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読書録「人はかつて樹だった」

豊かな自然や世界、そして人間について、静かに見つめた21篇の詩。
文化芸術情報誌「えるふ」に掲載された詩を中心に編まれた詩集だ。
通販サイトの復刊リクエストで見かけて、印象的な表紙とタイトルに魅かれた。
長田弘氏は「森の絵本」という緑の表紙の絵本を書いているひとだ。
作曲家・池辺晋一郎は「交響曲第9番」で『人はかつて樹だった』『世界はうつくしいと』『詩の樹の下で』の3冊の詩集から9篇の詩をテキストとした、独唱を伴う9楽章のシンフォニーを作曲しているのだそうだ。

「人はかつて樹だった」長田弘 みすず書房(2006.7.10)

穏やかな日曜の午後、ゆっくり読むのにぴったりの詩集。
少しずつ静謐な空気に包まれていく。
そうか、大地に根を張り言葉もなくまっすぐ立っていたんだな…。
キュッと心がつかまれる。
清らかな水につかっているようで、感覚が澄んでいく。
いい時間を過ごせた。

本文より

自由とは、どこかへ立ち去ることではない。
考えぶかくここに生きることが、自由だ。
樹のように、空と土のあいだで。

シル トハ コノヨヲ
ジブンカラタノシム ホウホウ デス 

祭りの日、私は一人だが、一人ではない。

「孤独な木(朝陽のあたる村)」という、ドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの遺した、冴え冴えとした一枚の絵を思いだす(本書カヴァーの絵)。

あとがきより

復刊リクエストに関わる幅允孝氏の私設図書館がある。
いつか行ってみたい。

週末、暖房器具と、コートとセーターと、毛糸のクッションカバーを出した。部屋が冬になった。

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