零から咲いた青い薔薇~第1期DTMリーグ チーム『Floraison』を振り返る~
はじめに
寝耳に水。藪から棒。青天の霹靂。
突然の出来事を表す表現というのはいろいろと存在します。きっと今までの人類の歴史においても、「思いがけない出来事」というものは共通認識としてなにか統一した表現を作ろう、という思いが形成されるほど印象的なものだったのでしょう。
2023年7月11日。私の身にも、そんな「思いがけない出来事」が舞い込んできました。
最初にこの文面をみた正直な感想は、「正気か?」でした。
というのも、今までの人生において、自分が頭になって何かをうまくやり遂げたということがなかったんですよね。加えて、8チームしかないうちの貴重な1枠が自分ごときでいいのか?もっと適した方がいるんじゃないか?
丸1日迷った結果、「リーダーとして適しているかを決めるのは自分ではない、せっかく話をいただいたのだから挑戦しないと前には進めない」という判断に至り、不安を抱えながらも「やります」と返事をしました。
ドラフト~チーム結成
ドラフト戦略についても悩みに悩みました。チーム編成はこの方針でいこう、と思った矢先に「#DTMリーグ」のタグが更新される。何事かと見てみれば、続々と増えてゆく応募表明。
これだけ素晴らしい方々が集まる場所で、なぜ選択肢が3枠しか存在しないのか。なぜ自分ごときがそれを決めてしまう立場にいるのか。できる限り多くの方が、少なくとも自分自身が後悔しないためにはどうすればいいのか。当日になっても悩みは消えず、指名する直前まで自問自答しながらの指名でした。
チームを結成してからも悩みは尽きず、「チームにどういった言葉をかけていけばいいのか?」「どう振る舞うのが良いのか?」などと自問自答、悪戦苦闘の日々でした。背中で語る!とか言葉で鼓舞する!みたいな格好良さがあったとはお世辞にも言えなかったと思いますが、私以上にリーグの経験豊富なメンバーの皆さんのおかげでなんとか気持ちを保ちながら続けられたのかなと思っています。
ユニフォーム
前々から、麻雀で何かしらチームを組むとなったときに一度やってみたいことがありました。それがユニフォーム作成。別に作成必須というわけではないのですが、チームとして同じ方向を向いているという一体感がわかりやすく感じられるのはいいんじゃないかなってひそかに憧れていたんですよね。
とはいえ意欲はあっても美的センスなり創作環境なりが伴っていなかったので、まずはボムチュウさんにお願いしてドット絵で原案を作っていただき、その後Rukaさんに依頼してイラストとして仕上げていただきました。
「アルシーさんは普段着は厚着だが下の肉づきはどんな感じで描くのか」「いかちゃんにどうやって服を着せるのか」といった点についてRukaさんと認識をすり合わせたり、皆様の元絵を手掛けられた絵師さんに「差分を作っても大丈夫か」と確認したりといろいろ手間もかかりましたが、それに見合うだけの素晴らしいものが出来上がりました。お忙しいなか急に無茶ぶりをぶち込む格好となりましたが、Rukaさん本当にありがとうございます!
ゆうれいいか(ミミッキュのすがた)
リーグ本番の振り返り
第1節~荒天を行く
期待と不安を胸に抱えながらいざリーグ本番へ。
第1戦 ゆうれいいか
持ち前の十本足打法で満貫を2回あがるさすがの実力を見せつけてくれましたが……
『剛毅果断』新川しんかさんのパワフルな打点が炸裂し、いかちゃんは東場と南場の親被りであわせて14000点を失うはめに。最終順位は2着なのにポイントがマイナスになるという、このリーグならではの難しさと面白さが見えた半荘でもありましたね。
第2戦 アルシー
第1期Σリーグでも実力に結果が伴わない不運な展開が多かったアルシーさん。悪い流れを断ち切りたい登板でしたが……?
東3局。親の『雀姫』(じゃんきー)春風ぽぽのさんの立直に対してカン3mで追っかけますが放銃に回る。南場でも『剛毅果断』コーヒーの楽園さんのメンホン立直に捕まり厳しい展開。
それでも……
そのままただで終わるような男ではなかった。オーラス親番でポイントをプラスに戻して執念の2着フィニッシュ。
第1節は4位スタートとなりました。
第2節~一転攻勢デイリーダブル
第1戦 七瀬くりむ
第1節の結果は悪くはなかったですが、よりよい流れにもっていくためにも早めにチーム初トップがほしい。ここはリーグの経験豊富な七瀬姉さんに任せましょう。
海底ツモ4000オール。このあがりは本当に鮮烈でしたね。ここぞというところでこんなもの持ってくるかねって鳥肌立ちました。
その後も着実に局を進め迎えたオーラスでは……
まさかのツモり四暗刻聴牌。
ツモとまではいきませんでしたがこれをきちんとあがりきって念願のチーム初トップ。控室大盛り上がりでしたね。自分であがったときよりも何倍も嬉しく感じて、これがチーム戦の魅力だなと感じた瞬間でもありました。
第2戦 Alf
期待というか不安というか緊張というか。あまりにも複雑に絡み合った感情を抱えながらの個人初登板。
幸運なことに手が結構入ってくれたこともあって、『はに~あくありうむ』リーダーひらめちゃんとトップ争いをしながら上位をうかがう展開に。
そして迎えたオーラスでは
打点も足りてて形もいい感じ。めっちゃいいですやん。
一番大事なところで手が入ってくれました。このツモで逆転トップ。
チームも一気に首位浮上となりました。
第3節~続くぜ連勝街道
第1戦 ゆうれいいか
高打点のロン和了が飛び交う大乱戦。殴り合った結果比較的平場になって迎えた南場で、ゆうれいいかオリジナル手順が出ました。
5pを引き入れたところでペン3s外し。
そのままカン2mで立直をかけ見事ツモあがり。最後は『ほわほわの里』もちゃおさんの猛追をぎりぎりかわして逃げ切りとなりました。これでチーム3連勝。ゆうれいいかとしても嬉しい個人1勝目。
なお本人は「もちゃおさんに捲られたらそのあとまた頑張ろう」などと考えていた模様。(※DTMリーグは段位戦と一緒でラス親の和了終局あります)
第2戦 アルシー
連勝のバトンがつながれて迎えた二度目の登板。チームのためにも、悪い流れが続いていた自身のためにもトップが欲しいところ。
この半荘でアルシーさんは東場の親番で6000オールを決めるなど躍動し……
南2局でこの点差!これは流石に勝ったな!🚩🚩🚩
ああはいはい、満貫親被りくらいならいいでしょう……🚩
ま、まだオーラスで跳満あがられなければ耐えてるから!!!🚩🚩
チーム4連勝待ったなしかと思いきや、『Chevaliers Renards』(シュバリエルナール)リーダー赤篝さんに阻まれました。さすがの強さでしたね。
こういう捲られ方って下手したらラス引くとかより悔しく思えちゃいますよね。少なくとも私ならそう感じると思う。
とはいえチームは大きくポイントを伸ばして首位キープ。このまま頑張りましょう。
第4節~剛毅果断 will be back
第1戦 七瀬くりむ
チームはここまで逆連対なしできていましたが、この半荘は体調不良から復帰した『Libe Lila』(リベリラ)月音ゆき部長が躍動。七瀬さんも聴牌まではたどり着くもあと一牌が届かない苦しい展開に。
しかしそれ以上に苦しかった選手がいた。
チーム『剛毅果断』リーダーよしふじプロがこの日はとにかく放銃に回る。どれだけ実力があろうとも巡り合わせ次第ではこうなってしまう。つくづく麻雀というのは恐ろしいものだなと改めて実感しました。
しかし何もできずにおわるほどプロは軟弱ではない。南場の親番でサクッとメンピンドラ1を仕上げて立直。ここから反撃だ!
漢赤篝将狐、先輩に手厳しい一撃を喰らわせる。
そしてオーラスでもラス牌の北を掴まされあえなく撃沈。溶鉱炉に親指を立てながら沈んでゆくよしふじプロの姿は涙なしには見られなかった。
七瀬さんはなんだかんだで素点けっこうある3着で帰還。チームとしては初めての逆連対となりましたがそこまで悲観する内容ではなかったのが良かったと思います。
第2戦 Alf
まだまだチームポイントに余裕があるとはいえ、このままズルズルとはいきたくないところ。特に直接対決をしている2位の『Chevaliers Renards』いくせさんに大きく稼がれる展開は避けたいところ。
誰でもあがれそうな配牌きた。これはめちゃくちゃ嬉しい。
さくっと仕上げて12000。これは個人連勝もあるか?
と思いきやこのあとなかなか手が入ってくれず……
『剛毅果断』コーヒーの楽園さんが溶鉱炉に沈んでいくのを傍目で見ていたら3着目になってしまった。かくいう自分もツモられやらノーテン罰符やらでじわじわと削れている。苦しいですね。
そして迎えたオーラスでも難しい選択が続く。2着に浮上はしたいが放銃するのも避けたい。役有り聴牌にたどり着くのが理想でしたが放銃リスクを考えるとなかなか一直線に進めることができず。
そして最終的にたどり着いた結論は……
俺はノーテン罰符でいくせさんを捲るぞ!うおおおおおおおお!!!
1000点棒を墓地に送って2着を召喚。『Libe Lila』にデイリーダブルを許す結果とはなりましたが、なんとか『Chevaliers Renards』の上にはいけたのでそこはよかったかなと思いました。
ポイントはほぼ現状維持という感じで首位キープ。『Libe Lila』の急浮上をみてトップの強さを改めて実感しましたね。
第5節~イカとカモ
第1戦 ゆうれいいか
この半荘では『お茶メイト』の氷室谷えるさんがとにかく不憫な役回りに。
ゆうれいいかはいつもの急加速急ブレーキ麻雀でトップ目へと浮上。えるさんは聴牌してしまったせいでという感じの放銃が続いてしまいました。
そして、それに負けじと和了を重ねたのが、好配牌をきちんとものにした『はに~あくありうむ』野々宮ねむさん。こちらも氷室谷さんから点棒を攫っていく。
熾烈なあがり競争をぎりぎり躱しきって、ゆうれいいか個人2連勝となりました。ちなみにこの日はいかちゃんの推しの新衣装発表があったらしく、心なしか鮮度も普段より良かった気がしました。推しから供給を得たオタクは強い。
第2戦 アルシー
この日、彼には勝ちたい理由が存在していた。確信していたはずなのに眼前で逃げていった前回登板の勝利の記憶を払拭したいのはもちろん……
改名バトルに敗北して『かもシー』となってしまった名前を取り戻したいという事情も存在していたのであった。いや知らんがな
そんな様々な思いが渦巻く中で迎えた登板。さすがの打ち回しで一時は2着につけたものの……
南場の高打点和了合戦に追いつけずにラス。チームとしてもここまでラス回避が続いていましたが、さすがにそこまで楽に終わらせてくれる面々ではなかった。この日は天才の🦑と不憫な🦆でトップラスという展開に。このチームはもしかしたら動物園だったのかもしれない。
まあトップラスなのでプラスです。しかし他チームの追い上げが怖い。
第6節~たとえ運だけでも
第1戦 アルシー
ここまで、ゆうれいいか→アルシー→七瀬くりむ→Alfと順番に出ていましたが、チーム内の協議を経てここでいったんずらしてみることに。
第1戦はチームのためにも自分のためにも前回のラスの無念を晴らしたいアルシーさん(当時はまだ「かもシー」)。
ポイント状況もまだまだ有利な立場とはいえそこまで余裕というわけでもない。リーグ最終盤に向けてさらに下を突き放したいところでしたが……
不憫仲間だと思っていた氷室谷さんに大トップをもっていかれ、かもシー痛恨の個人連ラス。並び順的に『Libe Lila』にトップを取られるよりはまだマシだった、という点は不幸中の幸いでしょうか。
第2戦 Alf
正直なところ、この節が始まる段階で個人的には首位とはいえあまり余裕はないと思っていました。一度のラスで、一度のトップで話は大きく変わる。そう思っていたところにアルシーさんがラスを引いてしまった。仕方ないこととはいえ緊張感はいやが応にも高まります。
せっかく組めた夢のチーム。こんなところで自分の手で傷をつけたくはなかった。運だけでもいいから、とにかくこの半荘は勝ちたかった。
この半荘はクリックミスやらかしたりしたのもあって内容的にはかなり散々でしたが、トップという結果だけは伴ってくれたので本当に安心しました。不格好ながらもちょっとはリーダーらしいことができたのでしょうか?
チームは今節もトップラスで耐え。しかし振り向けばそこには妖狐騎士団。気の抜けない戦いは続きます。
第7節~分水嶺へ
第1戦 ゆうれいいか
この日は2位の『Chevaliers Renards』との直接対決。ここで結果を残さなければ優勝はかなり厳しい。最終節まで温存も考えましたがここでゆうれいいか4度目の登板を決行することに。
試合は『雀姫』春風ぽぽのさんが苦しむなか他3人の壮絶なあがり競争となり……
『はに~あくありうむ』ひらめちゃんがこの満貫和了で頭一つ抜け出す。
最後は『Chevaliers Renards』赤篝さんに軽く躱され3着に。ゆうれいいかの個人最終登板は消化不良で終わってしまいました。(※ルール上出られるのが4試合までと決まっていたため)
第2戦 七瀬くりむ
まだまだ油断ならない展開は続く。しかしながら、自分にできることは見守ることだけ。
そんななかで迎えた東2局、七瀬さんの親番で事件は起こりました。
不憫系とはなんだったのか、コータさんの剛腕が炸裂し七瀬さんは親被りで8000点を失う羽目に。
しかしこの程度で折れるほどヤワな姉さんではなかった。
東3局、満貫ツモで失った8000点を取り戻し……
東4局。切り順次第では放銃となっていた3mと7mを神がかった手順で両方逃しながら2000点の和了。ちなみに控室の私とアルシーさんは別の手順を踏んで7mで親に放銃していました。
そして2着目のオーラス1本場で平和のみの聴牌。まあこれはダマテンにして確実に2着を持ち帰りましょう。
ヒエ~ッwwww
なんか一発でもってきたんですけどこの人。裏裏乗ろうものならまさかまさかのミラクル大逆転トップですが……?
道中ハラハラしたところもありましたが、素点も一気に回復して大きすぎる2着。育成枠とはなんだったのか、心の底から魅了される立ち回りでした。
チームはトップのまま最終節へ。
第8節~決着はいつも突然
第1戦 七瀬くりむ
最終節は第7節終了時点で1位~4位だったチームの直接対決。ちょうどトップラス1回分でわからなくなるという感じの点数状況だったので全く油断はできません。ましてや我々は他3チームから狙われる立場。きっと第1戦から難しい戦いになるでしょう。
……どうしてこうなった???
トップを持って帰るついでといわんばかりに半荘最高スコアも更新していく姿に控室は笑いをこらえきれなかった。いいのか最終節がこんな雰囲気で。まあ負けるよりはいいか。
何をどう任せるというのか。
第2戦 Alf
何やっても大体大丈夫という状況下で迎えるという、嬉しい意味で大誤算となった個人最終戦。正直なところ、チームが優勝できるなら個人スコアは心底どうでもいいと思っていたので、変な大量失点だけしないように粛々と進めることだけをテーマに臨みました。
とりあえず1300-2600のツモ。こういうところで裏が乗らないのが自分らしさが出ていて面白いですね。
個人成績どうでもいいとは言ったけれど取れるものならトップはほしい。ちょっと狙ってみましょうか。立直には通ってないですけど1sくらい押してみましょう。
まあそこまでうまい話はなく2着。でもこれでいいです。なぜなら…
チームは優勝できたから。
あと楯縞さんに言われてはじめて気づいたのですが、個人としてマイナスだった試合がなく第1期は終えることができました。皆さんが築いてくれた優位をきちんと守りきることができて、本当によかったと思います。
やんちゃな打ち回しと軽率なフラグ建築で何度も控室を明るい空気にしてくれたいかちゃん。
個人としては心残りな結果に終わりましたが、牌譜検討で相談に乗ってくださったり、チーム随一のNAGA類似度で確かな安定感を見せてくれたアルシーさん。
育成枠というくくりを疑ってしまうくらい、普段の温和な雰囲気からは考えられない大立ち回りで個人タイトルを一気に搔っ攫っていった七瀬さん。
豊富な経験と知識でチームの土台をしっかりと支えてくださったサポートスタッフのどらさん。
控室配信やチームに関する投稿にリアクションをくださった皆さん。
1人でも欠けていたらこの結果はなかったと思います。
終わりに
もともと私は自分自身に対してあまり自信を持てないタイプではありましたが、こと麻雀においてはその傾向が顕著だったと自分でも思います。
その理由の一因としては、これまでの麻雀人生のなかで成し遂げた実績というのがあまりにも少なかったからというところがあるのでしょう。誰かに誘われた場所で運よく結果が出た、みたいな経験はありましたが、自分の力でやるんだと決意を固めて、誰かに必要とされているという実感をもって、何かを成し遂げようとするという事に関しては本当に不安しかなかった。ましてや自分がリーダーになるなんて全く想像もしていませんでしたし、自信なんて持ち合わせているわけがありませんでした。なんなら今でも自分はリーダーをやるより誰かの下にいるほうが楽だなと思ってしまいます。
それでも今回最後に咲くことができたのは、他ならぬ周囲の支えがあったから。自分ひとりでは何もできなかった。でも、ひとりじゃなかったから何かを成し遂げることができた。
麻雀というフィールドにおいて、誇れるものが碌になかった更地の自分の心に、誇り高く咲いた一輪の花。
この奇跡を、私は生涯両手で抱えながら歩んでゆくことでしょう。
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