ドビンの奥義がどうでもいいなんてヤソ以外が言えるわけねえだろ!!!

※この記事にはドビン大好き生命による雑な扱いをされることへの怒りが含まれています。

おはようございます。
普段MtGに関する配信や動画投稿をしております、エニィと申します。

みなさんは「ドビンの奥義はどうでもいい」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
プロツアーカラデシュ決勝戦、見事優勝を決めた八十岡翔太選手がインタビューで語ったとされる言葉です。
この言葉から、ドビンは「どうでもいいもの」という一つのミームとして扱われるようになってしまいました。
まあウィザーズ自身もどうでも良かったのか、後年ストーリーでマジで雑に処理したんですけど。

この強烈な言葉が流行ってから、特に実際に試合を見ていた人、当時スタンダードをやっていた人以外はドビンに対して過小評価をされているように感じます。
実際ドビン・バーンは環境に合っているかと言われると、そしてそもそものカードパワーとしても両手を上げて強いと褒めることができるカードではありませんでした。
しかし、その環境最強を決めるプロツアー、その決勝卓で使われたカードが弱いわけないじゃないですか。よく考えてくださいよ。

今回はそんなドビンの汚名を雪ぐため(死んでるけど)、その言葉の本当の意味と、それを凌駕する八十岡選手の神の領域に達するマジックを記事に書いてみようと思った次第です。

プロツアーカラデシュでの光景

まず情報をまとめていきましょう。
プロツアーカラデシュは密輸人の回転翼機を取り入れたアグロや霊気池の脅威コンボが中心のメタゲームと予想され、実際その通りになりました。

しかし、決勝卓に残ったのはそのトップメタではなく、二つのコントロールデッキだったのです。
八十岡翔太氏が持つグリクシスコントロールと、カルロス・ロマオ(Carlos Romao)氏が使うジェスカイ・コントロールです。

八十岡選手、通称ヤソについてはMtGプレイヤーなら説明不要でしょう。日本で最強、いや世界でも最強と言ってもいいかもしれないコントロールマスターです。
対するロマオ選手も只者ではありません。
世界選手権02、TOP8中6人がサイカトグを選択した大会でその頂点に立った、こちらもコントロールを極めた一人です。

ドビンが出たのは八十岡選手が1本取った後、ゲーム2でのことです。
ひたすらドローと土地を並べるだけのコントロールらしい動きのあと、ロマオ選手がエンドに仕掛けた奔流の機械巨人を処理するためマナを寝かせた八十岡選手。その隙にドビン・バーンが着地。
これは処理されますが、ターンが下って同じ流れを再び行う二人。
今度のドビンは定着してしまいます。

八十岡選手にもミシュラランド、さまよう噴気孔はありますが、これを使って落としに行くなんて隙を見せることはありません。
八十岡選手の場に残った氷の中の存在も処理し、ドビンは遂に奥義に向かいます!

ここでドビンの奥義を確認しましょう。ていうかみんなドビンの能力知ってる?

Dovin Baan / ドビン・バーン (2)(白)(青)
伝説のプレインズウォーカー — ドビン(Dovin)

[+1]:クリーチャー最大1体を対象とする。あなたの次のターンまで、それは-3/-0の修整を受けるとともにそれの起動型能力は起動できない。
[-1]:あなたは2点のライフを得て、カードを1枚引く。
[-7]:あなたは「対戦相手は、自分のアンタップ・ステップ中に、パーマネントを最大2つしかアンタップできない。」を持つ紋章を得る。

3

http://mtgwiki.com/wiki/ドビン・バーン/Dovin_Baan

ドビンの奥義は毎ターン2枚しかパーマネントをアンタップできないという非常に強烈なもの。
コントロールではドロースペルを撃っても次にそのカードを使うまでに時間がかかり、全力の打ち消し合戦なんてやろうものならしばらくお休みです。

…これ見て普通のプレイヤーが「どうでもいい」なんて言えるか!?

ただ、それでも、ヤソは「どうでもいい」と言ったのです。
正確には「勝利に直結しないからどうでもいい」と。

改めて盤面を見るとドビンが奥義を使った段階でお互い土地は10枚以上並んでいます。奥義でアンタップできなくても多少の余裕はあります。
そして、ロマオ選手はこの流れで機械巨人を二体失っており、ライブラリの枚数では八十岡選手のほうが若干有利に立っているのです。

つまり、八十岡選手は待ってるだけで勝てる状況にありました。

であれば、勝利に貢献しないドビンよりも、残りのクロックすべてを無くすことに専念した方がいい。

そして、八十岡選手はそれを実行して見せ、このゲームの勝利をつかんだのです。

何をされなけば負けない?何をすれば勝つ?

要するにこの話、ヤソのゲームを見通す力の凄さを語ったものなんですね。
この「何をされなければ負けないか」「何をすれば勝てるか」の判断は非常に重要です。

脅威に見えるものでも、勝てれば関係ないんですよ。例を出しましょう。

少し前ですが、ファイレクシアの抹消者が再録されたことで、赤単がキツくなる、なんて話がTwitterで盛り上がったタイミングがありました。

抹消者は、たしかに殴るデッキに多大な被害をもたらすカードです。
しかし、抹消者が出るのは(加速していなければ)4t目。
赤単ならその頃にはライフを一桁まで減らせているでしょう。
そして赤単の小粒で抹消者に与えられるのはせいぜい2点くらい。
並んだ山をぽいってして終わりです。稲妻の一撃が打てる2枚土地がありゃいいんだから。
総攻撃してライフを火力範囲に持っていければあとは引けばいいだけの簡単なゲームです。
正直言って生き残るとライフ回復し続けるシェオルドレッドのほうがよっぽどきつくないですか?

上記例が本当に正しいかはわかりませんが、「見た目強そう」でそれが本当に勝利に直結するかの思考を放棄するとそこを考える段階にもいけないんです。

「ドビンの奥義はどうでもいい」が伝えたい事は「ドビンの奥義は弱い」ではなく、「状況を適切に判断して本当に対処しなければいけないものを見つけろ」ということです。

ネットミームは元ネタをしっかりチェックしよう

「ドビンの奥義はどうでもいい」
この言葉の背景を調べずに「ドビンとかいうしょうもないPWがいた」という話に解釈するのは簡単です。

しかし、それをやるとその言葉はそこで終わりです。何の意味もない、「パワーワード」に貶められてしまいます。

これはマジックに限らずですね。

格ゲーの大会で醤油を飲み、勝利するたびに別ゲーを宣伝してたやつがいるらしい。

これだけだとヤバい奴が厄介事起こした、いわゆる炎上に取られるかもしれません。
しかし、これはUMvC3というゲームの大会で、当時の最強キャラクターを独自の攻略法で打ち倒し優勝を決めたプレイヤー、クソル氏について語ったものです。
もちろん炎上なんてことはなく会場は大興奮。彼のプレイは伝説となっています。
※醤油はただの奇行(中に入っているのはコーラなので安全!)、別ゲーの宣伝は日輪への愛なので気にしなくていいです。

インターネットでは最近、面白くて力強い一言、「パワーワード」が尊ばれています。
「パワーワード」はそれをあまり知らない人でも言葉の面白さで楽しめる点で優れていますが、面白くするためにカットされた背景部分が存在しがちです。
界隈内ではその背景を知っている人が使うため問題がなかったものでも、少し外に出るとそれを読み取れる人はいなくなります。

ぜひ、みなさんも回ってきたミームは一度調べてみてください。
どういう意図があって、どういう経緯でその言葉が生まれたのか。

そうすることでただの「強い言葉」はいろいろな感情や知識をあなたに与えてくれるでしょう。
何もないときもあります。

以上、エニィでした。

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