見出し画像

気になっちゃう…【人類学者の日常】

人類学という学問は一般の人から興味を持ってもらいやすいため、ニュースやブログでよく取り上げられています。人類学はメディアに取り上げられるのは嬉しい反面、それを専門に勉強している身としては、間違った話を聞くと気になっちゃうのも事実です。

例えば…

・ヒトはたった1人のアフリカ人女性から始まったんだよね?「ミトコンドリア・イブ」って聞いたことあるし。
(うーん、違うんだなー。Wikipediaにもその誤解について注意書きがありますよ

・私達の祖先は150万年くらい前にアフリカから出てきて、そして世界に広まって各地でホモ・サピエンスに進化したんでしょう?
(えーと、それは多地域進化説といいまして、現在では否定されているのです。我々ホモ・サピエンスはアフリカで誕生し、10万年ぐらい前に各地に広がっていったということが、現在の通説でございます)

・日本人のDNAには米食文化が刻み込まれている、云々。
(ジャパニーズジョークですよね…?)

これらは私が実際に聞いた、誤った知識の例です。文系理系問わずこういうことはままあります。誰かに直接そう話された時は、一応訂正するようにしています。まぁ皆さん忙しいから、うろ覚えだったり間違えたりするのは仕方ないです。私もきっと違う分野のことに関して、同じことをしているのだろうなと思います。

でもやはり、何かを人に伝える時は、それが本当に正しい知識なのか、念には念を入れて調べる必要があります。誰かと雑談くらいならまだいいですが、人前で話す時やブログで書く時は、特に注意が必要です。以前、とあるトークイベントに参加したら、人類学の誤った知識について堂々と披露されていたことがありました。その時私は誤りを指摘しなかったのですが、今になってとても後悔しています。それを指摘しなければ、本人もそれを聞いている人達も気がつかないし、間違った知識が広がる元にもなってしまうのです。その後はしばらく心のざわつきが消えませんでした。この心境を例えるなら、まるで一度使ったスプーンでジャムを掬うような、居心地の悪い感覚…(想像するだけで恐ろしいですね)。

「気になっちゃう…」のは仕方がないので、間違っていることを聞いたらきちんと指摘しようと決意した、夏の夜なのでした。

(執筆者:mona)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?