桜の時、今だけがここにある

「メールでのご報告でごめんなさい。離婚することになりました」
冬の寒い朝に届いた、女友達からのメール。私はびっくりし、コーンフレークを食べていた手を滑らせて、スプーンを床に落としてしまった。
うそでしょう……?
飛び散った牛乳のしずくを雑巾で拭きながら、数年前に出た2人の結婚式のことを思い出した。それは、たしか人前式で、生涯の愛を誓う2人を私も見守ったのだ。

詳しいことは書いてなかったけれど、そのメールは「応援してもらったのに、こんな結果となり、ごめんなさい」という言葉で締めくくられていて、なんだか切なかった。

友人は、大丈夫だろうか。
元恋人との別れを引きずっていた私には、誰よりも別れの痛みがわかった。恋人との別れでさえ、心がえぐられるような体験だったのに、1度は生涯を共にすることを決めた旦那さんとの別れは、どれだけ堪えるものなのだろう。
彼女の心情を考えると、一気に食欲がうせてしまい、私は目の前のコーンフレークが入ったボウルをえいっと向こう側へ押しやって、代わりに携帯の画面に集中した。

「報告ありがとう。いつでも、連絡ちょうだいね! (私もまだジュクジュクした傷を抱えているから、良き理解者になれるかも) 暖かくなったら、お花見でもしよう」
今はシンプルな言葉が一番いいだろう。なんども書き直し、打った文章を送る。そして、ストーブのごうごうとした音が響く部屋で、時間が彼女の傷を癒してくれますように、と祈った。

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#さくら #桜の時 #別れ

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