黄昏に仕掛ける〈◇クゥラ〉
こちらの流れも少しお借りしています。
▼お借りした方
ファタさん
メテオくん
帰らずの村へ来たら、友人のファタが井戸に嵌って動けなくなっていた。何が原因で井戸に嵌まったのかは知らないが、数分後にはクゥラとメテオによって無事に彼を井戸から救出できた。後半はほぼ力づくで引き上げたので呻き声を上げられたがそこは我慢してもらったが。
「ありがとうね、二人共」
無理やり伸ばされた脇腹をさすりながら井戸から這い出てきたファタがふにゃりと笑う。ピカチュウを模したパーカーと相まって可愛さが倍増しており、クゥラは思わず緩みそうになる唇をきゅっと固く結ぶ。
「もう日が暮れてしまいますね」
オレンジ色に染まりつつある空を眺め、クゥラが呟くとファタとメテオはそうだね、と返してくれる。
「これじゃ帰らずの村の試練は難しいかな」
「そうですね。ここの住人と遊んでいたら夜になってしまいます」
「それじゃあ、もうおしまいかしら?」
メテオが首を傾げる。大半クゥラが抱き抱えて移動してはいたが、一日中連れ回してしまったので疲れてしまったのだろう。少しだけ彼の目がとろんとしていて、無意識からくるのだろうかクゥラの袖を軽く掴んでいた。
「そうですね。でも、今できることは一つだけありますよ」
再びメテオを抱き上げ、クゥラはにっこりと笑う。
「あ、ボク分かったよ。バトルオアトリートだ」
「ええ、そうですよ」
「ん? 俺と?」
「他に誰がいるんです」
「君達は二人だ。ルール上同じ相手と同じ条件でバトルできるのは一回きりだけど、タッグバトルをするならアルスくん以外であと一人レッドのメンバーを見つけないとね」
シングルなら話は別だけど、とファタが丸眼鏡の奥で目尻を下げたまま言う。後ろではいつの間にかゲンガーがファタのピクシーと親しげに遊び始めていた。いったいいつあんなに仲良くなったのだろうか。そんな疑問を浮かべつつも、クゥラはメテオに視線を戻す。
「メテオ殿、ここで見ていてもらえますか?」
「クゥラさんはファタさんとバトルしたいの?」
「ええ」
「ファタさん、四天王だから強いよ?」
「知ってますよ。大丈夫です」
どこか不安げなメテオから目を逸らさずにクゥラは笑顔で続ける。
「終わったらアルス殿も連れて、皆で美味しいものを食べに行きましょうね」
そう言って静かにメテオを地面へと降ろし、ファタへと向き直る。
「バトルオアトリート」
はっきりと放ったその宣言で、ファタが静かに目を開いた。
「いいの? 俺、強いから負けないよ」
「知っています。でも、私だって強いですよ。負けん気だけは」
「そっか、じゃあ後は行動で示すだけか……」
ファタが笑みを浮かべたままじっとクゥラを見つめる。メテオと共にタッグバトルをした時とは違う、まるで試すような視線はポケモントレーナー特有のものだろうか。そういう意味で彼の視線を初めて経験するクゥラにとって、それは酷く奇妙なものに感じた。ただじっと見られているだけなのにざわざわと毛が逆立つような、背筋がぞくりとするような、空気がピリつくような。自分で勝負を仕掛けておいてなんだが、これだけの緊張感は今まで味わったことがない。思わず過りそうになる不安を無理やり頭から追い出す。それ程にまでこの雰囲気は苦手に思えた。
──これが、四天王。
いや、とクゥラは目を細める。これはまだ序の口だろう。あくまでこの大会は"楽しむこと"を目的としており"真剣勝負ではない"。ファタのことであるから手を抜いたバトルはしないとは思うが、まだ"その領域"に至るものではないことはクゥラ自身分かっていた。そこに至れる人間でなければ、確信を持って「自分は強い」だなんて言えないのだから。
「私、大会の最後は貴方と1VS1で勝負がしたいと思いました」
不意に思ったことが口を突いて出てきた。こんな気恥ずかしいことを言うつもりではなかったのだが、本心であるのは確かで。今日一日見かけたのは破天荒な行動ばかりする場面が殆どだったが、こうして勝負を仕掛けたら真剣に見てくれるところが非常に好意的に感じるのだ。
クゥラはファタに感謝をしていた。しかしその感謝を上手く伝えることができず、歯痒い思いも抱えていた。
本当は「ありがとう」を沢山言いたかった。友人になってくれて。楽しい話をしてくれて。怪力でも傷が沢山あっても気さくに接してくれて。そして何より、最愛の人を覚えていてくれて。彼との約束を覚えていてくれて。
あの電話の時、涙に詰まって言えなかった言葉。お礼を言いたかったのは私の方です、と言えなかった自分が情けなかった。今更、その言葉を伝えるには遅いかもしれない。だからクゥラはバトルという選択肢を取った。これしか彼が最も好むものを知らなかったから。まだ彼を深く知らないから。だからバトルをするのだ。
これは、クゥラがファタ・モルガーナという人間を知る為に仕掛けたバトルでもある。
「ファタ殿、受けてくださるのなら最大BETで勝負がしたいです」
血のような真っ赤な瞳から視線を逸らさず、クゥラは真剣な表情で言った。
*ファタさんにバトルを仕掛けました。場所は帰らずの村です。不都合等ございましたら断っていただいて問題ありません。
【バトルに応じていただけた場合】
以下の使用ポケモンと賭け数バトルします。
■使用ポケモン
ゲンガー(♀)
※ゲンガーはピクシーくんとバトルがしたいのでめちゃくちゃアピールしてきます()
詳細はエントリーシートをご参照ください。
■賭けるスイーツチップ
30個
(もし所持数が満たない場合は調整したり、都合が悪ければ断っていただいて構いません)
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