ゼリー/深海

ゼリー

わたしのこころは とても歪な形をしていて 柔らかくて 例えるならゼリーのよう
だからすぐ形が変わってしまって 崩れてしまう
そして いちばん近くにいるひとに影響を受けやすく そのひとの形に変形してしまう

最初は新しい形が新鮮で満足してこころも安らぐ
でも突然 もとのわたしのこころが疼くの
もともとの歪な形に戻ろうと プレートによる地震のように こころとこころが反発し合う
それは痛くて痛くてたまらなくて 誰もどうすることもできない
きっともとのこころが助けてって わたしを認めてって言ってるの
でもあなたの形になったこころも 留まろうと泣いている

いつか いつかどちらのこころも混ざり合って
わたしの形になれば良いと思う
わたしの柔らかくて歪で震えているこころ
ゼリーのようならばきっと  透き通っているはずでしょう


深海

あ、気を付けて
急に深くなるところがあるから
わたしもね わからないの 毎晩変わるから
慎重に心に入ってきてね
わたしの心の中の海は
リゾートみたいな海じゃなくて
崖から見えるような海

ある夜 わたしは深みに吞まれてしまって
苦しくて苦しくて あなたの腕を掴んで
引き込んでしまった
目を開けたとき あなたはとてもつらそうにしていて
わたしはなんてことをしてしまったのだろうと 絶望した
だからだめだって 近づきすぎちゃだめだったんだ
そう思うと どんどん呼吸が浅くなって 身体は沈んでいった
早くあなたの手を離さなければ 道連れにしてしまう前に はやく
振りほどこうとしたのに あなたはわたしの手をしっかりと掴んで
泣きそうになりながら 水面を指さした
か細い光が射し込む 暗い暗い海
わたしは小さく頷いて 息絶え絶えの中 水面を目指した
あなたは信じてと言うように 手を握ったまま 光へと進む

顔を海から出しても まだわたしは苦しくて
泣きたいのをこらえていた
だって だってわたしとんでもないことをした
もう一緒にいられないかもしれない
どんな顔であなたを見つめればいいだろう
会えないなんて想像もできないけれど さよならを覚悟しなくちゃ、と目を瞑る
俯いていると またわたしは沈みかけていたらしく  あなたが引き上げてくれた
全身が感情で精一杯で あまりよく聞こえなかったけれど
たぶん 大丈夫だと、あなたは言った

それからのことはあまり覚えていなくて
おそらくわたしは たくさんごめんなさいを言ったと思う
そしたらちょっと叱られた気がする
もう少しだけ 待っていてほしい
深みにはまっても自力で昇れるまで
瞼の裏には あなたが指さした細い細い光が ちらちらと
煙のように 揺らめいていた

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