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名作を訪ねる(10)


第10回

第10回はプルーフゲームです。日本でチェスに関係される方であればぜひ知っておきたい作品です。

Satoshi Hashimoto, 2nd Prize Problemesis, 1999

PG12.0 (15+14)

手数を数えてみると、黒は(キャスリングしたと仮定して)10手が見えています。また、白のdポーンがdxQe5(e4,e3)-exfとしてf6に到達するのは黒の手数が足りないので、Pf6はもともとgポーンであったこともわかります。
そのようなことを考えながら解答を進めると、以下の解に到達します。











1.d4 Sc6 2.d5 Sa5 3.d6 c6 4.Qd5 Qc7 5.dxc7 d6 6.Qh5 Be6 7.c8=B Bb3 8.Bh3! b6 9.g4 O-O-O 10.g5+ f5 11.gxf6e.p.+ Kb7 12.Bc8+ Rxc8

詳しい方であればValladao Task (キャスリング、プロモーション、アンパッサンをすべて含めるという課題)という言葉をご存知かもしれません。しかし、橋本さんが著書(64 Proof Games)に書かれているように、本作のテーマはプロモーション駒がプロモーションしたマスを離れ、また元のマスに戻って(ここまでをDonati Themeといいます)さらに取られるという一連の手順内に駒取りを行わないということであるとのことです。
この表現のためにキャスリングが利用され、手順内に自然にアンパッサンが入れられるため、結果としてValladao Taskが達成されることとなっています。
(ビショップの移動位置はh3-c8のラインを一度マスクするためにh3に決まります。また、アンパッサンを強制するための仕組みは一般的にチェックが利用されますが、マスクしたラインの再オープンがチェックになるので自然にアンパッサンが組み込まれます。)
すべてが一部の隙も無く組み合わされ、12手の中にきわめて凝縮された世界が広がっています。

なお、余談ですがこの年のProblemesisの1st Prize (Caillaud)も恐るべき作品です。

次回予告

次回はフェアリーの予定です。

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