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ブレーカー

ある日①
『「いいんじゃない?」がよくなさそう』と言われたことを1週間くらい引きずって過ごしていたら、本気でそう思ったから発した「嬉しい」に対して「心がこもっていない」と言われる。
言葉が言葉通りに受け取られない。口にしたことは全て思っていることだけれど、思っていることの全てを口にするわけじゃない。そういう妥協や譲歩みたいな言い淀みが多いせいでこうなっちゃったんだろうなと想像して泣く。しかし、他人がどう感じるかまで面倒はみられないのでこれからも傷つくしかない。

ある日②
結婚した友だちに「結婚したいと思ったきっかけ」を訊ねたら、「いろいろあって」と返された。そのいろいろを訊いているわけなんだけど、掘ってみてもそれらしい答えにはたどりつけなかった。きっと明確なきっかけがないってことなのだろう。「いろいろあるのが人生なんだよ」とまるで数歩前を歩いている感じで言われた。

デニーズのアプリで貯められるポイントの単位が「ぷに」だと知る。なぜだろうか。

ある日③
生存のブレーカーが落ちた。電気のブレーカーじゃなくて生存のブレーカー。汚さないように使っていたマヨネーズのボトルの蓋が汚れたことで、ブレーカーが落ちた。些細なことすぎて笑っちゃうけれど、顔を笑顔にするエネルギーは顔に供給されない。
今まで何を想って過ごしていたのか思い出せないくらい、生活がどうでもよくなる。デスクに鎮座しているお気に入りのレゴの花束をぶん投げたくなる衝動に駆られる。実際にぶん投げるエネルギーは腕に供給されない。

今すぐ消えたって良いのに、暑いから扇風機をつける。生存にしがみついていることに嫌気がさす。お腹は空いているけれど食事が喉を通る気がしないので、2食スキップする。3食目にやっとの思いで蒸しパンを食べる。味はした。味がするだけだった。自分の身体が生きるためにつくられていることを感じると、ブレーカーがショートや過電流を防ぐための安全装置であることをようやく思い出す。

生活をどうでもよくしないと生活が維持できないほど、今のわたしには負荷がかかっている。どうにかしなくてはならない。どうにかって?

ちょっといい醤油を買います。