メモの魔力

言葉

「本当、口ばっかだよね」

同棲している彼女に言われた言葉。心臓にデコピンをくらったかのように、意表をつかれて「ドキッ」とした。読書で得た知識を興奮ぎみに語る僕に、彼女はこう続ける。

「で?」

彼女は現実主義者だ。言葉より行動、行動より結果。そして「言葉」を大切にしている。他人が語る言葉でも、自分の言葉にしないと絶対に口にしない。本が嫌いで、自分に絶対の自信を持っている。わがままな部分はあるけれど、頭が切れとても賢く、周りからの信頼も厚い。

反対に、僕は本が大好きである。情報を取りいれる努力が好きで、成長したいと願っている。だからこそ本を読む。「読書」とは僕の中で絶対に外せないツール。そんな僕に対して

「成長成長って言ってる時点で、成長できてないから」

と一刀両断。「グハァッ」と自尊心を切りつけられる。彼女にとって僕の言葉は「浮ついた言葉」にしか聞こえない。本を読んで「知ったつもり」になっている僕がイライラするらしい。

「できないことを語って、恥ずかしくないの?」

彼女と出会い考え方が変わった。自分を薄っぺらい人間だと自覚するようになったから。「これがいいらしい」「これが凄いんだって」「これやってみる」と自身の約束さえ守れないことを、恥と知ることもできた。

僕と彼女では、言葉の重みが違う。

僕は何でも言葉にし、彼女は言葉にしない。
僕の言葉は安っぽく、彼女の言葉は洗練されている。
僕の言葉は軽々しく、彼女の言葉は重い。

僕は、「知ってる言葉」を
彼女は「自分の言葉」を話す。

僕も含め、多くの人は「偉人の格言」「成功者の名言」を語りがちだけど、彼女の前では言わない方がいい。なぜなら「で?何をしたの?」って言われてしまうからだ。「ドキッ」と核心をつかれてしまう。

「言葉はいいから、結果を示しな」

「はい」

Twitterには「#今日の積み上げ」という言葉がある。今日一日努力したか、やり遂げたか、築きあげたか。簡単に言えば「目標に向かって、今日進んだ距離」を皆んなと共有したり、モチベを高め合う言葉。彼女は言う。

「言う必要ないでしょ」

彼女は基礎の塊。「積み上げ」は当たり前で、最低条件にすぎない。他人に言う必要はないし、他人に影響される時点で「アウトでしょ」と考える人。誇示することが嫌いで、されると「馬鹿じゃないの」と口にする。

僕は最近つくづく思う。彼女は本物だ。

わがままなのに、人の気持ちを掴むのがうまい。自己中なのに、誰よりも全体を見ている。彼女が発する言葉は、本質を捉えていることばかり。そんな彼女と住んでいると

「ほんと核心をつくよね」

が僕の口癖になった。少しずつ彼女色に染まってきている。スッカラカンの中身に変わりはないが、考え方に変化が見られるようになった。

本を何冊読んだかなんて、どうでもいいから
「結果」を教えて。
あれこれ手をつけるんじゃなくて
「1つ」だけやりな。
他人の言葉じゃなくて
自分の言葉にしてから話な。

今まで言われた言葉。心の中では「クソ野郎ぉぉ」と絶叫してるんだけど、ぐうの音もでない。彼女は「やる」と言ったことは必ずやる人。むしろ「やる」と言わずともやり遂げる。

ビッグマウスというより、ドライマウス。

ビックマウスは「〇〇になる」と声高らかに宣言するが、彼女は決して口にしない。宣言もしない。決めたことは必ず成し遂げる「ドライマウス」だ。自分で自分をコントロールする天才だと思う。己に負けず、甘えず、妥協を許さない。

そんな感じ。

言葉って大切。

言葉にする。

ことばにする。

こんな感じで、RADWIMPSの野田洋次郎さんの『ラリルレ論』の文章を真似てみる。これもきっと怒られるだろう。

そう、「彼女の研究」は始まったばかりだ。

なんなんこれ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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