この世界の誰より、何より、愛している人がいる。小学校六年生、インターネットで音楽を聴くようになってすぐに知ったアーティスト。それからずっと、今でも、私にとって一番大切な人だ。好きで好きで仕方がないから、名前は出せない。彼は唯一、私の内側にいる人で、その存在が私の中から消えることはきっと無い。 今、推しという便利な言葉があって、私にとってのあの人もきっとその一言で表せるけれど、この心を、そんなふうに纏めてしまいたくない、と思う。 彼の、好きな音楽の話をあまり気分良く聞けない
中学校に入る少し前から、音楽を聴くようになった。きっとその頃に、私は私になったと思う。それからずっと、音楽を取り込んで生きてきた。有線イアフォンの白いコードが、私の生命線。音楽を聴けなくなったら、私は直に死ぬでしょう。人間の身体が酸素を無くしては生きられないように、私の心には音楽が必要だった。 音楽を作って生きている人が好き。彼らの世界には、きっと音楽しか無いから。そうして生きていけたら、どんなに幸せかと思う。音楽を、聴いて、書いて、吸って、吐いて、そういう風に生きる人にな
私はセクシャルマイノリティだ。いわゆる、LGBTQ+という括りに入る。自分を出生時の性、女性だと思えないし、恋愛対象も性対象も異性に限らない。自分が何なのか、まだ全然わからないけれど、この機会に考えながら書いてみる。 性自認 どうも自分は周りと何かが違うらしいと、初めて意識したのは中学一年生の時。同性を好きになって、そのことについて調べるうちにLGBTQ+に辿り着いた。色々と考えた結果、その時の私は自分をXジェンダーの中性だろうと結論付けた。今はノンバイナリー、強いて言う
好きな人がいた。片想い。私より少し髪が長くて、背が高くて、声が低い、一つ上の先輩。眼鏡をよく頭の上に乗せていた。それから、とても頭が良かった。私と同じで女の子が好きで、でも私のことを好きにはならなかった。 私たちはきっと似ていた。短髪と丸眼鏡、ピアスにネックレス、ブレスレット。制服のスカートが履けなかった。詩を読むし、音楽をよく聴いた。言葉が好きで、だけど話すのは苦手だった。それから、まっすぐ歩くことも。世界の全部が嫌いで、そのどれもが好きだった。 あの子は、春の早朝、も