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寝台特急に乗った話

こんにちは、蒼井です。
今日は旅行記風の更新です。

普段は家庭の都合上一人でどこかに泊まることは滅多にできないのですが、もともとは国内一人旅が好きでぷらっと出かけていた性分。
今もネットで行きたいところを探しては、その近くのホテルや観光地、そして美味いものを探すのが密かな楽しみ(実際に行ける行けないに関わらず)。

しかし今回は全く予期していない一人旅、それも寝台特急に乗る機会が訪れたのです。
それはもう突然に。



先日、大阪でネルソンさんの出版パーティーに参加させていただいた日。
東京の家族との調整もつき、なんと数年ぶりの一人旅ができそう!
関西出身なので、帰りは実家に一泊してから帰ろうかな、と考えたり。
いや、これは完全旅行気分で大阪駅近くのホテルに泊まっても良いな、とも考えたり。
こんな楽しいチャンスを逃す手はない、と検索しまくりの数日。

ところが、そう上手くいくことばかりではなく。

急遽、遅くとも翌日午前中には東京に戻っていなくてはならない用事ができ、夢の関西でおひとり様一泊旅、は露と消えることに。
とはいえその日のうちに帰京するには、新幹線も飛行機も現実的な時間じゃない。
せめて翌日午前中に帰り着くためにはどうすれば…

そういえばニュースで、立派な夜行バスを見た!あれ乗りたい!
と調べるも、日曜夜に大阪発→月曜朝に東京着、はどのバス会社も満席。
そらそうか、土日みっちり予定詰めてから乗りたいよね。
寝てる間に移動できるなんて、こんなに良いことないもんな。

寝てる間に移動できるのって、バス以外にもなかったっけ…?
…電車も?…寝台特急!

自分史上、少なくとも過去10年では最も価値のある閃きが降って来た。

日本に現存する定期運行の寝台特急は、一つだけ。
サンライズ瀬戸・出雲。
上りの場合、岡山まではサンライズ瀬戸が四国、サンライズ出雲が山陰を走り、岡山で連結して「サンライズ瀬戸・出雲」になる。

この運用を知った時点で、すでに私の旅心の何かをくすぐっているサンライズ。
さらに「子の電車図鑑で見たことあるやつ!」と謎のミーハースイッチが押され、完全に興奮状態になった私は、
そのまま勢いで時刻表を調べ、あっという間にネット予約完了。

サンライズ瀬戸・出雲
 0時33分 大阪駅発
 7時8分  東京駅着
どれほど理想的なダイヤなのか…
ありがとうJRさん、こんなに素敵な路線を定期運行してくれて。
そうしてパーティーにも最後まで参加し、無事に翌朝東京に帰りつけることが決定。
よかった。

大阪駅で、みどりの窓口が閉まる前に切符の引き取りも完了。
予約できたのはB寝台のソロという個室。
個室では一番安価な設定で1人部屋のみ、乗車券&特急券で18,000円とちょっと。
それにしたって、横になってぐっすり寝ている間に東京に着くなんて贅沢な…
料金も新幹線よりは高いけど、大阪市内のホテル+交通費を考えると安いくらい。
それでさらに個室なの?いいの?と思いながら、出発に備える。

0時15分頃、大阪駅で唯一空いていたコンビニに立ち寄って水分・おにぎり・メイク落としを買い込み、ホームへ。
子どもたちへのお土産も忘れずに買った。
こんな遅い時間に駅のホームに立っているのもいつぶりか。
広いホームでは人がまばらながら、皆自然と目線は右へ。
車両入線を待ち構えている人が多数、カメラやスマホを構えている人も(ご多分に漏れず私も)。
寝台特急に乗りたい!と思ってわざわざ予約する人も多いはず。
外国人観光客と思しき人も多くいて、なんだかちょっとワクワクしてくる。

「まもなく…」と到着予告のアナウンスが流れると、ますます高まる期待。
家族に見せよう、と携帯カメラの録画ボタンを押し、その時を待つ。

…来た!

サンライズ瀬戸・出雲(一部加工)

レトロなベージュと臙脂のツートンカラーで、窓をたくさん携えた車両が走り込んでくる。
おおお、これがサンライズ…!
すでに寝ている人も多いだろうから静かに乗り込もう、そう思っていたくせに、なんだかニヤニヤしてしまって大きな荷物を取り落としそうになる。
かつての国内旅行でも、寝ながら移動したのは小笠原諸島は父島へ向かうおがさわら丸の中だけのはず。

今からこの電車の中で寝て、目覚めたら東京駅とか…めちゃくちゃ楽しいやん!!!!
と逸る気持ちが抑えきれなくなっていると、意外と遠慮のない音を立てながら車両の扉が開いた。

いよいよ乗車、今回は「瀬戸」(一部加工)

列に続いて進み、ついに車内へ。
私は10号車、「瀬戸」へと乗り込む。

入ってすぐ左手に、個室の番号が見える。
ここだ。自分の個室を見つけた。
2階に上がるタイプの個室だ。

行きの新幹線車内で調べ倒していると「サンライズは2階の個室なら立ち上がれるかも」とあった。
その時は「2階なら立ち上がれる」の意味がよくわかっていなかったが、まさに書いてあった通り。

B寝台ソロの個室、左手前に階段が

個室は完全にカプセルホテルのそれで、個室内は階段のスペースを除いては、座っているか横になっているか、の選択肢しかなさそうだった。

「た の し い」
パーティーの余韻と、久々の一人旅への期待と、初めて乗るものへの興奮と。
それらがごちゃ混ぜになって私の中に満ちていて、顔が完全にほころんでいたと思う。
個室の鍵を閉めてから、動画を取り、写真を取り、しばらく一人ではしゃいでいた。

そうこうしているうちに、出発のベル。
今からまた東京へ向かって夜通し走り出す列車。
少しぐらいは景色も見ておきたいと思い、部屋の電気を消してから窓の形状に沿ったシェードをあげ、ぼーっと外を眺める。
阪急大阪梅田駅が見え、川を渡り、派手な街並みが徐々に住宅街へ変わっていく。
走ってる走ってる。このまま朝まで私たちを運んでくれるんだな。
しばらく外を眺めていると急に疲れが襲って来たので、身支度をして就寝準備。
いろいろな人に連絡をしているうちに、気がつけば寝落ちていた。

快適に横になっていたものの、明け方から停車駅が増えると、そのたびにブレーキがかかり、思っていたより車体の揺れを感じる…!
おそらくパーティーから興奮状態でそもそも眠りが浅かったのだろう私は、停車駅ごとに目が覚めてしまっていた。
徐々に明るくなってくるシェードの向こう。
6時15分にかけていた目覚ましよりも早く、5時45分には観念して起きてしまった。

それでも横になって線路上を走っている自分が面白く、車内の洗面台で顔を洗って歯を磨いたあと、またわざわざ横になってしばらく外を眺めていた。
早い人はもう仕事に出ているんだな。
今まで仕事をしていた人もいるかも。
学生さんは部活の朝練かな。
犬の散歩ってこんなに朝早いの?
そんな朝の光景が次々に目の前を流れていく。
私はシーツにくるまって横になりながら、街々を高速で走り抜けていく。
これはなかなかの経験。

横浜駅に着いたところで、ホームの人と目があうのが恥ずかしく、改めてシェードを引き直す。
前日に買っておいたおにぎりを頬張りながら、東京駅から家へのタイムスケジュールを確認し、身支度を整える。
すごい、本当に夜大阪を出て、朝東京に着く…!
私の中に一つ、新しい旅の仕方が刻まれた。

そして終点到着アナウンスの後ほどなくして、無事に東京駅のホームに降り立った。
月曜朝の東京駅は7時過ぎからすでに通勤する人たちで混んでいて、旅行者気分の自分が申し訳なくなってくる。
(その日、本業は夏休みを取っていて気楽なものだった)
パツパツのちびボストンバッグを抱えながらふらふらと歩みを進め、8時30分には自宅へ。

7時過ぎに東京駅着…!(一部加工)

すごい。
とにかく「寝ている間に移動できて、朝のちょうどいい時間に東京へ着く」ことがすごい。
車内も完全に「宿泊施設」で、清潔感溢れるつくりに、自分含めてどこかドギマギしている乗客の方々が多数。
非日常空間が山陰・四国と東京をつなぎ、夜通し走っていることに感動すら覚える。

調べると、シャワーまで浴びられるとのこと(部屋のランクとタイミング次第らしい…)。
日本の正確な車両運行とおもてなし精神の凝縮のような列車。

いつか家族とツインに泊まってみたいし、一人個室でも違うグレードの個室に泊まってみたい。
移動そのものを楽しめる旅行なんて、最高じゃないか。
乗ってからの数時間で、完全にサンライズの虜になった。
結果オーライ、どころか、信じられないぐらい充実の復路。
まさに、帰るまでが遠足、そのものだった。



興奮の中の記憶を辿っているが故、もし間違った記載があったらごめんなさい。
料金や時刻、停車駅などは2023年9月現在のJRのHPを参照した内容です。
また、多分に個人の感想が含まれておりますので、ご容赦くださいましたら。

それでも、この旅体験を伝えない手はなく、思わず書きなぐってしまいました。
私の2023年のハイライトシーンになりそう。
まさかのひとり旅、最高だったな。

という、ただただサンライズの回し者のような記事でした。
ああ、楽しかった。

参考HP:JRおでかけネット トレたび



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著者:山分ネルソン 文:蒼井カナ


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