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バラバラのパレードは交わってーRainDropsと楓と美兎

にじFesが終わってからもう5日も経つ。

私はというと、未だに余韻から抜け出せないでいる。
3日間のステージどれも印象に残っているが、その中でも目に焼きついて離れないのが最終日のレーベルステージだ。

「Fesだからソロライブは無いにしても、RainDropsなら単独ステージも出来るだろうにここにこの3組がまとめられているのはちょっと不思議だな」と思いながらチケットを購入したのだが、終わってみれば本当にこの組み合わせで良かった、と思わされるものだった。

にじさんじらしさ」とは何だろうか。
これに関しては本当に人それぞれの想いがあるだろうけれども,
kz氏が二つの周年記念曲において「向かう先はそれぞれ」とか「バラバラのパレード」という言葉を入れているのは、やはりぴったりだなと思う。

一人一人が違った目標を抱きながら、同じ箱にいるライバー同士好きなように触れ合って(たまに本気で支え合って)それがいつの間にか「らしさ」を生み出す。
私にとってのにじさんじもそんなイメージだし、その認識は今でも変わってはいない。

だが私は、「それぞれ勝手に歩こうが、隣で歩いてる人に目を奪われることはあるよね」という至極当然の事をこのステージを見るまで失念していた。

RainDrops

5人のみの参加、という絶対的に不完全な状態でステージに臨んだ彼らの歌は、アルバムの時に比べても更にマッチしていた。
1人として似たような性質を持たない特徴的な声を持ったメンバーのRainDropsだが、間違いなくこのメンバーで「正解」だったということを証明してくれるステージだったと思う(個人的にはえるさんのハーモニーが誰と組んでも非常に綺麗に響いていたのが印象的だった)。
全曲オリジナルソングではなくカバーソングもあったのは、オリジナルはなるべく6人揃って見せたいというのもあったかもしれないが、選曲も非常に良かった。力一と明那の「愛はおしゃれじゃない」はお互いの全く違う引き出しが絡み合っていてとても印象に残っている。

そして、「オントロジー」の呼びかけ。
歌詞を改変してまで創られたあの瞬間は、きっと5人が彼女だけのために用意したものである筈だ。
しかし、彼らはそれがリスナーにとっても「刺さる」ものになるだろうことをきっと理解していた。
このステージが完成度の高いものであればあるほど、6人でのステージが見たい気持ちが昂ってくる。そのことを誰よりも分かっていた彼らは、自分たちの成長を見せつけた後にあの言葉を持ってくることで、それが決して飾りでは無く彼らの本心であることを証明してくれた。

月ノ美兎

40分ライブを1人でやること自体大きな挑戦だと思ったのに、ダンスに加えて生歌にまで挑戦する委員長がどれほど緊張していただろうか、想像もつかない。しかし、彼女はやり切った。ヘトヘトになりながら、様々な声色を使い分けて見事に40分「アイドル」を演じ切った。

2月、「Vtuber月ノ美兎」から離れる時間を作った委員長。私自身その理由には納得していたし、彼女がこれからどんな選択をしようと応援していく気持ちでいたのは揺るぎないが、それでもどこか寂しさを感じる部分があった。
全部吹き飛んだ。あんなものを見せられたら、「バーチャルアイドル」として確実に進化していく姿を見せつけられたら、もう楽しみしか沸かなくなった。

そして、彼女はアイドルであるのと同時に、自己プロデュースのプロフェッショナルであることも改めて実感させられた。
BANG!」については私は元ネタを知らなかったのだが、以前記念枠で歌ってた時点で委員長にピッタリと感じていた「冒険でしょでしょ?」はダンス付きで更に魅力的になり、「絶望タクシー」と「HANAJI」に関しては、委員長の特徴的な声質やサブカル気質、そしてでろーんも言っていたようににじさんじであることを最大限に活かした演出で、やはり彼女にしか出来ないライブだった。


樋口楓

圧巻のパフォーマンスだった。
響鳴」から「ファンメドレー」では10分以上休憩なしでの歌唱だったが、一切ぶれることがない一方で声質やノリが曲によって千差万別に変わる様は、まさしくアーティストだった。
個人的には「Q」のシャウトが印象的に残っている。叫び声、というのは彼女の普段のライバー活動においても持ち味の一つだとは思うのだが、このライブのシャウトはそれとはまた異質の吐き捨てるような、痛切な響きを持っていた。
様々なオリジナルソングがある中で、ライブの締めをV西をイメージした「Victory West!」で締める彼女の精神性にも心打たれた。委員長とはまた違った形で、でろーんも「にじさんじのライブであること」を意識していたことを感じさせられた。

改めてアーカイブを見返して、でろーんのライブでの動きで一番好きなのは腕の動きだと感じる。何かを掴もうとして掴めなかったり、ピンと突き刺すような指の形だったり。
手の動きだけじゃなく、その指先にどんな意味を持たせるか?という観点から見て、彼女のライブパフォーマンスは3日間通してもトップクラスのものだったと思う。「アンサーソング」冒頭のカーテンのシーンは非常に合わせるのに苦労していたと雑談で話していたが、動画そのままの動きで何度見返しても痺れてしまう。

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この3つのステージ、でろーんはMCで「レーベル毎に別れてどうなるかと思ったけれど、めちゃくちゃいい方向に進んでいると思う」と話していた。

本当にそうだと思う。
各々が自分の武器を最大限に発揮し、自分にしか作れないライブを作る。
バラバラになって自分の道を進んでいるからこそ、成立したステージがそこにはあった


バラバラのパレード


じゃあ完全にバラバラだったかというと、そうでもなくて。


月ノ美兎
(緊張が無くなった、という話題について)「合いの手とかでマジでライバーがいたからだと思うわ。だってもうリハ終わりからみんな『美兎さん凄いっすよ!』みたいなこと凄い言ってくれて。楓ちゃんとかも「本当凄いわ」みたいなん言ってくれたし、三枝さんとかめっちゃテンション高く褒めてくれたから。割とそういうの凄い励みになりましたからね。友情パワーありますよマジで。綺麗事でなくマジであると思った。あ、緑仙さんとかめっちゃ褒めてくれたわ。「美兎さんめっちゃ歌上手くなりましたね!」みたいな」
樋口楓
「レーベルステージも凄く刺激をもらいました。目指してるものとかは全然別ベクトルだって頭では分かっているんだけど、こういざ目の前でみんなが動いてる姿を見ると、やっぱり自分全然ダメだなって思って。どうしたらいいんだろうってなったし、私は果たしてこの方向性で良かったんだろうかとも思いました。みんなのパフォーマンスを見て。
もし私がグループでデビューしてたらこういう感じになってたのかなとか、もし声優アイドルみたいな路線でアイドル的な感じの歌を歌っていたらこういう感じになってたのかなとか、色々考えました」


緑仙
「RainDropsステージに関しては、それこそでろーんさんとね、美兎ちゃんと一緒にステージに出たんですけど、マジで頑張ろうって思った。(中略)RainDrops5人ともみんなしっかり練習して、よし、って本番迎えて出来たと思った。正直めちゃめちゃ出来たと思った。(中略)
けど、やっぱりまだ足りないなって思いました。他の先輩方のステージを、あれを見させられちゃうと、いやー、もっと頑張ろうって思いましたね。」

初めての生歌ソロライブで緊張していた委員長がでろーんやRainDropsのメンバーの存在に助けられていた一方で、でろーんは他のステージを見て自分の活動が良かったのか振り返って悩み、緑仙は「もっと自分たちは頑張らないと」という刺激を受けて。
社長とでろーんも前夜祭で勝手にお互い刺激を受けあっていたとか、とにかくにじFesではこういった相互作用がたくさんあった。

お互いが全く別の方向性で頑張っているからこそ、その道が出会った時にお互いに刺激を受けて高め合っていく。
これが出来ることが「にじさんじらしさ」の一つなんだ、と改めて私はこのにじFesを通して実感させられた。

そして、それぞれが別の道で頑張っているからこそ。
初期衣装で無いメンバーが歌う「Wonder NeverLand」に、どうしようもない程の熱量を感じてしまった。

バラバラのパレードは、もっともっと交わって賑やかになっていく。そう確信させるほど、素晴らしいステージだった。


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