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物語る絵画

青山に行くついてがあったので、これはチャンス。と
根津美術館で開催中の「物語る絵画」を見てきました。
副題は「涅槃図・源氏絵・舞の本・・・」
副題の通り、仏教関連の物語関連、源氏絵と平家物語関連の絵、そして御伽草子、舞の本といわれる幸若舞関連の舞の物語の絵といった展示でした。
各コーナーで好きな絵が出ていて、これもまた楽しい展覧会でした。仏教関連コーナーでは、いつ見ても興味深いと思っている「絵過去現在因果経」。今回は釈迦が城を出て、山へ入っていくという、比較的好きな馬をと従者を連れて山に入り、わかれるシーンでした。「北野天神縁起絵巻」も好きなのですが、結構コワイシーンが展示になっていました。
源氏絵と平家絵関連コーナーでは源氏絵は好きなものがあまりなくて、屏風もちょっとどちらかといえば苦手な系統のものが多かったです。特に「浮舟図屏風」。平家物語の絵は小さく精巧なミニチュア絵のようなものが多くて、美しくて見良いものでした。以前も根津美術館の展示で見たことがあるものです。どれも有名なシーンで、さまざまな物語に登場するものです。御伽草子と幸若舞では、読んでいてちょっと寂しいような、悲しいような気分になる「酒呑童子絵巻」。ちょっと怪しい酒呑童子の姿、子供の頃から怪童ぶりを見せていた童子が異能を発揮する、七日間で鬼の面を三千打つというシーン、鬼舞を舞うシーン、そして、ついに断酒をやめてしまうシーンと、重要シーンの展示でした。この絵巻の童子はなんだか怪しい華やかさがあって、なんとも不思議な雰囲気があります。
そして、素朴絵でなんだかマイルドになっているけれど、恐ろしいシーンが展開している舞の本「つきしま」。港建設がうまくいかないので、人柱が大量に必要ということで、あっちこっち街道を歩いている人を捕まえてきて・・・という話なので、読んでいて怖いです。これに巻き込まれていく人の話が中心なんですよね。
このコーナーで一番面白かったのは、岩佐又兵衛が描いた・・・かも?そうなのではないか?と言われている「妖怪退治図屏風」。今回これが一番面白かったです。説明には能「田村」の最後のシーンが添えられていました。最後、恐ろしい鬼、悪魔たちが観音の力によって退治されるというものなのですが、この屏風の鬼、妖怪たちは、確かに観音の放つ光が矢となって退治されている風では生るのですが、そして、「これは困った」という顔はしているのですが、どうも、これで退治されて永遠に葬り去られているようには見えないのです。なんというか、屋もちくっとぐらい刺さっているかもしれないけれど、妖怪たちも「いやあ痛いなあ」とうい顔はしているのですが、あまり「やられてない」感じです。「いやあ、困った退散するか。」ぐらいの顔です。そして、田村麻呂軍のほうも「あれ!これは驚き。」という顔をしていて、「大勝利」というよりは、ほとんどの人が「びっくり顔」で、なんだかおもしろいシーンになってしまっています。口々に驚いて「あれを見ろ!」とでも言っているような顔をしています。
今回の展覧会で特に興味深かったのは、一階の物語の展示と呼応した二階の能面の展示です。人の顔というのは不思議だなあと思う面の展示。「近江女」小面の「楢野」、「万媚」と見て、改めて「近江女」に戻ると、まったく印象が違って見えます。男性の顔も邯鄲に出てくる「邯鄲男」「十六」とまったく性質の違う、年齢も立場もちがうもので、面白く見ました。十六の美しさといったら、なんとも魅力的な顔でした。面を近くで見ることはあまり多くないので、こうして博物館や美術館で見ると、顔の不思議さについて考えさせられます。一つではなく、いくつか比べてみることができるのも面白さが増してよいですね。

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