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おひげの人が多いのは
あんそろぽろじすとの読者のうち、どのぐらいが男性で、どのぐらいが女性なのでしょうか?(※1)こんなことを考えたのは、今日紹介する論文が「ひげ」に関するものだからです。男性の読者の皆さんは、毎朝ひげをそっていらっしゃいますか?ちなみにtiancunはそっています。ひげが生える分を将来の毛髪にまわしてくれればいいのに、とか思いますよね。
ひげというのも不思議なもので、男性にしか生えません。ある集団、たとえば日本では、ひげを生やしていることが「社会的に好ましくない」と思われることもあります。しかし別の集団では、ひげを生やしていることは男性らしさのシンボルであり、成人男性がひげを伸ばしていないことが、むしろ奇異に映ることもあります。また、ひげの意味は空間的にだけでなく、時間的にも変化します。たとえば日本でも、戦国武将なんかはひげを生やしていましたよね。また、以前紹介した研究では、ひげを見る頻度が少ないほど、ひげに魅力を感じるのでした。ひげの有無は異性から魅力的に映るかどうかにも影響しているようです。なかなか複雑ですね。
よく考えてみると不思議ではないですか?どうしてこんなにも、ひげの役割、意味が変動するのでしょうか?いったい、どんな要因が、集団中のひげを生やした人の割合に影響しているのでしょうか?
ひげの多様性
今日紹介する研究(※2)は、そんな「なぜひげを生やしている人の割合は多様なのか?」という謎に迫ろうとしたものです。まず、著者らは、オンラインの実験で、各国の女性のひげへの好みを調べました。実験はオンラインで行われ、87カ国から3,720人の女性が参加しました。実験の参加者(回答者)は20人分の顔を見せられます。顔が二つ同時に表示されるのですが、同じ人の、ひげをきれいにそった状態の写真と、最後にひげをそってから10日後の写真です。回答者は、どちらの顔が魅力的かを答えさせられます。
沢山の国の女性が参加してくれたので、「どのような経済・社会状況にある国の人がひげを好むのか」を調べることができます。さまざまな要因を比較した結果、女性のひげへの好みは、国民所得が低い国ほど強い傾向にあることがわかりました。
さらに著者らは、Facebookのプロフィール画像を大量に調べることで、さまざまな都市のひげを生やした男性の割合を計算しました(※3)。こうしてわかったひげ男性の割合と、都市のさまざまな特徴との関係を調べた結果、ひげを生やした男性が多いのは、人口が多い都市、女性のひげへの好みが強い国に属している都市、住民の寿命の長い都市でした。
ひげダイナミクス
以前紹介した実験では、ひげを見せる頻度が少ないほど、ひげに魅力を感じるのでした。もちろん、以前の研究と、今回の研究が意味していることの整合性を、丁寧に検討していく必要はあるのですが、こうした大規模な調査を長期間続けていけば、もしかすると、女性のひげへの好みと、ひげを生やした男性の割合が、増えたり減ったりする様子を観察できるかもしれません。
(執筆者:tiancun)
※1
本記事、さらに紹介している論文でも、「男性」を生物学的な意味で使用しています。
※2
Dixson, B. J. W., Rantala, M. J., Melo, F., Brooks, R. C. (in press) Beards and big city: Displays of masculinity may be amplified under crowded conditions. Evolution and Human Behavior. doi: 10.1016/j-evolhumbehav.2016.10.009
※3
女性の好みの場合は国を単位としていますが、ひげ男性の割合を調べる場合は都市を使っています。解析に使用した都市は、女性の好みを調べるために使った国(87カ国)に含まれている37カ国の大都市です。
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