『女龍神也の呪い』その他の沼御前伝説
※H・Nの所有していた書物より抜粋
『事例1』
弘安年間、七月。おなつという少女が沼沢湖での遊泳中に行方不明となる。
彼女の村の人々は昼夜問わずおなつを捜索するも発見できず。約三日後、村に滞在していた上総国の山伏が、おなつを嫁に貰う条件のもと捜すことになる。
実宗は三日三晩、滝に打たれて断食祈願をし、おなつの居所を予言。彼の言った通りのところで彼女は救出されたが、話すことができない状態で、夕陽を見て泣くばかりの日々を過ごしたという。
死の間際、おなつは「昼間に沼御前は機を織り、夜になると乙姫様のような容姿から恐ろしい大蛇に変貌する」としゃべったらしい。
『事例2』
正徳三年。ある猟師が早朝に沼沢湖に猟に行くと、対岸で、髪の長さが二丈ほどもある若い美女が腰から下を水に浸け、お歯黒を塗っていたという。
これを沼御前と思った猟師が鉄砲で女の胸を撃つと、彼女は水中に消えたそうだ。
途端、暗雲が満ちて轟音が響き、湖面が荒れて水煙が天に到るほど沸き立ったらしい。
猟師は驚愕して逃げ帰ったが、その後に変わったことはなかったという。
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