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17:死体の知識・変化・処置・温度注意

家族の死体処置は葬儀屋が完璧に行ってくれるから安心――、なんて思ってたら後悔することにも成り兼ねない現実は何度も経験してきましたが、特に死臭(腐敗)発生での不安要素が高いのが施設です。

『死臭発生の可能性が高まるケース』
病院、施設の夜間はスタッフ数も減り、重病者以外は病室や部屋の巡回も少ないですから静かに息を引き取った場合、発見が数時間遅れることもありパジャマで歩き回れる室温ですから当然腐敗は進みます。

病院は医師が常駐しており家族が駆けつければ死亡診断されますが、施設によって提携する医者に依頼する為、連絡が取れない時とか時間帯によっては翌朝8時頃の死亡診断も普通にあります。すると死臭(腐敗臭)が出てくるケースは決して珍しくありません。

一度発生した死臭を消す事はできません。初期段階ならドライアイスで腹部を広範囲に完全凍結させる事で何とか誤魔化すことも可能ですが、一定以上に腐敗が進めばどうすることもできません。内臓腐敗と壊死部位ですから消臭剤は根本的に意味が無くドライアイス使用量増加で費用は加算されます。

この原因は施設職員に腐敗臭発生の意識も知識も無いことです。通常の流れなら腐敗臭発生前に葬儀屋が引き取りますから、死臭について軽く考えてるスタッフが担当した場合は問題が発生します。

そこで家族が死体に関する簡単な知識を持ち事前にしっかり依頼しておく事で葬式期間に嫌な思いを避けられる確率はあがります。死臭は発生を避ける以外に方法はなく、事前にもしもの時の流れを確認し死臭発生の可能性がある施設なら、その旨の確約を複数人に取って書面にも残して貰っておくことです。「大丈夫ですよ」は大丈夫では無いと思って欲しい。

また病院、施設から葬儀屋が搬送すれば、その後は問題無いかと言われたら「いいえ」としか言えません。僕の知る限り葬儀屋で死体の知識と対処スキルを豊富に持ってる人を知りません。あえて言うなら無駄に大量にドライアイスを使用することで腐敗を避けてる葬儀屋はいくらでもいます。

安置場所の室温にもよりますが、それでも3日間安置で10㎏~のドライアイス3回入れたら腐敗防止目的でなく対家族を誤魔化せる金儲け手段です。また夏場や室温が高くて安置日数が長いと腹部冷却だけでは頭部(脳)の腐敗が進み顔が黒ずみ進行すれば強烈な異臭が発生する為、頭部冷却で使用量が増える事もありますが、何処に当てたか見れば分りますし知識のある担当者なら説明してくれるでしょう。

『死後硬直』
死後硬直は2時間位~『あご』から始まり、腕や指の硬直には5時間ほど7時間位で全身が硬直状態になり逝去から12~24時間後ピークと言われ、死後72時間ほどで死後硬直が弛緩しかん(ゆるむ)されます。

『死臭(腐敗臭)』
千数百件の施行で搬送時に死臭が出てたケースは数十件で『警察の安置冷蔵庫』は当然ですが『施設』は時々遭遇するので要注意、病院からの通常搬送で死臭があった記憶はありません。

腐敗の進行が速いのは内臓『腹部・下腹部』と四肢の壊死部位ですから他の臭いで誤魔化すよりドライアイス等での凍結が最善に思えます。摂氏5℃で腐敗の進行は停止すると言われますが死臭は発生します。かといって長期保存でも無い限り全身凍結はしませんから、腹部中心で状況により必要箇所を凍結するのがベターです。

続いて高温なら『脳』の腐敗を考慮する必要があり脳の腐敗が始まると顔が黒ずむ傾向にあるので分ります。自宅など室温の高い場所での安置は安定枕にドライアイスをV字形に置き後頭部を乗せる事で冷却できます。

『ドライアイスを知る』
ドライアイスとは二酸化炭素炭酸ガスを固体にしたマイナス78.5℃の超低温物質、比重は空気の1.5倍と重く冷気は下方に流れ、空気に触れると昇華しょうか(気体化)し750倍に膨れますから密閉容器で昇華させたら爆発する可能性もあります。

葬儀屋で「死体の凍結を避ける為に綿花で包んでドライアイスを当てる」と書いてある記事を見ますが意味が分かりません。ドライアイスの目的は死体の腐敗防止目的ですから皮膚でなく内臓の腐敗を防ぐ必要があります。凍結させないとは皮膚の表面温度を摂氏0℃以上に設定する事になり、当然内臓はそれ以上の温度となります。

皮膚温度が0℃直後に取り去り5℃直前で当てるを繰り返せば理論上は可能ですが、それほどのスキルと技術のある葬儀屋はいません。また摂氏5℃での保管では実際は死臭が発生するでしょう。

凍結した部位の皮膚は茶色っぽく変色しますが、解凍すれば肌色に戻り凍結状態での火葬は時間も掛ります。ドライアイス使用時の注意は適切な部位に当てる事、難しいのはドライアイスを外すタイミングで完全凍結した状態なら通常室温で解凍までの12時間~24時間を火葬時間から逆算します。

布団安置で顔の両側に顔から離して綿花で包んだドライアイスを置く葬儀屋もありますが結論を言えば殆ど意味はありません。納棺した状態なら棺内を冷やす効果はありますが後頭部に当てたほうが効率的です。

『合掌・口閉じ・目』
最近は減ってますが病院、施設で故人の手を合掌に組ませる事がありますが2つの理由から賛成しません。

1. 無信仰者80%と言われる日本に適さない
当方への入会者90%は無信仰者だと明言しますから人の死と宗教を無理矢理結びつける必要はありません。

2. 死体保全の妨げになる
また合掌した状態でドライアイス処置すれば必要な部位に正確に当てることも難しくなるし、凍結させる必要なの無い手指まで凍結させてしまう。両腕は両脇に置き必要なら合掌を組ませれば済むことです。

『死体に着せるもの』
合掌の話しが出たついでに死体処置の流れを書いておきます。
医師の死亡診断が終わると『清拭せいしき』と呼ばれ故人の身体を拭く作業と『死体処置したいしょち』口、鼻、陰部、尻に綿花の詰物をして塞ぐ作業をしますが、鼻は透明ゲルで処置する病院も増えています。最後に死化粧や整髪をしてくれる所もあればしない所もあります。

清拭と死体処置が終わると着せ易い浴衣を着せる病院、施設が多いですが何を着せるかの決まりはありませんし別途費用として浴衣は3,000円~4,000円掛かるでしょうから、事前に着物、パジャマ、スウェット、洋服など着せたい物を担当者に預けておけば着せて貰えます。

死後処置費用は保険適用外で前橋周辺の場合15,000円~50,000円ほど掛かり事前に預けておくことを勧めます。ちなみにキリスト教信者ならスーツ系を着せて貰うことが多いですが、ベルトのバックルなどは火葬前に外さなければなりません。

心臓にペースメーカーが埋めてある故人なら火葬中に小爆発しますから、依頼する葬儀屋にその旨伝える必要があります。以前は厚さ数cmありましたが最近は数ミリと薄っぺらな為、担当者が見逃す可能性もあります。

死体の口が開いた状態だと苦しそうな印象になり、閉じた状態だと穏やかな印象を受けますからできる限り口は閉じてあげたいものです。ただ病院等で使用する白いゴムのエンゼルバンドは頬に痕が付き、できれば口閉じ専用器具を使いたいものです。但し逝去前に長期で口を開けたままで過ごした方は閉じないケースもあると思ってください。

ゲッソリ痩せこけ目が極端に窪んだ死体の場合、瞼の長さが足りず閉じないケースもありますが、それ以外は基本的には閉じられます。ただしっかり閉じてくれるまで何度も瞼を閉じる必要がある事も多いです。瞼に触れる場合や粘膜近くは感染防止ためゴム手等使い素手は止めましょう。

僕自身が使う死体の知識は他にも沢山ありますが、これだけでも知ってれば葬儀屋スタッフより知識がある依頼者になります。が、知ったかぶりは担当者の気分を慨すでしょうから「時たまネット動画で見たけど――、」と伺いをたてるような聞き方をされると良いでしょう。

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参考資料(お時間のある時にでも読んでみてください)
あんしんサポート葬儀支援センター  
代表ブログ 葬儀支援ブログ「我想う」

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