自分を連れて行く

ヨーロッパで過ごした日々について思い出すことが多いので、きちんと言葉でも残していこうと思う。どこまで書けるかわからないけども。

飛行機のチケットを取ったのは実家のベッドの上からだった。一日にパン1つと紅茶を飲むのが精一杯だった。母は毎日朝になると微糖のロイヤルミルクティーを用意してくれた。それまで呼吸を忘れるほどの忙しさで働いていた私は、生産性が無くなってしまった自分に後ろめたさを感じながらベッドの上で一日の大半を過ごしていた。

あまりにもショックな出来事があり、心と体のバランスが崩れていた。人はそうなった時に、起き上がることも眠ることもできなくなるのだとびっくりした。何の欲も無くなっていた。食べたいものも欲しいものも思いつかなくなっていた。総じて生きる欲求というものが沸いていない証拠だった。”欲求”とは、終わりに向かっているこの気持ちを邪魔するとさえ思った。

そんな中でふと、一年前に一人で訪れたイタリアでの毎日を思い返すことが増えた。「冷静と情熱のあいだ」に心を打たれてとても短いスケジュールで行っていた。

スカイスキャナーで一番安い飛行機を調べた。視点はカーテン、毛布、画面を捉えていた。一番安い日に行って、一番安い日に帰ろう。

日本、ローマ往復6.5万円。約1か月間の逃避。

今は自分に躊躇せずにお金と時間をかけるべきだと思った。宿泊費も、食費も、いつもなら気に掛けること全て何でもいいから、自分が生きる場所に行くべきだから。

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