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核P-MODEL『ビストロン』 - イベント「Amigo Analyzer」報告

日程:2022年11月5日(土) 昼
会場:ROCK CAFE LOFT
出演:佐藤あんこ

核P-MODEL『ビストロン』CHTE-0030 2004年10月7日Release 

M/S処理やスペクトル分析、AI解析等を用いて、平沢進楽曲の「音」を分解・分析していく試み、それがAmigo Analyzerです。
今回は、核P-MODELのデビュー18周年(現行民法での「成人したテクノ」)を勝手に祝い、1stアルバム『ビストロン』を取り上げます。様々な手法で楽曲を聴き、全ての音要素を洗い出すとともに、気づいたことを語る、実験的なイベントです。

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/rockcafe/231081

以下、洗い出した音要素と簡単なコメント。


01 二重展望3

Song Construction

リズム:9 ベース:2 フレーズ:2 その他:2

Alarm|ステレオで鳴っている。音はミ。
電気琴|一般的な調律(A=440Hz)ではない。A=446Hzぐらいなので、いわゆるカラヤン・チューニング。
ユーワーイ|アンチ・ビストロンの「自由はいかが」の「由はい」説。
アチャー|元ネタ不明
Bass上|16分のウネウネ。ステレオ成分がある。
Bass下|アンチ・ビストロンパートでの間延びしたフレーズなど。
Snare|ビストロンとアンチ・ビストロンの切り替えに使われる。
Snare Marching|間奏の連打
Cymbal|ビストロンとアンチ・ビストロンの切り替えに使われる。
Kick(ビストロン・ドラム)|結構ローが出ている(30Hzまで)
Kick(アンチ・ビストロン・ドラム)|平均的なロー(60Hzあたり)
Hi-Hat(ビストロン・ドラム)|オープンハイハットみたいな音。
Hi-Hat(アンチ・ビストロン・ドラム)|クローズドハイハットの音。
Clap(アンチ・ビストロン・ドラム)|聞き取りづらいが、拍子の頭で鳴っている。ヒラサワらしくない。軽薄さを演出。
Noise(アンチ・ビストロン・ドラム)|金属的なノイズ音

02 Big Brother

Song Construction

リズム:7 ベース:2 フレーズ:7

Kick|本作で唯一、808風なKick。
Snare|808風。ラスサビは連打。
Cymbal|808風。ラスサビは連打。
Tom|808風。左→右にPAN。
Hi-Hat|808風。聴こえづらいが鳴っている。サビは16分連打チキチキでわかりやすい。
Noise|クラップ的なノイズ。Bメロのカカカーカカカーも同じ音と思われる。サビ・シンセソロの間は鳴っていない。
Noise 左|Bメロだけ登場する細かいノイズ。
Bass Oct|1オクターブをンベンベするフレーズ。
Bass Filter|Moog的うねりシンセベース。Bメロはフレーズ化。
メインフレーズ|低速再生すると1/16Tで高音ノイズが置かれているのが分かる。スペクトルで見ても不規則な断絶がある。非常に上から下まで帯域が出ており、スペクトルをZoomして見ていくとリング状の輪を描いているのが分かる。サイドに広がるリバーブ成分あり、メインフレーズの空間を確保。2回目のAメロからはオクターブ下でフレーズが登場。BメロではNoiseと一緒に鳴っている。
Aメロ裏|上述のメインフレーズとはまた異なる音がなっている。
左16分シンセ|めちゃくちゃ。フレーズがどうこうというよりは、この音が入っていることに意味がある。
ステレオ32分|1/32と1/32Tの組み合わせが上手い。非常に目立つフレーズだが、ステレオにすることで歌のマスキングを回避している。スペクトルで見ると非常に高域まで音が出ており、かつ輪を描くようなモジュレーションがかかっている。Bメロは途中から入ってくるが、ラスサビ前のみ最初から鳴っている。間奏の裏拍で入るところは田中靖美風。
サビ左|サビの左チャンネルにあるノイズ混じりのノコギリ波。
サビ右|右チャンネルでベースと同じフレーズを奏でる。ノイズ成分多し。
間奏シンセ|仮にフレーズなのだとしたらMIDIの限界。

03 アンチ・ビストロン

Song Construction

リズム:4 ベース:1 フレーズ:5 ギターソロ:1

Kick|いかにもクラブユースな120Hzあたりから30Hzまで急降下するキック。でもドンドンときて3泊目に裏に入るのがヒラサワっぽい。
Snare|最後のサビだけ連打が多くなる。
Hi-Hat|シンプルに高域を占めている(普通だが、ヒラサワではめずらしい)。
左右発信音|AメロとBメロのリズムトラックの隠し味。
Bass|フレーズとしては「何のひねりも無いベース」だが、音色的には非常に高速のLFOを効かせたノコギリ波である。スペクトルを見ると、微妙にうねっているのが分かる。1番終わりのブレイクは、このベースのLFO周波数を遅くして作っている?
メインリフ|細かいLFOによるノイズと、ノコギリ波っぽいポルタメントフレーズの組み合わせ。サイド成分のみ聴くとノイズがわかりやすい。ピッチにアナログシンセ的なゆらぎがある。サビでは同音色が別のシーケンスを奏でる。
対旋律シンセ|ノコギリ波のハイパス音。Bメロは一箇所だけ音が高い。ブレイクで現れる音は、サビの裏でもずっと鳴っている。コード的には「Am→Fm」であり、他のフレーズの「C→F」とぶつかることで不思議なコード感になっている。
Sine|基本的に左だが、Bメロは右にもディレイが入っている。
Noise|微妙に音程感のあるノイズ。2番から入ってくる。サイン波と連動している。
左ブレイク|ブレイクだけ登場する上昇フレーズ。
ギターソロ|パワーコードのバッキングのみステレオ。音楽をナメるとは何か? それは真面目にやっている人がいる事象を、外野からあげつらうことである。

04 崇めよ我はTVなり

Song Construction

リズム:7 ベース:3 フレーズ:5 その他:1

TV Noise|「ビストロン収録曲の外見」の通り。
Kick|最初は3つ打ち。その後は2拍目にアクセント。
Snare|3拍目にあるスネア(というよりノイズ)
Hi-Hat|最初からある16分。
Hi-Hat 2|スネアと同じタイミングで右チャンネルに鳴っている。
Open Hi-Hat|途中から入るオープンハイハット。
Tambarine|Open Hi-Hatと一緒に鳴っているタンバリン。 ギターソロ後の間奏を聴くと分かりやすい。
Timpani|本作では珍しい生楽器系の音。
Sine|イントロから曲中ずっと鳴っている、意外と低い音。
Bass Oct|オクターブの飛ぶ方のフレーズ。
Bass Low|オクターブの飛ばない方のフレーズ。ギターソロまえだけフィルターが開く。
Chord|ステレオで聴こえているノコギリ波っぽい音。 ギターソロ以降は刻みのフレーズが変わる。
右Noise|右チャンネルで鳴っている金属的なノイズ。ギターソロ以降はブザー的に鳴るようになる。
緊迫フレーズ|オクターブを飛ばしたポルタメントシンセ。Aメロの裏はSineと同じフレーズ。
間奏Low|低音のブーっという音。サイドにすると分かりやすい。
エンドSynth|最後だけ出てくる。 フレーズがBass Octと同じ。

05 巡航プシクラオン

Song Construction

リズム:6 ベース:1 フレーズ:7 その他:3

Kick|何のひねりもない4つ打ち。
Snare|2拍目にあるスネア。
Hi-Hat|16分で打っているクローズドな音。Bメロはパターンが違う。
Hi-Hat 2|裏打ちで入っているオープン混じりの音。
Cymbal|サイド成分あり。
Rev Cymbal|シンバルをリバースしたもの。
Bass|AメロまではSine波と同じパターン。フィルターウネウネ。Bメロはオクターブフレーズになる。
電子琴|ヨナ抜き。A=440Hzではなく、A=442Hzとなっている。一般的な琴のチューニングがA=442Hzであることの模倣と思われる。左右にディレイあり。間奏も受け持つ。
Sine|ヒラサワ楽曲に頻出のリズムパターン。アクセントの付け方がうまい。Bassと同時になる時は1オクターブ上。
左Oct|左チャンネルにあるオクターブフレーズ。Aメロは1オクターブ上がる。間奏は16分刻み。Cメロはオクターブ。
右スペクトラム|Bメロ右チャンネル。オクターブの飛び。3番だけAメロもある。0.5倍速で聴くと細かい三連付が入っている事がわかる。
Sine 2|2回目のAメロだけ現れる。電子琴のフレーズに似ている。
LFO|Cメロ。左右にパンあり。
右補助|間奏の後半だけ登場する電子琴の補助フレーズ
読経|「Sign」の使いまわし?
コーラス|ヒラサワにしては珍しい「バカ」ではないコーラス。フレーズは不思議。
民謡サンプル|ビストロンに出てくる「スケルトン・コースト公園」の民謡パートと同一音源?

06 暗黒πドゥアイ

Song Construction

リズム:6 ベース:1 フレーズ:5

Kick|低い4つ打ちのキックと、少し高いキックの組み合わせ。弱符を使っているのは珍しい?
Snare|時々入るスネア。
Hi-Hat|16分連打。
Cymbal|サイド成分あり
金属音|アウトロでも聴こえる金属音。πドゥアイパート以外はずっと鳴っている。
Noise|イントロの途中から入ってくるクルクル回る音とホワイトノイズ。πドゥアイの裏が分かりやすい。
Bass|16分の単純な刻みだが、Bメロなど曲のコード感に一役。1回目のπドゥアイはミュートだが、2回目のπドゥアイはある。
メインリフ|リバーブあり(サイド成分)。相変わらずオクターブ。サビにコピペミスと思われる頭の欠けあり。サビはコード進行に関係なくAmで押す。不協和音だが不思議な感じ。
刻みコード|ステレオの刻み。サイドを0.5倍速で聴くと3連符多用が分かる。サビでは16分で畳み掛ける。
跳ねるシーケンス|オクターブのすごいポルタメントシンセ。細かく聴くと32分音符や32分三連符が使われている。
ストリングス|コード感を補足するストリングス。2回目のAメロ以降は裏リフ。
右シンセ|ノイジーで音階を聴き取りづらい16分刻みフレーズ。間奏後のソロで聴くと分かりやすい。

07 パラ・ユニフス

Song Construction

リズム:8 ベース:2 フレーズ:6 その他:3

Kick|基本の4つ打ち。
Kick Loud|ヒラサワ史上1番デカいキック。より高音から落ち、より長いディケイ。
Snare|イントロやAメロで裏に入る軽いスネア。2ビート。
Snare Loud|Kick Loudと一緒に現れるでかいスネア。
Snare Noise|Loud陣の裏で刻んでいるノイズっぽい音。
Hi-Hat|Aメロまでの16分。808っぽい音。
Hi-Hat 2|Bメロ以降の若干低い音。1拍目と3拍目の連打。
Cymbal|モノラルのみ。
Bass Oct|細かい三連符はホールトーン。サイド成分あり。Bメロのみ、オクターブ上の成分がある。
Bass Mid|イントロと間奏のフレーズ。サイド成分がない。
メインリフ|A=440Hzではなく、若干上ずらせることで緊張感を出す。ディレイあり。サイドにリバーブあり。細かい三連符はホールトーン。
Stereoコード|イントロの途中から入ってくる、ステレオのコードシンセ。Bメロは細かく動く。サビはAm→G→B→Dm
右Ring|右チャンネルのリング変調された金属的な音。
左Pad|サビから鳴っている左チャンネルのスイープ系パッド。
発信音|サビから鳴っている発信音。声加工パートの前半を聴くと分かりやすい。
ブレイクBass|Aメロ前の左右チャンネルで鳴る音。
ブレイクNoise|サビ前のノイズ。1回目は右から左へ。2回目は左から右へパンする。
声加工|「ビストロン収録曲の概要」参照。
コーラス|サビのコーラス。滅茶苦茶気持ち悪いフレーズ。

08 Space hook

Song Construction

リズム:7 ベース:1 フレーズ:6 その他:1

Kick|4つ打ちのKIck。
Snare 909|一拍目を強調する平沢らしいスネア。最後のサビはフレーズが変わる。ギターソロ中は鳴っていない。
Snare 808|三拍目以降に入るスネア。最初のBメロの前だけ、変な連符になっている。ギターソロ中は鳴っていない。
Close Hi-Hat|16分を刻んでいる。
Open Hi-Hat|ノイジーなオープンハイハット。曲中ほぼずっと鳴っている。
Open Hi-Hat 909|ブレイクのところだけ鳴る909系のオープンハイハット。
Cymbal|基本はモノラルだが、ギターソロの2拍目だけ左右パンあり。
Bass|コードの役割も受け持つアルペジオ的フレーズ。ギター・ソロ中はオクターブのンベンベになる。
Stereo Synth|イントロも受け持つステレオフレーズ。サビからAメロは16分でコードを支え、Bメロはベースと同じアルペジオ。
右Sine|ポルタメントの聴いた、ENOLAなんかにもあった音。相変わらずのオクターブ。ギター・ソロ裏では、上昇Sineと対になる感じで登場する。
左Noise|左チャンネルにあるポコポコしたノイズ。音程がある。最初のAメロだけ一時消える。Bメロ以外のフレーズはベースと同じ。
上昇Sine|スペクトルで見ると200Hzから2kHzぐらいまで上昇する。リバーブあり。ギターソロ裏でも微妙に上昇している。
5th Synth|ギターソロ前だけ登場する5度シンセ。
Chorus|ギターソロ中だけ登場する電子的なコーラス隊。
ギターソロ|スペース・シンフォニー。

09 ビストロン

Song Construction

リズム:6 ベース:2 フレーズ:3 その他:3

Kick|1音だけ低い音が入っている。サビは4つ打ち。
Clap|次のパートへの切り替えに使われる。 2番からは低めの音でリズム構成音の一部になる。
Snare|ブレイクの連打。2番からはリズム構成音の一つに。サビは16分連打。
右Hi-Hat|右チャンネルのハイハット。サビ裏のみ無い。
左Noise|左チャンネルにある、ハイハットと対になるノイズ。
Bass|テクノの大御所と言うにふさわしいフレーズ。オクターブ。
メインリフ|テクノの大御所と言うにふさわしいフレーズ。オクターブ。サビの音の重なり。
Pad|イントロから空間を埋めているアンビエントな音。
Strings|イントロの途中から加わるストリングス。
民謡サンプル|「ビストロン収録曲の外見」のとおり。
SE Sine|左右のチャンネルで鳴る、カモメっぽいSE。
SE 上昇|左右のチャンネルで鳴る、上昇音SE。
サビKick|途中までは3拍目、途中から4拍目の裏で鳴る。
サビHi-Hat|サビだけ鳴っているオープンHi-Hat
サビBass|テクノの大御所と言うにふさわしいフレーズ。

10 アンチモネシア

Song Construction

リズム:2 ベース:1 フレーズ:4 その他:1

Noise|広場で2から続くノイズリズム。16分2つめに来る一番低い音は100Hz以下で、実は低域を弱く押している。
KIck|デザートキック。
Snare|食後のお茶スネア。
Bass|音程感の微妙なもわぁ〜んベース。
Sweep|周期的なLFOによるフィルター開閉スウィープ。
16th Chord|フィルター開け閉めあり。
Chorus|クワイヤ系の電子コーラス。
Crystal|間奏を占めるシンセ。2回目のAメロから鳴っている。オクターブ移動。


イベントの様子

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