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2023年のチェスプロブレム

本年も自作のうちの一部をまとめておくこととします。3手セルフメイト、3手ヘルプセルフメイト、3手ヘルプメイト、7手プルーフゲーム、2手メイト(フェアリー)です。時代の流れに逆らって(?)短手数のものが多いですが、個人的な趣味としては短手数のほうが好きなのもありこの選択としました。

1. The Problemist, 2023/5

S#3 (10+10)

3手セルフメイトです。黒が白をメイトする方法は単純で、R+Bのバッテリーを使います。白の最終手がe3-h6の斜線への着手であれば、黒Bに取り返させてメイトになりますが、それではどこに着手するのか?

Solution:
1.Sf5! (2.Qxg6+ Kd5 3.Sxe3+ Bxe3#)
1…cxd4 2.Re7+ Kd5 3. Sxd4+ Bxg5#
1…Kd5 2.Se7+ Ke4/Ke6 3.Qf4+/Qe3+ Bxf4/Bxe3#
1…gxf5 2.Sc7+ Kd6 3.Qh6+ Bxh6#

正解は黒の手に応じて、e3からh6の4か所にQを捨てる手です。ちなみにこの初手は非常に見えにくかったようです(1.Rf5? Sxc6!というtryがあるのでさらに見えにくくなっている)。
多くの作家の方より褒められた作品ですが心残りは1…Kd5に2通りの変化があることで、Bxf4#とBxe3#の解を黒の初手から切り分けられればさらに良かったと思います。

2. Problem Paradise, 2023/3

HS#3 (6+12)
b) ROb8->b7
b2, g5: Lion c6: Nightrider b8: Rose

3手ヘルプセルフメイト。3種類のフェアリー駒が使われています。

Solution:
a) 1.LId8 Bf4 2.LIh8 Bxc6 3.Ba6+ ROf8#
b) 1.LIg2 Bg7 2.LId5 Bxc8 3.Nxd4+ ROe4#

見た目は難解ですが、それほど難しいことをやっているわけではありません。アイディアの源泉は、RoseをOrthogonal/Diagonalのラインに沿ってピンすると、Roseの着地地点がライン上で限定される(=Pelle moveとなる)ため、セルフメイトに利用できるということです。
このアイディアを活用した作品として、Michel Caillaudの2021年のTzuica Tourneyの作品がありますが、その作品はDiagonalのラインのみを利用していました。
さて、Roseをラインに沿ってピンしたとき、ピンしている駒がRoseを取れるのでは面白くありません。そこで利用したのがChinese Pieceの二段重ねです。
つまり、黒K-黒Rose-白Chinese①-白Chinese②というラインで駒を並べると(この状態で白Chinese①でチェックがかかっています)、黒RoseのRandom Moveが白Chinese②でのチェックになるため不可能であり、黒Roseは白Chinese①と白Chinese②の中間に着地するしかなくなります。そして、その位置はどちらのChinese PieceでもRoseを取れません。

おまけのようにPseudo Zilahiも入っていい感じです。一方でテーマ駒(Rose)が動くTwinであったり、Lionの跳躍台としてしか使われていない駒が多いのが気になります。

3. RIFACE Composing Tourney, 1st-2nd HM, 2023/6

フランスのチェスプロブレムの会合RIFACEは毎年Quick Composing Tourneyを開催しており、会合参加者に限らず投稿することができます。

H#3 (2 sols.) (3+8)

今年のヘルプメイト部門のテーマは「同じ駒が1つの解ではClose self-blockし、もう1つの解ではdistant self-blockするH#2-3」というものでした。

Solution:
1.g1=R Sxe4 2.Rg4 Sf6 3.Kg3 Sh5#
1.g1=B Sc4 2.Bd4 Sb6 3.Ke3 Sd5#

テーマ駒は1つだけ(Pg2)ですが、別の種類の駒にプロモーションした後セルフブロックのために移動します。ジャッジ(Michel Caillaus & Maryan Kerhuel)評は「このプロブレムがPrixとならなかった理由は白黒のInterplayがほとんどないためである」ということで、まことにおっしゃる通りです。というのは作るときに白と黒の手を別々に考えていたため、Interplayがうまくはまらなかったのです。

4. 6th Murfatlar Tourney, Commendation, 2023/9

PG 7.0 (2 sols.)
FuddledMen

条件はFuddledMenです。これは「自分の手番で動かした駒を次の手番で動かせない(これはチェックの後仮想的にキングを取る手にも適用される)」という条件です。
この条件のもと、黒の7手目の後の局面が図の局面になる手順を求めるという設定です。

Solution:
I) 1.e4 e6 2.Bb5 Bc5 3.Sf3 Ke7 4.Bc6 Bxf2 5.Kxf2 dxc6 6.Rf1 Qd4 7.Kg1 Kd6+
II) 1.e3 e6 2.Bb5 Bc5 3.Sf3 Ke7 4.Bc6 Bxe3 5.fxe3 dxc6 6.O-O Qd4 7.e4 Kd6+

キャスリングする解と偽キャスリングする解の2解。2解でかなり手順が似てしまったのが気になるところです。

5. Conflictio, 2023/11

#2 (8+9)
SeriesCapture

Series Captureを用いた2手メイトです。Series Captureは、今年のSake Tourneyで導入されたフェアリー条件で、「駒取りを行った場合、その駒はもう一度動ける(これは再帰的に適用される)」という条件です。チェックは最後の手でしかかけられず、この条件はチェックの意味を変えません(つまり、Series Capture特有の手によってのみチェックがかかる場合はチェックと考えません)。

Solution:
1.Sd7! (2.Sxe5-c4#)
1...R~(Rf5) 2.Sxe7xf5#
1...Re4! 2.Sxc5xe4xf2-d1#
1...Re6! 2.Sxc5xe6xf4-g2 #
1...Rd5! 2.Qxd5-d3 #
1...exd6-d5 2.Qxd5-d3 #

さて、SeriesCaptureからは様々な新しいモチーフが生まれます。
1.Sd7!はe5の黒Rを取ってメイトにする意味の手ですが、黒はこの黒Rを動かすことがディフェンスになります(つまり黒Rのrandom moveによりThreatがrefuteされます)。
しかし、黒Rが動くとe8-e3のラインが空くため、白に2.Sxe7xf5#を許します(primary error)。
黒はこれを許さないため、correction moveを指します(1…Re6!/Re4!/Rd5!)。しかしながら、それらが全て「純粋な」arrival effectを持ち、駒がその場所に存在するという理由だけにより白の変化手順を許します。
いちおう、見方によっては1…Rd5!? (f3への効きを遮断するがd5に置くとQに取られる)をさらにcorrectionしたものが1…Re4!!? (f3への効きを遮断し、さらにQに取られる位置に置くことも避ける)であるという見方もできると思いますが、その見方は私は採りません。

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