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⚪️が綺麗ですね

物申す

夏目漱石に物申したい。日本語に独自の解釈をつけるから、そのままの意味を伝えたい時にどういう言葉を選べばがいいか迷ってしまうではないか。
何か意味を含ませたいわけでも、ロマンティックな雰囲気を作り出したいわけでもなく、なんの装飾もなく今思ったことを言葉にしたい。「月が綺麗だ」と。昨日の私は今日が満月で、尚且つコールドムーンと呼ばれることを書いた。18時過ぎの低い満月は周りに雲を纏うことなく凛としてそこに埋め込まれていた。冬ということも相まって、視力の芳しくない私の目からでも月の表面の色が異なる部分が見えるほど、はっきりとそこにあった。ちなみに月の明るさと大きさは比例関係にあるわけではないようで、半月の時の明るさは満月の10%ほどでしかないそうだ。

 こんな綺麗な月を見ていると、月が綺麗であるという言葉に含みを持たせた人に少し腹が立ってくる。仮に私がこの月の綺麗さを誰かに伝えたところで変な勘違いでもされたらたまったものではない。
 ただ、"彼の文豪も月が綺麗=あなたのことを愛している"と表現したわけではなく、"I love you"の訳し方の例として、日本人の特性を配慮しての"月が綺麗ですね"なのである。つまり私の文句とは開始点がずれていることになる。私は月が綺麗であることが、あなたを愛してると捉えられることに苦言を呈していたわけだ。しかし、夏目漱石は "I love you"に近い日本語を探したところ”月が綺麗ですね”にたどり着いたのである。ここで私の怒りの矛先はお門違いであることが証明された。言いがかりをつけてごめんなさい、夏目漱石さん。
 では問題はどこかというと、捻じ曲がった解釈の一人歩きであろう。ある時期、どこかのSNSの恋愛系ポエムを垂れ流すようなアカウントの投稿が、瞬く間に多くの中高生のタイムラインを席巻した。途中の過程をすっ飛ばして、夏目漱石はあなたを愛している=月が綺麗だと言った、というような趣旨のものである。大筋、間違っていないのだがあまりにも簡単に受け取られたせいで、自分のアカウントの一言欄に書き出すような浅はかな者続出していた。自分にそういったロマンティックなものに対して良さを感じる感性が欠落していることも相まってか、とても冷ややかな目で見流していた事を思い出した。適当な解釈で流布したものが悪いということでそろそろ決着をつけても良いだろうか。きっと夏目漱石も自分の意図の範疇を超えた使用方法に呆れて見ているのことであろう。
その上でも、この最早ありふれていると言えるこのフレーズを使いたい、もしくは言われたい人は以下のページでも参照してみると良いのではないか。


saigoni

本当に今日、2023年12月28日の月は透き通っていて綺麗だった。
月が綺麗だと叫びたい。

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