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客は穴をあけたい

今日は推し事ではなくお仕事の話。
真面目成分はないし機密関係もないのでゆるり見てほしい。
あ、そんなにまじまじと見ないでください。

私は運輸業に携わっていて、10年ぐらい前から物理インフラ等をメインに手掛けてきました、倉庫のネットワーク環境とか、自社内のイントラとか。
今回はその中でも運輸業としての基幹、輸配送のシステムのお話。

この世には輸送に関わる統一的なシステムは存在しません。
あるのは概念だけです。
不思議だと思いますか?経理だったら経理のソフトがあるじゃないですか
運輸業ってそれが無いんですよ。
パッケージ製品としてはありますがそれが各社統一で使えるか、と言ったらそうでもないのです。
でもやってることは”出荷場所から納品場所に持って行くこと。”これだけです。
トラックの兄ちゃんが出荷先に行って荷物を積んで運びます。
途中センターで荷物を下ろして別のトラックで輸送したり、はたまた遠隔地から来た荷物をセンターから納品先へ持って行ったり。
道中には様々なシチュエーションが待っています。
飛行機を使ったり、コンテナに乗せて鉄道や船に。
それだけでシステムの仕様が変わるのです。

運送業(貨物)のシステムを構築するに必要な知識は「貨物自動車運送事業法」などを熟知する必要があります、トラックの運転手さんなどを雇い入れるのに労基法、36協定、そして「改善基準告示」などが必要となります。
これらの法令・告示は何か大きな事故が発生すると新規のルールが出来たり内容が更新されることがあります。
最近だと旅客の方での大きな事故が多発しており、ルールが厳しくなったり、運転手の不足のための中型車等の区分も増えたりしました。
後者の中型車免許・準中型車免許などは微妙に乗れる車種が違うので気を付けないと無免許運転などになってしまいます。
そういうのを防ぐように管理もしなければなりません。

トレーラを管理する場合はトレーラと牽引車のマッチングやコンテナを運ぶ場合はコンテナと台車のマッチングなど
通常のトラックにはない仕様が入っていきます。

さて、統一的なシステムは組めるでしょうか?
答えは「組めます、でも誰も組みません」
なぜか、システムを作ったところでうま味が無いんですよ。
この日本には大手の輸送会社さんが数多くいます。
その輸送会社さんは独自にシステムを構築してるのです。
佐川急便さんはその独自システムをサービス提供しています。

個人的には富士通さんのシステムがお気に入りですね
導入プレゼンに負けてしまったので導入できなかったんですけど。

これは良くある話なんですけど
自社の運行に対して合う製品はこの世に無い、ということは80%でも合うソフトを探して残りの20%をカスタマイズして使うってことになります。
システム会社としては汎用部分を作ってあとはカスタマイズで元取りますみたいな形式にみえるんですけどそのカスタマイズ部分がめんどくさ過ぎて割に合わないことが多々あります。

実売数千万ぐらい
カスタマイズで同等かそれ以上。
会社規模によっては1億円とかそんな感じ。
このご時世そのお金をポンって出す企業ってあんまりいないんですよ。
じゃあどうしてるのかって?紙管理。
最強。
どうしてか、それは予実管理がしやすいから。

皆さんもよくあるでしょう、不在通知。
あれが全員在宅で荷物を受け取ってもらえれば何ら問題ありません。
予定通りに実績となりますので。
でも不在通知となったらどうでしょうか、再配達が発生します。
イレギュラーですよね?こういう変更を必ず記録しなければならないのです宅配に限らずね、荷物を取りに行ったらまだできてなかったよとか、農作物だと嵐が来る前に収穫したからいつもの倍ぐらいあるよ!とか
当日いってみないとわからないものもあります。

その変更を記載するのがシステムより紙の方が優れているのです。
システムも入力したらいいじゃんが簡単に出来る、わけじゃないのが難しいところ。
システム化の良いところは即時性、次の配送先へのバトンタッチが楽なところです、でもそれは予定が変更になった場合にロックがかかる場合があるんですよ。
データとしてね。
だからお金をかけて必ずしも既存業務が楽になるかといったらそうではなく
即時性をとるか確実性をとるかの2択を迫ることになります。

そこをね、何とかねじ伏せることができたらなって。
さて、私を昔から知っている方はお分かりになるかと思いますが、某社の委託業務においてこの春から新しいシステムが稼働します。
どうなる事やら、見守って頂ければと思います。
多分、死に狂っているかと思います。

統一規格があれば、すんなりと移行できるはずなのに。
幻想は夢のまた夢。
ただ、汎用性があれば勝機となるでしょう。

ホームセンターに来た客は穴をあけたいだけでドリルの種類なんて気にしなくていい、ちゃんと望んだ通りに穴があいてくれたらいいのです。
おわり。


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