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ある帰り道

ある日①
実家に帰る。少し遠いけれど電車で帰れる距離で、乗り換えも細かくないからぼうっとしていれば最寄り駅に到着する。読みたいけど読めていなかった本を読むのにちょうどよい距離だ。
細かくはない乗り換えは、実はとても大事な乗り換え。実家の最寄り駅は支線にあるので、電車を利用するときにはほとんど乗り換えが必要になる。乗り換えるべき駅をうっかり過ぎてしまうと、それが急行だったら(帰省するときは専らそうであるが)5駅ほどすっ飛ばしてしまうので、平気で数十分を無駄にしてしまう。乗り過ごしたことないはないけど、いつもちょっとどきどきしている。これからもきっと乗り過ごさない、これからもどきどきはする。

ある日②
実家の最寄りに着く。このまま帰っても誰もいないので、ちょっとぶらっとする。母親の誕生日プレゼントにアイス(ハーゲンダッツよりいいやつ)を買う。7種類あって、決められなかったから、「これ全部1個ずついただいていいですか」と言い放った。「こっからここまでください」みたいだ!と、テンションが上がる。ドヤ顔になっていなかったか不安である。

ある日③
もう少しで読み切る本を引っ提げて、カフェに入る。窓際の席に案内されて、窓際の席に座る。もう少しで終わると思っていた本、残りがほぼ他の本の紹介だったので、あっけなく読み終わる。カフェに入るほどじゃなかったじゃん。と、ちゃんと口に出して独り言を放つ。

窓の外をぼうっと眺める。近所のマンションに引っ越し業者のトラックが停まっている。家具が積み込まれていくのをぼうっと見ている。
そういえば、全然屈強そうじゃないな。高校生になったから初めてバイトしてます、みたいな人しかいない。しかもそれが5人いる。質を量でカバーしている引っ越し屋なんだなあ。

ちょっといい醤油を買います。