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サギソウ

8月はじめ、冬穂さんのこちらの記事で紹介されていた自生のサギソウの姿に心奪われ、子供の頃に祖父がサギソウを育てていたのを思い出した。

記憶にある祖父のサギソウは、水苔を敷いた小さな植木鉢で大切に育てられ、少なくとも花が咲いている時期は室内の机の上に置かれていた、箱入り娘のような繊細で儚げなサギソウの姿。
なので自生のサギソウなんてまったく想像がつかなくて、うわあ、見てみたい!!とテンションが上がってしまい、行けそうな範囲に自生地はないだろうか、と探してみた。
すると、それほど遠くなく、あの辺りと見当がつく範囲内にサギソウが自生する池があるようで、去年の8月の終わりごろに見に行ったという記録を発見。
暑いけど、行けそうなら行きたい!というわけで、8月下旬、台風が来る前の、午前中は曇りがちだった日にこの池に行ってみた。

車をとめ、アップダウンのある道をしばらく歩いて、池が見えた。
さてサギソウはこの池のどの辺り?
きっと探すのが大変だなあ、とふと足元を見ると、もうあった。1綸。
探す間もなく簡単に見つかってしまい、ポカンとしてしまうぐらい驚いた。
なんだか信じられないような気持ちで、
初めての自生の「サギソウ」を見る。
鷺が舞う。
なんと優美な花。
向こうの草むらにも白い花がちらほら見える。
思ったよりたくさん咲いているみたいだ。
この池は知る人ぞ知る、という場所のようで、誰もおらず、静かだった。
その端の草むらに他の草に混ざって「サギソウ」がふつうに咲いている。
真夏に、こんな日当たりのいいところで、他の草の中で咲く花だったとは意外!!
地下には太い根があって、そこから地下茎を伸ばしてその先に翌年の球根をつくり、
その部分だけが年を越すのだそう。種子でも増える。
花の下に伸びている薄緑色の長いのは「距」で長さは3~4cmあり、末端に蜜がたまる。
この「距」の長さに見合った口吻を持つ夜行性のスズメガ科の仲間や、
日中にはセセリチョウ科の蝶などが訪れて、
蜜を吸う時に口吻や複眼あたりに花粉塊が粘着、他の花に運ばれる。
まれに芳香がある花もあるのだそう。特に夜。
サギソウ」といっしょに生えていた印象的な草は「コマツカサススキ
高さ80~120cm。茎の断面は三角形。
これが開花中のよう。白い糸のようなものがでているのは雌しべの柱頭だそう。

暑い中、汗だくになって歩いて見に行ってよかった。
池全体が貸し切り状態で、静かで、贅沢なひとときだった。

今回自然の中で咲いている「サギソウ」を初めて見て、本当に嬉しくて感激だったのだけども、あれ?そういうキャラやったん?という面白さもあった。繊細で儚げなイメージを持っていたので、実は、花は優美だけど、思った以上にたくましい、ふつうの植物であったのだなと、幻想を剥いで植物としての「サギソウ」をちゃんと見たような感覚。
この場所には、ありがたいことにたくさん生えていたので、「サギソウ」はかつては身近な湿地に比較的よく見られた植物というのがよくわかる光景だった。湿地という環境さえあればよく生える植物なのだ。
でも現在、自生の「サギソウ」は、湿地の消滅、栽培目的の人為的な採集、自然遷移に伴う湿地の乾燥化などにより、絶滅した自生地が多く個体数は減少していて、環境省によりレッドリストの準絶滅危惧(NT)に指定されている。
各都道府県でも、さまざまなレベルでレッドリストの指定を受けていて、条例で採集は禁止されているところもある。
ただ、球根で年に2~3倍に増殖できるそうで山野草としての栽培や流通は多く、入手しやすい。しかしそれにもかかわらず、保護されている自生地ですら盗掘が絶えないらしい。Wikipediaでは、「金銭価値も乏しいことから転売目的などで採集しているとは考えにくく、無計画な「お土産採集」「観光記念採集」が相当数あるものと推察される。」とある。なんてこった。
そもそも開花期は移植に最も不向きな時期だそうで、安易に採集しても枯らすだけ。もとよりそういう人は育てるつもりもないのかもしれない。
採るな!!
欲しいなら買う!!   以上。

サギソウ(鷺草、学名:Pecteilis radiata (Thunb.) Raf.
ラン科サギソウ属の湿地性の多年草。
ミズトンボ属(Habenaria)に分類されることもある。
花期は7~9月。
日本では九州、四国、本州(秋田県以南)の低地の湿地に生息する。

コマツカサススキ(小松毬薄、学名:Scirpus fuirenoides Maxim.)
カヤツリグサ科クロアブラガヤ属の多年草。
本州、四国、九州に分布の日当たりのよい湿地などに生える。


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