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私の足りないところ

この腕はできるなら長い方がいい。
あなたがつかまりやすいように、
あなたをしっかり抱きしめられるように。

この脚はできるなら長い方がいい。
あなたのもとにすぐに走って行けるように、
あなたの腰にからみつきやすいように。

この目はできるなら良い方がいい。
あなたを遠くからでもすぐに見つけられるように、
薄暗がりの中であなたの淫らな顔が見えるように。

この耳はできるなら良い方がいい。
耳元であなたのささやきが聴こえるように、
あなたのあえぐ息づかいもしっかり聴き取れるように。

この指はできるなら細くて長い方がいい。
あなたの指がしっかりとからみつきやすいように、
あなたの湿った襞の底まで届くように。

この分身もできるなら長い方がいい。
あなたが口にして入りきらず苦しくて涙を流すように、
あなたの襞の底の扉をしっかりと突けるように。

しかし持って生まれた身体的な特徴は、
どんなにあなたを愛していようとも、努力しようとも、
変えることはできない。

だから、
この心をできるなら、大きく持っている方がいい。
あなたの些細なわがままも、
さみしさも、
やるせなさも、
心細さも、
そして、
あふれるほどの私への気持ちを、
あますことなく受け止められるように。

そしたら、
腕も、脚も、目も、耳も、指も、
そして分身も、
何一つ足りないと感じたりはしないだろう。

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