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製品開発のアイデアマン Ik氏

Ik氏との初対面はあまり良いものではなかったと後になって後悔している。
私もまだまだ青かったということにしておこう。
開発対象の製品機能の打ち合わせでIk氏の部下である現場担当者と打ち合わせをしていたときに遅れて現れたのがIk氏である。多くの製品開発に携わり社内でも認められた存在だから偉そうなのは当たり前なのだが、初対面でのIk氏に対応というか言葉にちょっとイラッとしてしまい、私の態度は決して良いとは言えなかったと記憶している。実のところIk氏は決して偉そうなのではなく、そういう喋り方、癖というか、悪気はまったくないということを後になって知ることになる。本当のIk氏はとても紳士的で優しいおじさんなのであった。だから、、、たぶん、私のよろしくない態度も気にしないでいてくれたと信じたい。その後もIk氏と絡むことが多く勝手な感想として、まぁ良い感じだったので、Ik氏の心の広さに感謝である。

Ik氏の話は良い人だということを言いたいわけではない。もちろん良い人ではあるが、Ik氏は技術力が高く、斬新なアイデアの出せる設計者?発明家?なのである。モノの考え方、発想力がずば抜けている。後にも先にもこの人以上のアイデアマンに出会ったことはない。発明家ってこういう人のことを言うのだと思ったものだ。
そしてIk氏と話していると勉強になる。
知らなかった知識を得たり、気づきを得ることができるのだ。
Ik氏は自分の仕事と同じ分野の人間なので、話をしていて知識や経験を得られるのはもちろんのこと、Ik氏の技術にセンスの良さを感じる。
努力と経験で到達できるか難しい領域のセンスの良さである。
技術者にとってこのセンスというのは非常に大事な要素である。
センスが悪いとトンチンカンな製品を提案したりするし、一向に開発のゴールが見えないなんてことが起こる。
そんなんだから、センスのない人間が開発に従事していると、お客様が欲しい製品機能を競合に先んじて開発するなんて夢の又夢だろうし、なんてことないかいhつだとしても量産まで辿り着くのにもとんでもない時間を要することになるだろう。
センスが良いと、その発想力から「確かにその機能は欲しいな」と思えるモノを何の苦労もないかのように提案してくるのだ。現時点で存在しない機能だから誰も見たことも聞いたこともないモノを発想しこの世に生み出してくるのである。
センスの良さは開発効率もずば抜けている。開発において慣例として膨大な試行錯誤を要して時間がかかることも最終的な答えを知っているかのように少ない試行数バシッと当ててくるところが神技である。これまでのIk氏の経験の賜物なのだろうが普通の技術者にはできない芸当だ。もっと共に仕事をする機会があれば、そんな神技の種を論理的に学ぶこともできたのだろうが、この神技職人はもはやいない。

Ik氏は機能開発、いわゆるシステム開発の専門家、間違いなくその道の巨匠だ。
同じ道を歩むものにとっては神様のような人だ。
それなりに偉い立場までは行ったのだが、ハッキリ言ってもっと上へ行ってもよかったんじゃないのと現場の技術者連中は皆思っていた。
しかし、残念ながらIk氏はほどほどの職位で引退した。
この人がシステム開発を束ねるような組織の長であれば、どんなすごい機能を世の中に出しただろうか、そして、後進たちを育成しIk氏のような発想ができる技術者軍団をこの会社に誕生させていたかと思うとかなり残念でならない。

かつて、白いブラック企業にも他社に自慢できる技術者、他社の技術者でさえ一目置くような巨匠が存在していた。しかし、今はいない、、、、
人は持っているもの、手に入れたものの価値を適切に判断できない残念な生き物だと思う。しかし白いブラック企業は失った今でさえもその価値を感じていない。
かなりのやばいレベル、末期になって来ているのだろう、、、、

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