フェルメール展にいってきた
大阪の天王寺で初下車。
友人に誘われて、あべのハルカスでやっている中村佑介展にいったあと、市立美術館でやっていたフェルメール展にいった。
9月初旬の箱根旅行で、印象派のモネやルノワール、さらに時代を遡って写実主義のミレーを見てきたが、今回はそれをさらに遡ったバロック美術という区分になる(……フェルメールさんが「わたくし、バロック美術を描くのです」とか言っていたわけではなく後の人がそう呼ぶだけ……)。
フェルメール展といいつつ、展示された70点中、フェルメール作品は『窓辺で手紙を読む女』たった1点。
サムネ釣りかな?????
ご安心を。ちゃんとその他69点に感動できるものです。(元値1500円を取りに心が感動のハードルを下げた)
フェルメールの感想を先に書いておくと、やっぱりとんでもなく巧かった。後で書くけれど、風俗画なんです、17世紀のオランダの美術って。水位の下がった川で遊んでいる市民とか、歯医者さんとか、手紙を書いてるところとか、そういうの描いてくれるんです。
……とはいっても、題材勝ちというのがある。
『窓辺で手紙を読む女』
これ、題材で勝っている。
恋愛モノはいつの時代も人の心をうつ。
「窓辺で」……窓は開いていて、自由への憧れの象徴だとか……「手紙を読む」……後ろのキューピッドが愛の象徴であるためにそれは恋文と解釈される……「女」。
評価されないわけないやん。
カスパル・ネッチェルという人の絵で、これも感動しましたが、『手紙を書く男』というのがあった。(展示会には無かったが、同時代のハプリエル・メツーも同じ題のものを描いている。)
※ちなみに僕個人としては、メツーよりもネッチェルの描く男のほうが顔がかわいい……。
この手紙がフェルメールの描く女に届いていたりして、などと妄想を膨らませたというお話。
他の方も書いていたが、このメツーという人の『鳥売りの女』の解釈が面白く、売春のメタファーだと絵の説明に書いてありました。確かにおじいさんと少女がいて、少女がおじいさんに鳥をあげているのです。
現代ではパパ活という大変汚い(※主観)言葉がありますが、その類なのだろうと、ひとまず解釈してみます。
鳥が処女の象徴とも言われていました。婚前交渉はカトリックでは禁忌ですので、やはり売春は当然処女と繋がってくる。
となればなぜ鳥なのか。家畜は食べ物です。本来、パパ側が少女に渡すべきではないか。『鳥売りの女』です。まさかパパ側が童貞を売っている...!?(口を慎め)
後出しで申し訳ありませんが、『鳥売りの男』という題もメツーは描いている。こっちは先程の解釈が華麗にはまる。処女を捧げて食を得る。
やはり僕の謎は『鳥売りの女』です。あえて解釈をするなら、メツーの考えた別世界かと。つまり『鳥売りの男』は現実。『鳥売りの女』はフィクション。メツーも天才的な画家です。想像力豊かであること請けあいです。
最後にバロックー写実ー印象の流れをまとめて終わっておこうと思います。
ミレーの『種をまく人』は写実主義であると同時に印象派っぽい色の使い方……鉱石を自分で砕いて混ぜた感じの……をしていたけれど、一方で『種をまく人』からしてまず風俗画なのです。それは間違いなく、バロックの遺伝子を受け継いでいる。
しかし、バロックは滲みが少なかった。余談になるけれど、今日の帰り道、月が大きかった。雲も多く、月は滲んでいた。あれは雲の水分だ、と思った。
水分……滲みを生むもの……流体……ゆったりとした運動性……。ルノワールの描く人肌は、肌色ではなく、色んな色が混ざって見えた。ミレーもそれに近い。それに二人とも、光が先にある感じだった。光の中を流れる流体。
ところが、フェルメールの絵は手や顔の輪郭がくっきりしていた。流動性というよりは、重力だ。カーテンやベッドの布、果物に、確かに重力がかかっている。そして何より、まず闇がある。闇の中に光が差し込んでいる"あの感じ"である。
色を出す素材の違いだけで、美しさのベクトルが変わってしまっていた。絵画をやっている人には「わかっている」ことかもしれないが、素人目には大変不思議なことに思われた。
(追記)
バロック美術の理解が完全に逆だったらしい......。そもそもポルトガル語で「ゆがんだ真珠」。プロテスタントのうちで流行った量感あふれる動的な絵のことで、それをカトリック信者が揶揄した言い回しがバロック。だからメツーの解釈はもっと別方向があるんだろうなあ......。
宗教画から写実へ移ったのがプロテスタントのオランダ人なのに、どうしてフェルメールはキューピッドを描いたの?と思うが、あれはフェルメールが結婚を気にカトリックに改宗したからなのだと。
今回修正された箇所(もともとキューピッドは塗りつぶされていた)の理由は、そこにあるんだろうな。宗教画が写り込んでることが許せない誰かがいたんだ。そういう意味ではすごく貴重な絵見れたんだ。うれしいね。
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