見出し画像

ネズミモチとトウネズミモチとコミノネズミモチ

6月初めごろ、山の道路脇で花が咲いていた「ネズミモチ」の木。
公園樹や生け垣として住宅地でも見るけれども、山や林の道端にも生えている。
日が当たるひらけた場所に多いと思ったら、照葉樹林の代表的な「陽樹」とのこと。
関東地方以西の山に自生し、高さは2~5m。
枝先に花がつく。
花は、白い小花が円錐状に咲く。
円錐状。
花は筒型(漏斗型で)、花弁は4つに裂けて、それぞれが外側に反り返る。
雄しべが2本突き出ていて、葯は黄色。
花粉が飛ぶと、黄色がなくなる。
葉はツヤがあって厚みがある葉。先は尖っていて、長さ4~8cmほど。付き方は対生。
裏面から光に透かしても側脈がはっきり見えないことが特徴とのこと。
(少し大型のトウネズミモチの葉は裏面から透かすと側脈が見える)
こういう葉なので潮風や煤煙に強く丈夫で、防風樹や街路樹や生け垣などの
穴埋め(「植えつぶし」というらしい)などに利用されるのだとか。
6月に野の道を歩いていると、時々地面に小花が落ちていて、
「あ」、と思って
見上げると、「ネズミモチ」の木。
落花するものが多く、花の数に比べて果実がつく数は少ないそう。

秋に紫黒色に熟す果実がネズミの糞に似ていて、全体がモチノキに似ていることから「ネズミモチ」とのこと。イメージが良くない名前で、別名の「タマツバキ(玉椿)」の方がはるかに良いなあ。材は「タマツバキ」の名で家具や工芸品に使われるのだそう。
問題の、ネズミの糞に例えられた果実は写真が撮れていないのでまた秋に確認したい。
この果実、乾燥させたものは「和女貞子(わにょていし)」という生薬で、滋養強壮や動脈硬化の予防に効果があると考えられ、漢方薬で使われるのだそう。「和」のつかない「女貞子(じょていし)」は、近縁で中国原産で大型「トウ(唐)ネズミモチ」の果実で同様に使われる。

ネズミモチ(鼠糯、鼠黐、学名:Ligustrum japonicum)
モクセイ科イボタノキ属の常緑低木。花期は5~6月頃。
関東地方から沖縄に分布。
低地や低山の林内や林縁に生える。

下が、近縁の「トウネズミモチ
トウネズミモチ」は「トウ(唐)」とつく通り中国原産の帰化種で、「ネズミモチ」とよく似ているけれど大型で、花期は「ネズミモチ」より1カ月近く遅く、うちの近所では6月下旬頃から花が咲き始める。
大気汚染などに強く成長も早いことから公園樹や緑化樹に利用され、庭木としてもけっこう植えられている。
果実も「ネズミモチ」より大きくて、数も多く、ヒヨドリなどに好まれて散布され、実生や挿し木で増えやすいので急速に広がっていて外来生物法で「要注意外来生物」に指定されたのだそう。これは知らなかった!!
現在は「ネズミモチ」よりも目にする機会が多い。
生け垣への利用は「ネズミモチ」がほとんどだそう。

トウネズミモチ(唐鼠黐、学名: Ligustrum lucidum)
モクセイ科イボタノキ属の常緑高木。花期は6 ~7月頃。
中国原産で、日本では明治時代初期に渡来した帰化植物。


トウネズミモチ」は花が咲くと木全体がクリーム色に覆われる。高さは5~15m。
道端とか、
緑化で植えられたと思われる場所も多い。
花がピークを過ぎるとだんだん黄色が強くなって茶色っぽくなる。
花穂は円錐状でだいたい上向き。つぼみは白い。
少しずつ小花が咲いていく。
花が多く、葯が黄色なので、遠目ではクリーム色に見えるよう。
花自体は「ネズミモチ」と変わらなさそう。
筒型(漏斗型で)、花弁が4つに裂けて、それぞれが外側に反り返る。
ピークを過ぎるとだんだん茶色に。
落花もするけれど、落ちずに茶色くなるのが多い。
ツヤがあってしっかりして濃い緑色の葉。付き方は対生。
ネズミモチ」より先が細くのびて尖り、大きく、長さ6~12cmほど。
葉に斑模様があるトリカラーという品種もあるそう。
裏面から透かして見ると側脈がはっきりと見えるのが「トウネズミモチ」の特徴とのこと。
11月終わり。実がびっしりついて重みで垂れ下がる。
それぞれの木でこんなに果実がついて鳥に散布されるのだから、そりゃあ増えるよね。
果実は少し細いけれども丸っこい形で、青紫色に粉が吹いたような感じ。
枝は赤みを帯びている。
ネズミモチ」の実はもっと細長く楕円形で黒っぽい。


下は、6月初め頃に花が咲いていた「コミノネズミモチ」。
中国、台湾、ベトナムの原産の木で、シナイボタ、トウイボタ、英名のチャイニーズ・プリベット(Chinese privet)などの名前で呼ばれることも多いよう。
庭木や公園樹、生け垣などで見かけ、住宅地近辺だと藪や植込みの中で自生していたりもする。
真っ白な花がたくさん咲いて、「ネズミモチ」「トウネズミモチ」より香りがいいと私は思うけれども、人によるよう。

この木はもともと「プリベット/プリペット」(イボタノキ属という意味で)の名前で流通していた経緯があるようで、数年前は標準和名が「コミノネズミモチ」とわかっても「コミノネズミモチ」の名前では情報がほとんどなかったのが、今は検索すると出てくるようになったので、徐々に「コミノネズミモチ」で認識されてきたみたいだ。
でも今も「プリベット/プリペット」「セイヨウイボタノキ」の名前で流通しているという話もあるし、これらの名前で紹介されているサイトもあるのでわかりにくい。
「プリベット(privet)」は英語圏では「ヨウシュイボタノキ/セイヨウイボタノキ(コモンプリベット:Ligustrum vulgare)」を指すそうで、「チャイニーズ・プリベット(Chinese privet)」の英名を持つ「コミノネズミモチ」とは別種。
「シルバープリベット/シルバープリペット(正しくはシルバープリベット)」という園芸品種は、この「コミノネズミモチ」の斑入りの品種とのこと。

住宅地近くの道端の大きな木。
コミノネズミモチ」は花が白く、花穂は垂れ下がる。
高さは2~7m。
公園の「コミノネズミモチ」。全体に、枝垂れる感じ。
内側から見る。
粒のようなつぼみがかわいらしい。
葉は小ぶりで先が丸く、やわらかい。付き方は対生。
花は筒型(漏斗型で)、花弁は4つに裂けて開く(反り返らない)。
雄しべが2本突き出し、葯はピンク色なのが特徴。
花穂が大きく、涼しげな印象。
スキマで小さな木が育っていたりする。
こんな小さくても花が咲く!
側溝の中でも。

コミノネズミモチ(小実鼠黐、学名:Ligustrum sinense)
モクセイ科イボタノキ属の半落葉低木。
暖地・温暖地では通常常緑だけど、冬場の気温によっては落葉する。
中国、タイワン、ベトナムの原産。
別名はシナイボタ、トウイボタ、チャイニーズ・プリベット。

イボタノキはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?