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幸せへのまわり道

日曜日。

吉祥寺をノープランでブラブラと。疲れた足を休ませるために入ったカフェで、急遽映画を観に行くことに決めた。

周辺の数少ない映画館の内、さらに都合のいいタイミングで上映している映画という限られた選択肢の中から、

選ばれたのは、「幸せへのまわり道」でした。(わ〜!)

トムハンクス主演なら面白いでしょっていう、安易かつ合理的な動機で。(だって外れたことないもんね)


そんな感じで偶然出会った映画だったけど、結果、

これは運命だったんじゃないか?と思えるような映画だった。


実話に基づいた物語で、雑誌記者のロイドが子ども向け番組の司会者フレッドロジャース(トムハンクス)と取材を通して、出会い、交流することで自分自身、家族、人生と向き合う。というようなあらすじ。(ざっくり)


ロイドは、有能な記者で仕事は順調な一方、プライベートでは、母親を苦しめた父親を許せずにいた。姉の結婚式で、父親と再会し、その後自分に歩み寄ろうする父を受け入れることができない。 

私はずっと彼と自分を重ねていた。私にとっても、父は母を苦しめる存在であり、自他共に認めるマザコンの私は、父のことが嫌いだ。


ロイドも私も、父親に対して怒りという感情を持ち続けている。それは、自分が何かをされたからではなく、母の代わりに、母のために怒っているのだと思う。

ロイドの夢の中で、亡き母が「私にために、ずっと怒ってくれたのね。でももういいの。」語りかけるシーンがあった。

そこで、父親がどんなに酷くても、最低でも、子供が自分のために父親を恨んだり、憎むことを望む母親はきっと少ないんじゃないかと気付かされた。

私が父のことを嫌いだと母に伝えると、母は「ごめんね。」と言う。


私がすべきことは、母の気持ちに共感すること、寄り添うことであり、それ以上は、かえって母を傷つけることを理解できていなかった。


フレッドはロイドに、今のあなたを形成したのは、あなたが今まで出会ってきた人たちだ。と言った。

確かに、どんなに嫌いでも現在の自分の価値観や人間性に父が大きな影響を与えたことは間違えない。そう考えると、憎むべきだけの存在ではないと思えてくる。

ロイドは、父親を「許す」という選択をとり、

"I always Loved you."

"I love you, too."

と交わしたシーン。妙に心に残って「私も、父としっかりと向き合わなきゃ。」と思った。

父の違う側面を見る努力をしなきゃいけないと感じたからかな。悪い人ではないこと、家族に対する優しや愛情をちゃんと持っている人であることは分かっているからね。


そしてフレッド。聖人。

彼は、常に穏やかで、誰1人としておざなりに扱わない。自分の感情とも他人ともしっかりと向き合う。

それは、生まれ持った能力なんかではなく、毎日の努力の賜物。

毎朝5時半に起床して、祈り、手紙を書き、泳ぐ。


きっと他人を心から想える人は、自分を自分で満たせる人だ。他人への思いやりを持てれば、自分の感情や言動もコントロールできるのだと思う。


私は、自分でも不思議なほどに、心に余裕がなく、自分のことしか考えられなくなってしまうとき、誰かに負の感情(苛立ち、嫉妬、妬み)を抱いてしまいやすくなってしまうときがある。その原因は、だいたい「自己嫌悪」であることは、ここ何年かで気がついた。

例えば、何もせずに1日を終えてしまったときだとか、やるべきことを後回しにしてしまっているときだったり。

そんな邪悪な「自己嫌悪」の発生を防げるのは、他でもない自分の行動である。それは、何かで成果を出したり、成功を収めるといった大きなことでなくていい。きっとものすごく小さいことでも、それが自己肯定感を高める支えとなったりするのだ。早寝早起きをする。10分間のストレッチをする。本を読む時間を作る。そんなこと。

そしてそんな小さな積み重ねが、心を豊かにすることをフレッドが証明していると感じた。

フレッドは、所作や言葉の発し方が丁寧で、そこから心のゆとりが感じ取れる。きっと彼と関わる人は、自然と穏やかな気持ちになるのではないかと思う。

フレッドは「ジョアン(奥さん)に見せるんだ。」と言って出会った人の写真を欠かさず撮る。

ジョアンは、ロイドに「彼は完璧な人間ではない。相当な努力をしている。」と語る。

2人が一緒のシーンはそれほどなかったけど、お互いを愛し、認めて、支え合っていることが十分伝わった。理想の夫婦だ。

きっと自分がそんな夫婦になれるかは、良い相手に巡り会えるかじゃない。自分が努力をし続けられるかなのではないかなと、今は思う。


この映画は実際にロイドが書いた、"Can You Say...Hero?" というタイトルの記事が基になっているとエンドロールにあったから、思わず調べて読んでみたけど、映画では描かれていない部分ももちろんあって、ますますフレッドを知りたくなった。(取り急ぎ、サントラダウンロードした。歌詞ちゃんと読もう)


この映画を観るきっかけになったトムハンクス。やっぱり格が違うと思った。

インタビューで、ロイドを演じたマシューリスが「トムはフレッド役のために生まれてきた」と言っていたけど、(YouTube参照)

大げさなんかではなく本当にそうだと思える。

トムハンクスが、フレッドとして番組内で、オープニングを歌うシーンは、何年も前からずっとやっていますよね?くらいに違和感がないし、実際の番組に全く馴染みのない私さえも、どこか懐かしいと感じてしまった。

動きや会話のスピード、間がフレッドのもので、(本物を全く知らないけど)トムハンクスが演じていることをつい忘れてしまいそうになる。

「フォレスト・ガンプ」だとか「ターミナル」もすごく好きだけど、さらに素敵な作品を見つけてしまった気がする。(うれしい〜)




家族と将来のことを考えることが多かったこのタイミングで、「幸せへのまわり道」に出会えてよかった〜今後も人生の教科書のような映画になることでしょう〜

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