやさしいね」「碧ちゃんはかわいいね」っていつも言ってくれた。
亡くなる前の日にお話することができたのだけど、その時も消え入りそうな声で「碧ちゃんはかわいいね」って言ってくれたの。

ばあちゃんは神道なので神葬祭を行った。
宮司さんがばあちゃんの代わりにばあちゃんの言葉を届けてくれた。
「何回もお見送りしないでね。隠世へは行きたくないんだよ。」って言ってた。
そうだよね、ばあちゃん。行きたくないよね。
私もまだばあちゃんといたかった。
会いたいな。
棺の中でたくさんのお花に囲まれて眠ってるばあちゃんを見てるとまだ会えるような気がしていたが、ばあちゃんがお骨になって初めてもう会えないんだなって気づいてしまった。

棺にお花を入れるとき、普段は泣かない父が泣いていた。
父が今どんな気持ちなのか、想像した先に自分がどんな気持ちになるのかが容易にわかってしまって考えるのをやめた。
ばあちゃんが危篤になったと病院から連絡が来て面会に行ったとき、父のばあちゃんに話しかける声があまりに優しくて、あまりに愛おしそうに話すもんだから、私は父の嫌いだったところを全部忘れてしまいそうになった。
父はどこまでも愛の人だった。

近しい人の死は初めてだった。
たぶんこれから色々な別れがあるのだろう。
はじめての別れ、いつかこんな別れにもならされてゆくなら、今日がわたしのはじめての式日。

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