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【スコア以上に感じた差】4/3 J1第7節 浦和レッズ戦 レビュー

試合結果

1 前半 1
1 後半 0
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浦和   2   -   1   鹿島


基本スタッツ

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ハイライト

総評

試合開始から浦和にペースを握られる展開。セカンドボールを拾われズルズルと下がり相手の攻撃を受ける時間が続きました。
自陣からのビルドアップも中々上手くいかない中、10分を超えたあたりからロングボールである程度前進出来るようになり、CKから何度か惜しいチャンスを迎えました。
しかし37分に西のクロスから浦和の今シーズン初のオープンプレーからの得点を許してしまいました。
ハーフタイム直前にセットプレーから関川が同点ゴールを挙げたことで良い時間に追いつく事ができましたが、後半に入ってもプレスがハマらず浦和の攻撃をまともに受けてしまう時間が続きました。
後半は結果的にPKによる1点で済んだものの、VARでの得点取り消しなどもあったため、あと2,3点は取られていてもおかしくないような散々な内容での惨敗となりました。

鹿島があまりにも無策だった為、以下の考察も基本的に浦和を主語としたものが多くなります。ご了承ください (-_-)

スタメン

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浦和は西がリーグ戦初スタメン。公式戦直近4試合で得点がとれていなかった中、武藤が杉本に代わり1トップに入り、中盤でも小泉の配置転換や明本、柴戸、武田の起用など攻撃のユニットをかなり入れ替えてきました。
対する鹿島もリーグ戦では3試合無得点。しかし直近のルヴァンカップ福岡戦では5得点を挙げており、メンバー変更は三竿と代表帰りの町田、沖の3人にとどまりました。

前半

浦和の前進のキーとなった小泉

試合開始から浦和はショートパスをテンポ良く繋ぎ試合の主導権を握りました。ほとんどのパスが1タッチ or 2タッチで行われるので、鹿島は前線からプレスかけてもコースを制限できず、簡単に前進を許してしまいました。
中でも小泉選手はパスの質、判断共に素晴らしく、ディフェンシブサード、ミドルサード、アタッキングサードのそれぞれで局面を進める際にフリーマンのように顔を出し、起点となるパスを多く供給していました。またセカンドボールに対する読みも鋭いため、結果的に鹿島の陣形はズルズル後退してしまいました。

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上図のパターン以外にも、右SBの西が開いた際には関根がハーフスペースに降りて楔を引き出すなど、いわゆるポジショナルプレーの引き出しを多く持っている印象でした。
このようなポジションチェンジに対して鹿島はマークの受け渡しでことごとく後手に回り、最終ラインや中央で入れ替わられるシーンや汚いタックルで止めざるを得ない場面が多く見受けられました。

おぼつかない鹿島最終ライン

鹿島のビルドアップに対しては、浦和は4-4-2のブロックで対応していました。武藤と武田で鹿島最終ライン3枚にプレッシャーをかけ、ビルドアップの出口をサイドに制限したところから、連動した動きで常にパスコースを限定させ、最後は鹿島SHに入ったタイミングで浦和SBとSHで挟み込むような形を作り、鹿島陣内でボールを奪い返すシーンが何度も見られました。

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このように後ろから繋いでの前進はことごとく潰されたため、浦和陣内への侵入はロングボールからに限定されていました。
とはいえ、浦和陣内へ侵入できればそれなりにチャンスは作れており、CKなどに持ち込めれば鹿島2トップは相手CBに対して競り合いで優位性を保てていました。
また右サイド攻撃の局面では左SHの白崎がマークを引き連れて中央まで絞ってくるため、左SBの永戸がフリーで高いポジションを取ることができました。25分にはバイタルで受けた白崎がヒールのダイレクトパスで永戸へ流し、かなり惜しいチャンスを作ることができました。

小泉、西のダブルレジスタ

浦和のポゼッション攻撃に対して、飲水タイム明けあたりから鹿島は守備ブロックの横幅を狭め、ボールサイドの守備者の密度を上げることでパスを引っ掛けようとしていました。
しかし結果的にはそれが仇となり先制点を喫してしまいます。鹿島右サイドで小泉が奪いサイドチェンジしたところからカウンターを受け、鹿島はスライドと撤退を同時に強いられます。西に余裕をもって持ち上がられてしまい精度の高いクロスを上げられ、トランジションで鹿島ディフェンス陣を上回った明本にフリーで抜け出され、あっさり決められてしまいました。

余談ですが、西の素晴らしいクロスは私自身カシマで何度も見たし、特にこのゴールがフラッシュバックしました。(泣)



頻繁に明本とポジションを入れ替えインナーラップをする左SBの山中とは異なり、右SBの西は右SH関根との縦関係を保った状態で受ける回数が多く、後方やサイドから精度の高いロングパスやクロスを何本も通していました。
この試合を通してのパス本数は小泉と西が1位2位となっており、彼らが質の高いパスで試合を作っていたことが読み取れます。

以下、浦和のパスソナー・パスネットワーク

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そして一応、鹿島のおそまつな同図を、、、

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セットプレー(で)しか勝たん!

失点後もかなり危ないシーンが続き、あわや退場のタックルなど前半だけで試合が決してしまいそうな雰囲気漂う前半終了間際、セットプレーから関川のヘディングで同点に追いつくことができました。今シーズンに入り得点の半分近くをセットプレーが占めており、町田や関川などCBの決めてほしかった選手が決めてくれています。あとはワンちゃん、、、
この時間に追いついたことで、鹿島はポジティブなテンションでロッカールームに戻ることができ、逆に浦和は圧倒しておきながら流れとは関係ないセットプレーで追いつかれたことで多少は食らっているはず。これは後半に期待が持てるぞ!

後半

明本の素晴らしいスプリント

鹿島サポーターの期待に反して、後半も相変わらず浦和の攻撃を受ける展開が続きました。昨シーズンは武器であったネガティブトランジションも、そもそも陣形のバランスを保った状態で前進できないため、失った際のボールへのチャレンジとカバーリングの判断が難しく、プレスが機能不全に陥ってしまいました。
そんな中鹿島は62分、白崎に変えて松村を投入しました。狙いはおそらく、押し込んでくる浦和の背後を彼のスピードでぶっちぎってほしかったのでしょう。
しかしその直後、常本の明本へのタックルで浦和にPKを献上してしまいます。この場面でも浦和のデザインされた攻撃と明本の素晴らしい動き直しにまんまとブロックを崩されてしまいました。

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また以下の浦和の走行距離・スプリント回数の相関図は、このチームにおける役割分担を良く表したものになっています。

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山中、明本、関根の3人は他と比べて明らかに多くのスプリント回数を記録しています。つまり小泉、西といった「使う側」に対して彼ら3人がミドルサードからアタッキングサードにかけて「使われる側」として大事な役割を果たしている事が読み取れます。中でも明本のスプリントは得点に直結する質が高いものが多かったと思います。

采配の基準が常に攻撃のザーゴ監督

またも追いかける展開となった鹿島、ここからは両チームともに選手を入れ替え、最終的には以下のような並びになりました。

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鹿島はアラーノや遠藤を投入し、攻撃で主導権を握ろうとしたのでしょうが、プレスがハマらない状況は変わらずカウンターに行こうにも、浦和のトランジションが良かったり鹿島のキック精度が低かったりと、状況は全く好転しませんでした。むしろ、守備時に適切な立ち位置を取れない選手が増えてしまい、マークがより曖昧になってしまったことでさらに守備の時間が増えてしまいました。
サイドをワンタッチで崩され関根に幻のゴールを許すなど、いつ決着がついてしまってもおかしくない流れでした。
ボクシングで例えるなら、グローブ変えても既に両足を捻挫しているような状態なのでまともなファイティングポーズすらとれていないような感覚でした。
ここで気になるのはザーゴの采配です。そもそもメンバー選考の段階からベンチに広瀬、小泉、永木など後ろを落ち着かせることが出来る選手を一人も入れなかったのは疑問です。昨シーズンもベンチ入りのディフェンス要員はだいたい一人で、守備に問題を抱える展開でも攻撃に圧力をかけてギャンブルにでるような采配が目立ちました。それが吉となり勝ち点を拾った印象は薄く、逆に手薄になった後ろをつかれ勝ち点を落とした苦い思い出の方が鹿島サポの記憶に残っているのではないでしょうか。(アウェイガンバ戦、ホーム大分戦など)
また試合中のメンバー交代以外でのピッチ上の工夫もあまり感じませんし、「今日はポゼッションは無理だから、優位性を活かせる前線にとにかく放り込んでセットプレーを狙いに行こう」といった割り切った舵の取り方もできず、お粗末なビルドアップの失敗を繰り返すスパイラルに陥ってしまうケースがここまで少なくありません。
ピッチ上で起こりうる問題に対して解決策の引き出しがあまりにも少なく、それを予測したメンバー選考も出来ないようでは、このまま残留争いに巻き込まれてもおかしくありません。
さらに、非常に印象的だったのはテクニカルエリアでの立ち振る舞いです。浦和のリカルド・ロドリゲス監督は、2-1で勝っている終盤でも盛んに手をたたき声を張り上げ選手を鼓舞していました。比べてザーゴ監督は非常に大人しくピッチを見つめている様子で、積極的に鼓舞していく様子は見受けられませんでした。監督それぞれスタイルやスタンスの違いはあるにせよ、この試合でのザーゴ監督の立ち振る舞いは、冷静に戦局を見極めているというより、手も足もでない状況に茫然としているように見え、ピッチ上の選手も不安にさせてしまうのではないかと思いました。

妥当なゴール期待値

結局はセットプレーとセカンドボールを回収できた時の常本のクロス頼みといった感じで、ゴール期待値の変化も終盤にかけては以下のように頭打ちの状態でした。

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この試合における鹿島のゴール期待値の上昇はおそらくほとんどがセットプレーによるものだと思います。試合終了時点でのxGOALSも1.03と、1得点という結果が妥当だったともいえる値となっています。

まとめ

試合を通して感じたのは、浦和のデザインされた攻撃に対して鹿島の"無策"ともいえるゲームモデルの差でした。
RB派のチームが推し進める、敵陣でのトランジションで相手を上回り主導権を握るゲームモデルに近いものを採用しているのだとしても、明らかに浦和の方がトランジション時の振る舞いは素早く、整備されていました。
またルーズボールに対する出足も浦和の方が鋭く特に小泉からは読みのセンスを感じました。
(こぼれ球奪取数 浦和:31回 鹿島:27回 [SPORTERIAより引用] )
犬飼を出場停止で欠いたことで守備の迫力だけでなく最後方からの組み立てをオーガナイズするレジスタが不在だったことで、起点作りに苦労していた鹿島とは対照的に、浦和には小泉、西だけでなくGKの西川も非常に質の高いボールを供給しゲームメイクに貢献していました。代名詞ともいえる低弾道のパントキックだけでなく、素早いグラウンダーで相手プレッシャーラインの間を抜き中盤の味方まで届けるパスは、解説の戸田さんが仰っていたようにエデルソンのようでした。
この一戦を落としたことで、順位は16位(2021/4/4時点)まで後退し、18位のガンバ大阪が未消化の試合が多いことを考えると、すでに残留争いに巻き込まれているといえます。次節の対戦相手となる柏レイソルは一つ下の17位と、何より結果が求められる試合になることでしょう。
ゲームオーバーとなる前にフロントが動くか、それとも、、、

チーム創設30周年のアニバーサリーイヤーは、今のところ最悪のシナリオにまっしぐら。ですが救世主となれる人物は何人もいるはずです。それはもしかしたら今はチームの外にいる人かもしれませんね。

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