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バロメーター

ある日①
あちい。あちい日が続くと思ったら雨も続くんだ。低気圧で頭が痛い。ジリジリとジメジメとを前に、人間が機嫌を保っていられるものか。暑いのでスーパーで箱アイスを2箱も買う。ふるさと納税で冷凍餃子を150個買ったわたしの冷凍庫に箱アイスを入れるスペースはない。餃子をいっぱい食べる。ああ、食後にアイスがあってよかった。

ある日②
同僚の昔話をきく。
「自分の関西弁の濃さが、好きだった人との距離のバロメーターだ」という、かなりいい話を聞いた。震えた。

ある日③
彼は大学で関西出身の人と出会い、次第に恋に落ちた。彼女が関西出身なのは、好きになったことには関係がない。好きになった人が関西弁だっただけだ。数年後、関東出身の彼は新卒で関西に就くことが決まった。発つ少し前から「関西弁を教えてあげる」なんて口上で2人きりで会うようになった。彼女の特訓のおかげで彼が関西弁を話せるようになった。ただ、彼女の特訓が結実させたのはそれだけでないこともまた明白だ。

素敵な馴れ初めとは裏腹に、物理的な距離は彼らの恋心を応援しなかった。落ち着いた話し合いも激情的な喧嘩もなく、2人の関係はただ戻った。実は2人とも東京にいるし、別に喧嘩したわけでもないから今でも気軽に会う。なら関係を続ければいいと思うかもしれないが、物事はなんとなく始まって、なんとなく終わるものだ。彼は今ではすっかり関西弁は使わないけれど、彼女に会ったときは移ってしまう。関西弁は彼女との距離のバロメーターなのだ。

ある日④
「ごはんのおとも」と「おかず」との境界線を考える。素材数と工程数を変数とすることにした。食べるラー油で行き詰った。「調味料」との境界線もあるらしい。

ある日⑤
友人と交換日記を始める。始める、といったけれどそもそも頻度もルールも、メンバーすら確定していない。こういう見切り発車なことはあまりしたくないんだけど、機を逃すほうが痛手な気がしたので取り敢えず始めた。続くか分からない。日記のページ数や日記を受け渡す頻度が仲の良さを表さない関係なので、続けなくてもいい気がしてきた。

ちょっといい醤油を買います。