@Morioka(僕=村田青葉≒髙橋響子の場合)

劇団「イチニノ」の盛岡公演に併せて上演された演劇ユニットせのびの『@Morioka(僕=村田青葉の場合)』を観劇しました。2020年に上演された作品ですが、今回は村田青葉役を髙橋響子が演じるというもの。

この作品は青葉くんの当時の心境や彼らしい熱量のある理屈がセリフとなっていて、彼に染み付いた日常が舞台でしたので、青葉くんが演じるべくして作られたもののはず。それを他者が、しかも異性が演じることは、想像以上の難しさがあったのではないかと思います。

役者が「そこにいる個人」に見える必要がある作品ですので、もしかしたら「髙橋響子の場合」のif設定として「わたし」の一人称になることもあり得るかもと想像していました。しかし、始まってみたらそこには村田青葉として動く髙橋響子がいました。ちゃんと村田青葉で、ちゃんと髙橋響子でした。これは非常に矛盾を含んでいるのですが、この作品はたぶんそうでなくては成立しません。

彼に染み付いた固有名詞や彼の内側から出る理屈の構築に少しだけ躓いた部分(彼女のキャリアで、彼女の「個」でクリアした部分)で、髙橋さん本人は悔しさもあったのかもと思いますが、観客視点では全く問題なく(個が出たときには既に「村田青葉」だったから)、身に纏った村田青葉は剥がれていなかったと思います。

業務のような所作で床にガムテープで線を引きながら(2020年の初演でテーブルをアルコールで拭いた動きの代替)カウンターテーブルの空間を作り、その内側では牛丼店の店員として接客をし、心境を話すときには線を越えて動き回る演出も面白かったです。

12月のせのびの公演も楽しみにしています。

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