【TXT】Dreamer 歌詞の和訳と詩の解釈
『20cm』(2019) 以来、久しぶりのR&Bが来ました! 切なくて胸が苦しくなるけど、心の井戸の奥深くへゆっくりと降りていったら、淀んでいるはずと思っていた水面には星空がゆらめいていて…。初めてこの曲を聴いた時、歌詞の内容もまだよく知らずにいたけれど、心の内にはそんな情景が浮かびました。
歌詞をひもといてみれば、『Maze in the mirror 』(2020.5/ボムギュを中心にメンバー全員が制作に携わった曲)の続編のようでもあり、5人がこれまで歩んできた決して平坦ではなかった道、そして夢や希望をあきらめずにここまで辿ってきた成長の道のりを思うと、胸がいっぱいになります。
Dreamer
Produce: GHSTLOOP, James Keys
Songwriting: GHSTLOOP, KODA, Chris Collins, Jack Newsome, "hitman" bang, James Keys, 징진우, 송재경, BIGHIT MUSIC, 이이진, danke, 조윤경, 전지은,이스란 , YEONJUN, STELLA JANG, SOOBIN, BEOMGYU, Slow Rabbit, HUENINGKAI
THE NAME CHAPTER: FREEFALL収録(2023.10)
迷路をさまよった、一日中
救いなんて期待できない
哀れだね、僕の足は
行き止まりで後にも先にも進めない
ネバーランドの彼方に
愛した夢は難しくて
夜も更け、憧れの夢を前に
ついにうなだれる、ふう
わかってるさ、夢は
魔法みたいに
きらきら、きらきら
消えていく
いい歳して
何やってるんだ
このまま逃げようか?
足もとだけ見ていた あの夜
頭上にはきらめく星
降り注いでいた光
やっと気づいたんだ、僕は
遠くで待っていてくれた星
僕はふたたび夢を見る
取り戻した名前
夢を語り合う友
僕は夢見がちな、夢追い人
星の思い出とともに夢を追う
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
Stars
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
Stars
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
僕は夢見がちな、夢追い人
君に話したいことがたくさんあるんだ
新たな人生、昼も夜も
生まれたての
子どもみたいに僕は
子どもみたいに僕は
君を追いかける
僕を照らす夢を
夢を見ない大人と夢しかない少年
ありふれた別れ道の間にいる僕はグレー
暗くなっても星の光はさらに輝く
あの光を追って、もう少しだけ成長してみるよ
長い長い放浪の果てに
長い未来の夢
僕の名前を
やっと気づいたんだ、僕は
遠くで待っていてくれた星
きっと僕はどうしようもない夢想家さ
でも、僕は名前を見つけたんだ
僕は夢見がちな、夢追いびと
あの日交わした約束とともに夢を追う
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
Stars
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
Stars
(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh)
僕は夢見がちな、夢追い人
君に話したいことがたくさんあるんだ
『Maze in the Mirror』の葛藤を振り返って
先にもふれたように、楽曲の前半では「Maze in the mirror」で吐露した練習生時代の彼らの思いが綴られています。特にボムギュは練習生になったのが他のメンバーたちよりも遅かったため、「早く上手にならなきゃ」との焦りやプレッシャーから、練習室の鏡に映る自分の姿が迷路に閉じ込められてしまったように感じたと。それが Maze ~ の曲を書き始めたきっかけだと以前に話していましたね。
思うように前に進めない
夜がふけるまで歌やダンスの練習に明け暮れていた彼ら。一日中歩いても、迷路を抜け出すことができず、もう足がふらふらだと打ち明けるこのセクションからは、思うようにはなかなか上達できない不安や心細さが伝わってきて、彼らの切なく苦痛に満ちた歌声に胸が締め付けられます。
더 길이 없어 휘청이네 は「もう 道が なくて ふらふらする」の意味ですが、ここではそんな焦りと不安を「行き止まりで後にも先にも進めない」と言い換えてみました。
あきらめきれない夢と現実に揺らぐ心
夢になかなか届かず、挫折しそうな心境から、前のセクションでは「夢なんて魔法のように消えていく」と話しています。言い聞かせるように「もう少し大人になれ」と続くわけですが、2行目の 뭣 같은 얘기 が難しい。
直訳すると「何 のような 話」ですが、같은の原型である 같다をつかった뭣 같다では「最悪だ、バカみたいだ」というスラングになるそうです。
「何のような話」がナゼ「最悪だ」になるんでしょう。これは推測ですが、英語には「What a ~ !」(~には形容詞が入る)を使った「なんて~なんだ!」という表現があります。뭣 같다 も同じ使い方かな?と思いました。であれば、뭣 같다 ⇒「なんてこった!(何てことだ)」になりますよね。そこから転じて「最悪だ、バカみたいだ」の意味になったのではないかと。
さてさて。そんな訳で「(魔法だの、きらきら消えるだの)バカげた話、いい加減大人になれよ」と自分を納得させようとしてみるものの「このまま逃げてしまおうか」とも洩らしていて、夢と現実の間で揺らぐ心情が伝わってきます。そんな葛藤から、 철 좀 들어, 뭣 같은 얘기 を、ここでは「いい歳して 何やってるんだ」と訳してみました。
◇
ところで。 ”도망갈까 逃げようか” のフレーズに、懐かしい!と思ったモアちゃんも多いのではないでしょうか。『Run Away』には、笑うのが泣くより辛いんだ ~ 泣いてしまいそうなら 手握るんだ 逃げようか( Japanese ver. 歌詞より)とありましたね。
今アルバムのコンセプト「 MELANCHOLY 」フォトにあった、虚ろな表情でため息を吹きかけるようなスビンを映しだす鏡。その横に、赤いペンキで描かれた涙のスマイリーフェイスは、そんな Run Away や Maze in the Mirror の心情をのぞかせているようにも思えます。
失われなかった光
つま先=足もと(暗闇/現実)と、頭上の星空(希望の光/夢)。夢と現実の対比を浮き彫りにした歌詞が鮮やかです。足もとの暗闇にばかり気を取られていたけれど、気づけば頭上にはずっと星が輝き、見守り待ち続けていてくれたのですね。
直訳そのままだと、このコントラストが少しわかりにくいなと思い、밝게 빛나던 star (明るく輝いていた星)を、頭上にはきらめく星としました。
chase は追いかけるだけじゃない
ここでの取り戻した名前とは、あきらめるべきかどうか迷っていた”夢”を、自分らしく追い求めるということでしょう。続くフレーズでは꿈을 좇는 chase(夢を追う、追いかける)と言っています。
chase は前の行の name とライム(韻)を揃えたものであり、当然タイトル曲の「 Chasing That Feeling」と合わせたものなのでしょうが、同じ意味のワードをあえて韓国語と英語で重ねていることから、言葉遊びが隠れているのではと、深読みをしてみました。
一般的には「動詞)追う、追いかける、追跡する、急ぐ」「名詞)追跡、追い求めるもの」などの意味を持つ chase ですが、調べてみるとほかに「何でも話せる友だち」や、ジャズの「掛け合い」(短い間隔で交互にアドリブ演奏をし合うこと)などの意味でも使われるんですね。
ここで「Maze in the Mirror 」の歌詞を振り返ってみると、先の見えない不安に少年は「どうか僕を見捨てないで」「僕を見つけて」とSOSを発しています。また、彼らの自作曲「;(땀) Sweat」には「自信をなくした僕を見つけて、君は励ましてくれた(意訳)」とあり、今アルバムの3曲目「Back for More(TXT Ver.)」の歌詞には、「君といると何もかも新しく感じられる 論理とは程遠い僕らの会話~一晩中しゃべり続ける」場面もありました。
そこから、取り戻した名前には、ともに歩み、寄り添う”君”の存在も含まれるのではと解釈し、꿈을 좇는 chase を、ともに夢を追う仲間⇒夢を語り合う友と意訳してみました。
dreamer, memories of stars, Stars について
I'm a dreamer
直訳すると「僕は夢見る人」ですが、実現できそうにないことを思い巡らせてばかりいる人(夢想家、夢見がちな人)、とりとめもない夢のようなことをしきりに想像する人(空想家)、さらには、理想や希望を持ちそれを追い求める人、そのどれもが dreamer です。
前のセクションで「夢を追う」と言っていたことから、ここでの I'm a dreamer, dreamer は、たとえば「僕は夢を追う、夢追い人」としても良いけれど。どこか夢見がちなナイーブな感受性を持っていたからこそ、彼らは儚い青春の美しさを醸していたのだと思うのです。
だから、最初は叶うかどうかもわからなかった夢想家で、今も傍からはそう見えるかもしれない。けれど、僕はあきらめずに夢を追い求める dreamer なんだ。そう言いたかったのではないかなぁと解釈しました。
そこから、「僕は夢見がちな、夢追い人」としてみました。
memories of stars 星の思い出
星の思い出といえば、最初のアルバム「THE DREMA CHAPTER: STAR」に収録された『Nap of a Star』が思い浮かびます。歌詞の中には「星あかりの下で踊った子どもの頃の記憶~魔法のように思えた瞬間 君と歩いた夜空」と、儚くも幻想的な星の思い出が綴られています。
そしてMV のなかに織り込まれたストーリーでは、「僕たち離れ離れになっても、ここで必ずまた会おう」と、少年たちが星と約束を交わしています。
そこから、星の思い出には、再会の約束もこめられているのではないかと思い、二度目の dreamer with memories of stars では「あの日交わした約束とともに夢を追う」としてみました。
Stars
個人的にいちばん大好きなパート、"(Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh) Stars, (Ooh-ooh-ooh, ooh-ooh) Stars…" 。天高く浮かび上がる星々のような彼らの歌声に、不思議な開放感や癒やしもあって、深い余韻が残ります。
ここでの Stars は、あえて訳さなかったのですが。
star には闇を照らす光がポジティブなエネルギーをイメージさせることから、夜空の星以外に夢や希望、主役、スター、運命などの意味を持ち、それらすべての意味が、「Stars」の呼びかけに込められている気がします。
◇
余談ですが、star といえば。列車での偶然の出会いから二人が心を通わせることになる青春映画『ビフォア・サンライズ』(1995)が思い浮かびます。
主人公のジェシーとセリーヌは、ウィーンの街をぶらぶらしながら、とめどなく夜通し語りあうのですが(まさに、先にもふれた Back for More の「論理とは程遠い僕らの会話~一晩中しゃべり続ける」の歌詞そのもの)。街で出会った占い師は、ふたりを占った後、去り際に「あなた達は星なのよ、忘れないで」と言葉を残すのです。
映画の前半、ジェシーが一度はひとりで下車したものの、列車に戻り(この辺ちょっとうろ覚えなので違っているかも)セリーヌを誘うセリフも、とても印象的でした。
なんだかトゥバのストーリーをぎゅっと凝縮したような言葉にも思えるのは気のせいでしょうか。
break down が使われた意味
break down は、一般的な「壊す、破壊する」から派生して「分解する」の意味でも使われます。そこから転じたのが「噛み砕いで話す、詳しく説明する」という意味。でも”君”や、星に語りかけるフレーズとしてはちょっぴり堅苦しい。くわしく話をするという意味から、ここでは「君に話したいことがたくさんあるんだ」と訳してみました。
ところで、同じ意味なら Let me talk to you a lot 等でも良さそうですよね。どうしてbreak down なんでしょう。実はほかに「化学変化を起こす」という意味もあるんです。「僕たちたくさん語り合い、絆を深めて、シナジーを生み出そう」そんな意味もこめられていたのだとしたら、チョイスがとても深いですね。
夢と現実の間に着地点をみつける
以下は、アメリカの経済メディア Forbes のインタビューで "I'm a dreamer, dreamer, dreamer with memories of stars " 部分についてテヒョンが言及していたものですが、このセクションで彼らが言いたいであろうことも、とてもわかりやすく伝えてくれているのでご紹介して締めくくりたいと思います。
*****☆**
コンセプト「MELANCHOLY」のフォトでは、テヒョンが佇んでいた鉄格子の辺りに、沢山の花が咲いていましたね。全部はわからなかったのですが、背の高い青の花はヤグルマギク、ネルのように起毛した白はエーデルワイス(の近縁種)、赤紫の小さな花が集まっているものはバーベナ、テヒョンが手にしていた青い花はボリジ(別名:スターフラワー)の花(※アルバム 「FREEFALL」の Concept Teaser で雨の中、排水口脇のコンクリの隙間から咲いたものと同じ花)だろうと思います。
それぞれ、エーデルワイスが「たいせつな思い出」、ヤグルマギクは「繊細、優雅、信頼」、バーベナは「魔力」、ボリジは「勇気」、「愁いを忘れる」などの花言葉を持っています。
エーデルワイスは山間の過酷な環境に耐えて育つことから強い薬効を持ち、古くから民間療法に用いられてきました。ヤグルマギク、バーベナ、ボリジはハーブではないけれど、どれもエディブルフラワー(食べられる花)として利用されている植物なのが何ともファンタジックだなぁと感じました。
現実の苦痛を和らげ、前に進むチカラを得るために、彼らはそれぞれの花をほおばったりして花言葉の魔力を取り入れていた、そんなサイドストーリーなのかなぁと想像してしまいます。
◇
思いがけず長文となってしまいましたが、最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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