大学入学共通テストの2020年度からの実施延期と大学入試センター試験の継続を求める緊急声明

 「入試改革を考える会」では,英語民間試験導入の延期決定に続き,記述式問題導入の中止,及び,民間試験導入の凍結を求めて,11月15日に院内集会を開きます。また,同時に萩生田光一文部科学大臣に「大学入学共通テストの2020年度からの実施延期と大学入試センター試験の継続を求める緊急声明文」を提出します。以下に示した声明文の趣旨にご賛同いただける個人,団体を募集いたします。ご賛同いただける方はこのフォーマットにご記入のうえ,お送りください。なお,属性の選択肢は最も近いものを1つ選んでください。
ご賛同いただいた方には,自動的に確認のメールが返信されます。
なお,ご賛同いただいた個人(氏名,所属),団体(団体名のみ)は,声明文を連名で発表させていただきます。

以下が声明文です。

 2019年11月1日(金)に、英語民間試験の2020年度実施「見送り」が萩生田文部科学大臣より発表されました。英語民間試験については異なる民間試験の比較が困難であること、障がい等のある受験生への配慮が不十分であること、新たな受検料や試験会場までの交通費がかかることで経済格差や地域格差を助長する危険性が高いにもかかわらず、それらへの対策が不十分であることなど、さまざまな問題があり、準備の遅れもあって学校現場を混乱させていました。問題の深刻さから考えれば、11月1日(金)の実施「見送り」は「遅すぎる」決定でしたが、これ以上の混乱を回避した決定として歓迎します。
  しかし、大学入学共通テストのなかで英語民間試験は「ごく一部」の問題に過ぎません。特に国語・数学の記述式問題出題については深刻な問題点を指摘することができます。
  50万人以上もの受験生が参加する大学入学共通テストで、記述式問題を採点することの困難ははかり知れません。この記述式問題の採点を「学力評価研究機構」(ベネッセコーポレーションのグループ会社)が行うことが、すでに決まっています。採点スタッフの人数は1万人程度必要と報道されていますが、新共通テスト実施直後の1月中旬から後半にかけて、国語と数学の記述式問題を採点できる能力のある人を実際に集めることができるのでしょうか。  これまでの大学入試では、通常は大学教員による採点が行われてきました。大学入学共通テストにおいて、十分に信頼することのできない採点者によって採点が行われれば、大学入試の根幹が揺らぐことになります。また、大学入学共通テストは受験生がとても多いため、莫大な量の答案を短期間に採点することが強いられます。正確かつ公平な採点をすることはとても困難です。
  何よりも重大なのは、民間企業が集める採点者の質や採点の質を公的にチェックする仕組みが存在しないことです。英語民間試験においては文部科学省が各試験団体に指示する権限がなかったことが運営上の混乱を生みましたが、大学入学共通テストの採点を行う民間企業との関係についても、同様の問題点を指摘することができます。また、採点業務を民間企業に委託することによる問題漏洩や情報の目的外使用も懸念されます。
  すでに現在、多くの大学の個別試験で記述式問題は出題されています。受験生の少ない個別試験では採点を正確かつ公平に行うことも、より容易です。大学入学共通テストで記述式問題を出題する必要性はありません。
  記述式問題は試験実施後に行う自己採点を正確に行うことが難しいという問題もあります。プレテストでは国語の自己採点と採点結果の一致率が7割程度にとどまっていました。本番で受験生は、採点結果が通知される前に出願する大学を決めなければなりません。実際の得点と自己採点の不一致は、受験する大学の選択や合否の予測に甚大な悪影響を及ぼすことになり、深刻な問題です。また、試験終了後の成績通知(得点開示)によって、さまざまな混乱が起こる可能性も危惧されます。
  これらの制度的問題点を十分に検討することなく、大学入学共通テストの実施をこのまま強行突破すれば、多くの受験生が公平・公正な入試を受けられなくなる可能性が極めて高いと言えます。公平・公正な入試を受けられず、受験生が犠牲となる事態だけは絶対に避けなければなりません。
  受験生に重大な被害を与えないために、ここは緊急避難的措置が必要だと私たちは考えます。英語民間試験だけでなく、大学入学共通テスト全体について2020年度からの実施を延期して、当面は現在の大学入試センター試験を継続することを求めます。「スケジュールありき」で進めてきた大学入学共通テストの実施をここで一旦立ち止まり、入試制度改革について萩生田光一文部科学大臣に再検討することを強く求めます。

呼びかけ人:
大内裕和(「入試改革を考える会」代表・中京大学教授・教育社会学)
中村高康(「入試改革を考える会」・東京大学教授・教育社会学)
吉田弘幸(「入試改革を考える会」・予備校講師・物理)
紅野謙介(日本大学教授・日本文学)
阿部公彦(東京大学教授・英文学)

新たに数学の研究者の方にも「呼びかけ人」として参加して戴けることにことになりました。(2019/11/09)
齋藤幸子(北海道教育大学准教授・幾何学)
嘉田勝(大阪府立大学准教授・数学)

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私達は,2020年度から実施される新共通テストの問題点を指摘し,準備が整うまでの間は新テスト実施の延期を求めています。そのための情報発信を行っていきます。同じ目的で活動している「“入試改革”を考える予備校講師の会」と共同運営します。
コメント (2)
このような動きがあるのですね。知りませんでしたので、読めてよかったです。
文科省は問題点の解決策を明瞭に提示し皆が納得する形で進めてほしい。そうでなければ愚策と言える。多くの学生が犠牲にならない事を願う。
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