漢詩もどき(漢柳)を為す8

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前回までは拙作「桃花詩記」より作品をご紹介してきましたが、今回からまたオリジナル作品を投稿していこうと思います。
今回は少し暗い作品。少し前に作って公開しようか迷いましたが、吐き出したい気持ちもあったのでここで供養します。ざっくり内容をまとめると、ネット上のコミュニティでありがちな諍いの話ですね。もうほとぼりも冷めて落ち着いたみたいですが、今後またどうなるかわからないですし、自戒も込めて出しておきます。

無題

対酒談笑和、  対酒して談笑和し、
並機電戯盛。  機を並べて電戯盛んなり。
不問新古歴、  問わざらん 新古の歴を、
嘗誇親睦硬。  嘗て誇る 親睦の硬きを。
既無着座者、  既に無し 着座する者、
今憂社交病。  今は憂う 社交の病を。
讒言蔽乱倫、  讒言して乱倫を蔽うも、
虚実如映鏡。  虚実は鏡に映るが如し。

押韻 去声二十四敬(盛、硬、病、鏡)

解釈
酒を飲み交わして談笑も和やかだし、
ゲームを一緒にプレイして盛り上がっている。
そこでは新参古参の差はなく、
かつては親睦の厚さを自慢に思っていた。
だが今はもう場に集まる者はおらず、
コミュニケーションの難儀さを憂うばかりであった。
陰口して己の後ろめたい行いを隠しても、
物事の虚実は鏡に映るように明らかだ。

語釈
・機…ゲーム機。
・電戯…ゲームで遊ぶこと。
・讒言…他人を陥れる為にでっちあげを言うこと。

一言
この機会に仲間内の騒動を振り返ってみれば、どれもネット上のコミュニティあるあるだなと。新参古参関係なく仲良しを誇っているような集まりもちょっとしたことで崩壊します。コミュが大きくなるほど地雷は増えますし、避けようのないことなのかもしれませんね。好き好きで集まって程々の距離感を保つくらいが一番安定するのでしょう。

無題

衆鳥集名樹、  衆鳥 名樹に集い、
新古誇不争。  新古 争わざるを誇る。
守節分枝葉、  節を守りて枝葉を分かち、
保礼慎啼鳴。  礼を保ちて啼鳴を慎む。
曲理讒誣意、  理を曲ぐる 讒誣の意、
乱倫雌雄情。  倫を乱す 雌雄の情。
三十夭夭哉、  三十にして夭夭たるかな、
何帰親交盈。  何ぞ帰らん 親交の盈なるに。

押韻 下平八庚(争、鳴、情、盈)

解釈
(かつて)鳥達は良い樹に集まり、
そこで新参も古参も争わないことを誇っていた。
節度を守って枝葉を分け合い、
礼儀を保ってさえずりにも慎みを心得ていた。
道理を捻じ曲げる陰口、
モラルを乱す下心。
三十にもなるというのに若々しいことだなぁ、
これでどうして親交が盛んだった頃に戻れようか(いや、戻れまい)。

語釈
・讒誣…でっち上げでそしる。
・夭夭…若くて美しい様。ここでは皮肉として用いている。

一言
「雌雄」を「男女」としなかったのも意味があります。


・その他詩集(俳句・川柳・短歌・漢柳)→こちら
・小説とか→こちら

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