2016年、2016年以前のアルバム ベスト ・テーマ:SMAP / ueda

今回は、以前「新たなるガラパゴス・ミュージックであるシティポップと海外との地脈をもつ音楽たち」という文章を書いていただいたuedaさんに「2016年に出たアルバム以外での2016年のアルバム ベスト」で、「テーマはおまかせ」という内容の文章の依頼をしました。

uedaさんがテーマとしてとりあげたのは、去年解散を発表したアイドルグループSMAPのベスト3。

私はSMAPについてTVでみかけるだけで音楽は代表曲を知ってはいたものの、あまり詳しくはありませんでした。

 今回、上田さんの文章を拝見し思ったことは、彼らは音楽の面で挑戦をしていたグループであるという事。

 私はこの文章からSMAPの音楽に興味を持ち、聴いて、これから彼らに出会う人となるでしょう。

 この文章を読んでくださった方の中にも同じような方がでてくると思います。

これから出会う人達、そして、もう知っていた方も彼らの音楽に再び出会う内容になってれば幸いです。

2016年、2016年以前のアルバム ベスト

テーマ:SMAP

文 ueda

昨年度いっぱいであるグループが解散をした。そのグループの名前はSMAP。

90年代中盤からシーンの最大公約数的な存在である彼らの解散が発表されたのは大きな衝撃をもたらした。今年の半ばから事務所の離脱騒動~謝罪という流れからしてグループによからぬ空気が漂っていただけにこの結末はある程度予測できたものではあるが、実際に起こってしまうと呆気にとられてしまう。

僕自身もSMAPというグループはとても重要な存在である。子供のころから親がファンだったこともありしょっちゅう車の中でかかっていたし、いまになってもよく聞いている。そのため、人生のなかで一番再生回数が多いアルバムは「Vest」であるということは間違いなく断言できる。

近年ではインディーのミュージシャンからの再評価も著しく、非公式なトリビュートアルバムも制作された(http://sportsmusicassemblepeople.bandcamp.com/album/for-my-homiez …)。

彼らが素晴らしい点は音楽的にかなり大胆な冒険をしていることである。国内・海外のミュージシャンの人選も非常に野心的で音楽好きのツボを刺激するものとなっている。ここで今回彼らのキャリアの中でも音楽性の高いと思うアルバムをベスト3の形式で発表したいと思う。彼らの音楽への再評価、そして彼らが「アーティスト」といっても差し支えないものとして再認識してほしい。

1.SMAP007~Gold Singer(95年)

 スマップの快進撃が始まろうとしていた95年に発表されたアルバム。徐々にその割合を強くしていったブラックミュージックの色合いが前面に出始めたアルバムである。このアルバム制作のために一流のジャズ・フージョン系のミュージシャンが集められた「Smappies」というバンドをバックにSmapが歌い続ける。

演奏の面でのすごさもさることながら、その歌詞もすごいものがある。曲の中の主人公たちは日常のやりきれない思いやもどかしい思いに折り合いや妥協をつけながらなんとかして日々をやり過ごしているという、とてもアイドルとは思えない歌詞である。

このアルバムが発表された当時、とある音楽誌はSmapのことを「オルタナティブ・アイドル」と形容したそうだが、さもありなん。”KANSHAして”、”しようよ”、”たぶんオーライ”など充実したシングル群からも彼らの好調がうかがえる。

2.SMAP0013~BIRDMAN(99年)

90年代を通して行われてきたブラックミュージックへの傾倒が最高潮かつ到達点となったアルバム。一言でいえばかなり「黒いSMAP」とでも言うべきであろうか、R&B、ブルースロック、ファンクなどすべてにおいてディープなブラックミュージック解釈を行っている。

かといって、それほどとっつきにくいものではなく、”living large”のようなクールなR&B解釈や”朝日を見に行こうよ”のようなJ-pop的な音楽とゴスペルの融合を行う巧みさ、”Fly”のようなど真ん中ながらバンドの演奏によってうまい曲の聴かせ方を行っているものもあり、なおかつ全体的にコンセプトアルバムのような作り方になっているため全編を通して聴けるようなものになっている。

90年代中頃の作品と比べても今聞いても洗練されたものになっているため、SMAPのアルバムを聴き始めたいというかたはここから始めるのもいいのではないだろうかと思う。このアルバム以降、ブラックミュージック要素は後退していく。

3.SMAP0015~Drink!Smap!(02年)

 ブラックミュージックへの傾倒を捨て去り、新たなSMAPとしてのポップミュージックを打ち出そうと試み、それが見事に成功したアルバム。

一曲目のインストからグイグイ引っ張っていく展開は、当時メンバーの逮捕によって苦境に立たされていたメンバーたちの奮起する姿、そして以前より絆が増したメンバーたちの気合が伝わってくる(インスト後の”Go Now!”という曲で稲垣吾郎から歌い始めるというにくい演出も◎)。収録曲も”世界に一つだけの花”、”FIVE RESPECT”、”freebird”など名曲揃い。この後、数年間低迷期に突入することを考えると過渡期ともいえるため好き嫌いは別れるかもしれないが、良質なアルバムであり、00年代の彼らの代表作と言っても差し支えがない名盤である。

上記に三枚のアルバムをピックアップしてみたが、このアルバム以外にもスマップは良作が多々あるのでこれをきっかけに彼らの作品に触れていっていただければ幸いである。彼らの解散がいかに大きなものを失ったかを実感するはずだ。

■プロフィール■

ueda (blog http://manneedsamaid.tumblr.com/ )

(twitter @magicant_moon)