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【World】世界ミツバチの日【Bee Day】

【5月20日は「世界ミツバチの日」"World Bee Day" !】

「世界ミツバチの日」という日をご存知ですか?これは2017年12月の国連総会でスロヴェニア共和国が提唱し承認を経て、翌2018年5月20日を第1回として始まった国際的な記念日です。日本では、普段あまり意識されることも話題になる事もありませんが、いかに小さなミツバチ(そしてその他多くの鳥類、コウモリ、チョウや甲虫なども)の働きが植物の花粉を媒介し、我々人間もその恩恵を大いに享受しているか認識し、その多様性を保全・増大することの大切さを考え、また世界中でミツバチが大量死し激減している事(蜂群崩壊症候群)にも警鐘を鳴らし、ミツバチを守る事は環境を守る事、我々人類自身を守る事に繋がるというグローバルな自然・環境保護について認識を新たにする日です。ここで、なぜ「スロヴェニア共和国」が提唱したのか、なぜ5月20日なのかについて少しお話ししたいと思います。

【近代養蜂の父 アントン・ヤンシャ】

アントン・ヤンシャ(Anton Janša 1734年5月20日〜1773年9月13日没)は日本人には馴染みがない名前ですが、マリア・テレジアの勅令によりオーストリア帝室に召抱えられ、養蜂の講義や各種技術の改良をし、二冊の著作を遺したカルニオラ出身のスロヴェニア人養蜂家です。"Abhandlung vom Schwärmen der Bienen" (1771「蜂群要録」) と"Vollständige Lehre von der Bienenzucht" (1775年没後の出版「養蜂大全」。共にドイツ語による著作。邦題は拙意訳)は、ヤンシャ亡き後も「バイブル」として長くオーストリア内外で使われ、ヤンシャは近代養蜂の先駆者として歴史にその名を刻んでいます。特に巣箱の改良に大きな足跡を遺したそうです。そしてその功績を讃え、誕生日(正確には洗礼を受けた日)を記念し「世界ミツバチの日」に定めたという訳です。因みに外来種のセイヨウミツバチに幾つか亜種がある中には、ヤンシャの出身地の名前を冠した「カーニオランミツバチ(カルニオラミツバチ・Apis mellifera carnica Pollman)」という種類もあり、寒冷地に適した上、非常に温和な種類として知られていますが、日本に導入されてはいないようです(暑さにあまり強くないせいなのかも知れません)。

参考【日本養蜂協会HPより ミツバチの種類】

参考【ミツバチ(日本語)】

【写真はリュブリャナの民俗博物館の展示より。スロヴェニアに独特なこのミツバチの巣箱は悪天候でも冬季でも、屋根の下でミツバチの世話ができるような建屋になっています。巣箱の正面に色の違う板が嵌めてありますが、ミツバチは色を識別して自分の巣箱に戻れるそうです。すごい!2019年6月安西はぢめ撮影】

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参考【アントン・ヤンシャ(英語)】

スロヴェニア北西部、ゴレンスカ地方の小都市ラドゥリーツァにある養蜂博物館入口(2019年6月・安西はぢめ撮影)】

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参考【世界ミツバチの日(英語)】

【ミツバチと共にある国、スロヴェニア】

スロヴェニア共和国は緑豊かな大変に美しい国で、その環境保全に国家を挙げて取り組んでいるのはもちろんの事、それが国民の誇りでもあり、自覚をもって自然環境の維持が行われています。近年日本でも、スロヴェニアで生産される品質の高いワインに注目が集まっていますが、安心して飲める上、美味しくて人間の身体にも優しいオーガニックの製品にも高い付加価値がついています。スロヴェニアでは飲む水も食材も、どれもが美味しくて、訪れた人が一様に驚くのですが、この恵まれた自然の中でカルニオラミツバチがせっせと集めてくれたハチミツを味わうとまた格別です。因みにスロヴェニア語でミツバチをČebela(チェベラ)、養蜂家をČebelar(チェベラール)、ハチミツをmed(メード)と言います(カタカナは広い読者に向けた便宜上の振り仮名で、当然ながら言語学的正確さを欠いておりますのでご了承ください)

【街のハチミツ屋さん・リュブリャナ旧市街にて。2019年6月安西はぢめ撮影】

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アントン・ヤンシャの例を出すまでもなく、ミツバチはスロヴェニア人にとってとても身近な存在で、ハチミツとその加工品の数の多さにも驚かされますが、養蜂の現場を見学するツアーやミツバチの羽音を聴いて安らぐセラピーまであります(写真参照)、そしてミツバチや養蜂家について歌った曲もたくさんあります。総人口200万人強に対して、養蜂とその加工品に関連する業界に従事している人間は9万人ほどと言われていますから、実に人口の4.5%。日本だったら人口比でザッと585万人の人間が養蜂関係に従事している事になります。日本一の大所帯トヨタ自動車は約37万人を抱え、その下請け企業は全国に約3万社あり、その従業員計は約135万人(2013年度帝国データバンク調べ)とのことなので、スロヴェニアに於ける養蜂関係者の身近さは我々の想像を越えています。すごいですね!

ミツバチの巣箱の上のベッドで羽音を聞いてリラックスするセラピーの様子。どんな夢を見るんでしょうか。リュブリャナの民俗博物館にて2019年6月 安西はぢめ撮影】

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【手前味噌ですが、国民的愛唱歌を私がカバーした動画を貼らせて頂きます。スロヴェニアの方なら大袈裟でなく「全員が知っている曲」です】

【首都リュブリャナの民俗博物館。偶然、ハチの巣箱の特別展を開催中でした。館内にはずっとBGMに「ブーーーーーーン」という低いハチの羽音が流されていて、聞き慣れていない私は、正直気になってあんまり落ち着いて見られませんでした。2019年6月安西はぢめ撮影】

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【この老養蜂家の眼差しの先には「友人」ミツバチが。2019年6月 安西はぢめ撮影】

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【色々な形の巣箱の変遷を見ることができました。中には人型の巣箱までありました!2019年6月安西はぢめ撮影】

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ミツバチの巣箱の戸板には絵を描く伝統もあります。アントン・ヤンシャは兄弟と共にウィーンで専門教育を受けた画家でもありました】

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【むすび】

我々にとってのミツバチは「ぶんぶんぶん 蜂が飛ぶ…」の歌い出しの童謡で親しんだり、テレビアニメの「みなしごハッチ」(昭和45年)や「みつばちマーヤの冒険」(昭和50年)などで擬人化されたキャラクターを思い出したり、それがどんなものかは知っていても、それほど身近に感じず生きて来たように思います。けれども良く考えてみれば、ハチミツや蜜蝋を収穫したり、植物の花粉を媒介するなど、その性質を利用する経済動物としての歴史は紀元前に遡れるほど古来人間とは切っても切れない関係の生き物です。むしろ、昔話の「猿蟹合戦」に出てくるように、日本人にとってハチは「刺すもの」「怖いもの」と思いがちで、どうもあまり馴染みがありません。実際に、大変大人しい在来種の「ニホンミツバチ」を飼養している巣箱にさえ、何者かが嫌がらせで殺虫剤を撒いて無残にも全滅させられてしまったという報道を見たことがあるくらい、無闇に恐れる存在になる場合さえあります。もちろんこれは極端な例で、当然これは歴とした犯罪ですし、「ハチが嫌い」という理屈で他人の所有物に殺虫剤をかける人がハチミツを口にしないのか、イチゴを始めミツバチの力を借りて生産している農産品が食卓に上らないのか、甚だ疑問です(実際にイチゴ農家さんにお話を窺ったことがありますが、ミツバチを専門業者から借りて来てハウス内に放し受粉を促進するそうです。イチゴ狩りを楽しむため、イチゴのショートケーキを食べるためにはミツバチが不可欠だった訳です。因みに、趣味・副業としてのニホンミツバチの飼育が流行っている昨今ですが、あまりにも人気が出て、専業の養蜂家との接触が増え、管理が悪い趣味の養蜂家の群れから伝染病が出て大群に被害が出るなど、トラブルが増えたので2012年6月に養蜂振興法(昭和30年8月27日法律第180号)が改正され原則として蜜蜂を飼育する場合には、都道府県知事への飼育届の提出だそうです。ご注意ください。

かくいう私も、幼い頃から昆虫全般あまり得意ではありませんが、インスタグラムでたくさんの養蜂動画を見ている内にだんだんミツバチが可愛いとさえ思えて来ました。この実体験、心情の変化から、つまりはミツバチに触れる機会はもちろんの事、ミツバチそのものについてあまり知らなかったという事実が原因としてあるのだと思い、今日は怖がらなくて良いどころか、我々の役に立ってくれている、愛すべきミツバチの事を少し書いてみました。誰もがミツバチからの恩恵を受けている事を知って、今日もせっせと花から花へと忙しく働いている「小さな働き者」にもう少し優しい目を向けてもらいたいと思っています。

参考【尚、近年世界的問題になっている「蜂群崩壊症候群」については日本語の書籍も手に入ります

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